プロローグ
『退屈な毎日が嫌で、いつも何かを探していた』
「……なんかこういった感じのこと思った、ラノベ主人公とかいそうじゃない?」
流れる雲をボーっと見つめながら歩く少年が隣を歩く少年にそう問う。
「なんだよいきなり……まあいそうだけども……」
いきなりの訳の分からない質問に答えた少年は苦笑いしながら答える。
なんてことのない。ただの男子高校生二人が学校へ向かう途中の通学路。
「はい、じゃあ次はよっちゃんの番な」
「え、俺もやんの!?」
よっちゃんと呼ばれた少年は唐突に始まったゲームに驚きながらも腕を組んで「うーむ……」と頭を悩ませ始める。
「………………思いつかん」
しばらく黙り込んで考えたが少年は答えが見つからず潔くそう言った。
「よっちゃんギブアップな? じゃあ罰ゲームはジュース奢りね」
「いやなんでそうなんだよ」
「よっちゃんよ……いつからかこれがただの言葉遊びだと思っていた? もう殺し合いは始まっているんだぜ………ヒック……ありゃ?」
意気揚々と少年が喋っていると「ヒック」と自身の意思では止めることのできない息を吸うおかしな音が突然鳴る。
「しゃっくりなんかしてどうしたんだよ? 朝飯食いすぎたのか?」
マヌケな音に隣を歩く少年はケタケタと笑いながら冗談交じりに聞く。
「いやー今日は茶碗一杯で我慢してきたんだけどな〜……ヒック……」
「後ろからおどかしてやろうか?」
「いや大丈夫。てか言っちゃったら意味無くね?ヒック……」
久しくしていなかったしゃっくりに変な違和感を覚えながら少年は断る。
「そうですかい。でも久しぶりに聞いたなしゃっくりなんて」
「俺も久しぶりに……ヒック……した」
止まる気配なく次々となるしゃっくりに少年はさらに違和感を覚える。
「しゃっくりって自分で止めることできないよね……ヒック……」
「そうだな、止めようと思って身構えてみても勝手に出ちゃうよな、ヒックって」
「さっきよっちゃんが言ってたおどかすって奴の他にも色々と変なしゃっくりの止め方もあるよね……ヒック……」
「あーあるある。息を止めるとか水を飲むとかな」
「お、息を止めるってのいいね……ヒック」
少年は歩みを止めると口と鼻を手で塞いで息を止める。
「……………………ヒック」
しかし5秒、6秒と息を止めたところですぐに少年の喉からはマヌケな音が鳴る。
「ダメか」
「みたい……ヒック」
同じように足を止めて見ていた少年の声にそう返すと再び歩みを進める。
「他にも後ろ歩きをすると治るとか茶碗の裏の凹みで水を飲むと治るとか変な治し方もあるよな」
「何それ……そんな変なの信じる奴なんていないでしょ……ヒック」
眉をひそめながら隣を歩く少年の話を聞く。
「まあな。でもガキの頃とかは嘘だって分かりきってることでもバカ正直に信じてしゃっくりになった時は親とか爺ちゃんに色々聞いてその治し方を試したもんだよ」
「へー……ヒック」
隣を歩く少年は懐かしそうに笑いながらそう話す。
「まあしゃっくりって色々な迷信があるけどその中でも一番誰もが知ってるやつはあれだよな」
「まあ……ヒック……あれだね」
なんてことのない。ただの男子高校生二人が学校へ向かう途中の通学路。
二人の少年はそんなどうでもいいことを駄弁りながら学校へと登校する。
「100回するまでに止まるといいな大和」
一人の少年はそんな、なんてことのない″日常″から旅立つ。
この一部始終はその少し前。
「ははは、しゃくりなんかで死ぬわけないじゃん」