六話 どうやら俺はできたらしい
「それでは登録完了です〜」
ショウコさんから出てきた紙を受付に持っていくとそのまま冒険者登録をされた。
「ありがとうございます」
虚空を見つめながらギルドの受付嬢カーリーさんにお礼を言う。
ショックがデカすぎてまだ立ち直れない……。
俺TUEEEE出来ると思ったに……。
あのクソ女神、どれだけ嘘をつけば満足するんだよ……。
「初回に限り冒険者登録される来訪者の方は登録料は掛かりません。ですがこちらのギルドカードを紛失され再発行する場合は銀貨五枚を頂くのでご了承ください〜」
自分の名前と大きくDと書かれた、名刺と同じサイズの黒い板のような物をカーリーさんから受け取る。
材質はプラスチックに似たような感じで不思議な質感だ。
「これでヤマトさんも今日から冒険者の仲間入りです、おめでとうございます〜。簡単ではありますが私の方からギルドのご説明をさせていただきますね〜」
「あ、お願いします」
カードを渡してハイ終わりではなく説明をしてくれるようだ。
「ご存知かも……いえヤマトさんは来訪者なので少しちゃんとした説明をしないとですね──」
そこからカーリーさんの懇切丁寧なギルドの説明があった。
簡単にまとめるとこうだ。
一つ、冒険者ギルドとは冒険者の仕事を斡旋し管理する場所。
二つ、ギルドにはランク制度があり、ランクによって請け負える依頼が決まる。ランクは五つ存在し上からS、A、B、C、Dとある。ちなみに昇格制で、逆の降格もある。
三つ、ギルドカードは冒険者の身分証明書で他国に入国する時などに便利。
四つ、冒険者とは人々を世界各地に跋扈する魔王率いる魔物から守る存在でありその誇りを持って冒険者活動に励むこと。
五つ、もし冒険者有るまじき犯罪行為を犯した場合それ相応の罰がある。
とまあこんな感じだ。
それ相応のリスクと同時に便利でもあるらしい。
まあこういうテンプレートは何回もラノベとかで読んだし大体はすぐに把握できた。
「何かご不明な点やご質問はありますか〜」
のんびりとした声で聞いてくるカーリーさん。
「大丈夫です」
「そうですか、また何かあったら遠慮せず受付まで聞きに来てくださいね〜」
そこで冒険者登録の手続きは完全に終了し、酒場の方で登録が終わるのを待っていてくれたライセルさん達の所へと行く。
「お! 終わったみたいだね」
俺にいち早く気がついたライセルさんが手を振って声をかけてくる。
「はい、お待たせして申し訳ないです」
「問題なく終わって何よりだ」
「ヤマトさんも何か頼みますか?」
「……」
どうやらまた一杯引っ掛けていたようで四人とも軽く酒が回っているようだ。
「えっと、それじゃあアルコールの入ってない飲み物を適当にお願いします」
近くにいた酒場の店員に言って空いている席に適当に座る。
最初はどうなるかと思ったがとりあえず一段落着いて安心した。俺TUEEEEはできないけど。
「無事に冒険者になれたところでヤマトはこれからどうするつもりなんだ?」
安堵して先程渡されたギルドカードを何となく見つめているとライセルさんからそんな事を聞かれる。
「お金を稼ぐために冒険者になったんですし、とりあえずは自分の受けられるランクの依頼をコツコツこなしてお金を貯めようかと……」
どうしたもこうしたもとりあえずやることは金を稼ぐこと一つだ。何をするにしても金は必要だろうし。
まあお金がある程度貯まったらこの世界を見て回りたいな。
「そっか……本当はしばらくの間うちのパーティーにと思っていたんだけど、緊急の依頼が入って僕たちは明日からしばらくの間街を離れることになったんだ」
「そ、そうなんですか……」
ライセルさんの言葉に引きつった笑顔しかできない。
本当は土下座でもしてパーティーに入れてもらってとりあえずは安定した暮らしを確保するつもりだったのにその作戦がダメになってしまった。
「うん、ごめんね。本当はもう少しヤマトの力になりたかったんだけど」
別にライセルさん自体に落ち度はないと言うのに彼は本当に申し訳なさそうに頭を下げる。
「いやいや! 魔物から助けて貰って、ここまで連れてきてくれただけで充分すぎますよ! 本当にこのご恩はいつか盛大にお返しさせてもらいますよ!!」
人の良すぎるライセルさんに慌ててそう言って頭を上げてもらうように言う。
本当になんでここまでお人好しなんだろう?
ラノベとかだったら絶対主人公じゃん。また自分が情けなく思えてきた……。
「そう言って貰えると助かるよ。それに恩を返すとかそんな大層なことをしたつもりは無いよ。当たり前のことをしただけさ」
これでもかと主人公のようなことを言ってイケメンスマイルをこちらに向けてくる。
ヤダイケメン!そっち系になっちゃいそう!!
いや、ならんけどもね。
「いえ、そんな訳にはいきません! 絶対に返さしてもらうんで待っててください」
「うん……わかった、待ってるよ」
「はーい、マロンゲジュースでーす!」
しっかりとライセルさん達に宣言すると、店員さんがドス黒い色の液体が入ったジョッキグラスを持ってくる。
え、何この青汁をさらに濃くしたような美味しくなさそうな飲みもの……。
「お、来たみたいだな! それじゃあ新しい仲間に乾杯だ!!」
全員にグラスが渡ったことを確認して顔を真っ赤にさせたロビンさんが音頭を取る。
「「「「かんぱーい!!」」」」
「か、乾杯……」
めちゃくちゃ飲む気が失せてくる液体が入ったジョッキグラスを持って乾杯をする。
「………あ、うまい」
勢いに任せて謎の液体を飲んでみると見た目の割にとてもフルーティーな味わいでかなり美味い。
「さあ、じゃんじゃん飲むぞー!!」
そのまま夜が耽けるまでライセルさん達と酒場でどんちゃん騒ぎをした。
この世界の色んな話を聞いて、俺の世界の色んな話をした。
どれもこれも好奇心を擽られるものばかりで、これからそんな世界で生きていくのだの思うと興奮してくる。
そう思えるのもこんな親切なこの人達と出会ってとても楽しい思い出ができたからだろう。
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「それじゃあ一旦お別れだ、ヤマト」
「はい、本当にありがとうございました」
宴会もお開きとなり、ギルドの酒場を出てライセルさん達と固く握手を交わす。
「それじゃあ」
これ以上は歯切れが悪いと俺は背を向け歩き出す。
「ヤマト!!」
「……?」
少し歩いたところでライセルさんに呼び止められて振り返ると手のひらサイズの布袋を投げられそれをキャッチする。
「これは……?」
首を傾げライセルさんの方を見ると、
「最後のお節介だ! 稼ぐって行ってもとりあえず金は必要だろ? 少ないけど友人として餞別だ!」
そう言われ。中身を確認するとそこには銀貨五枚と大きめの銅貨十枚が枚入っていた。
どこまでもお人好しでカッコイイ人だ。
「ありがとうございます!!」
最後に深くお辞儀をして俺は今度こそ前を向いて歩き出した。
どうやら俺は異世界で初めて友達ができたらしい。