帰還
小さい頃によく遊んだ公園で目が覚めた。
そう、そこは召喚される前によく遊んだ公園だった。
どうやら、帰還させられたあとの転移場所はここだったようだ。
時間は夕暮れ時。
周りを見るが、誰もいなかった。
誰かに見られていたら、とても厄介だったので良かったと思う。
自分の髪は伸びていて、顔を判断できないくらい長かった。
そういえば、地球では2年経っているらしいが、自分のことはどうなっているのだろうか。
みんなに忘れられて居ないだろうか。
また捨てられないだろうか、などと心の中で不安が渦巻く中、うっすらと覚えている道を辿って家を目指した。
家に向かう道中、周りにいた人から不思議そうな目で見られた。
髪が伸びていたからだろうか?
考えるのをやめよう。
今はただ家に帰りたい。
母さんに会いたい。
家が恋しい。
自分だと気付いてくれるだろうか。
歓迎してくれるだろうか。
わすれられていないだろうか。
また不安な考えをしだした。
自分のほっぺを ぺちんっ と叩いた。
いつまでもこんなのではダメだ。
その時は家に帰るのに夢中だった。
家に着いた。
ああ、懐かしい我が家だ。
早く母さんに会いたい。
そう思って、インターフォンを押した。
やはり、少しだけ怖かった。
『はーい、どちらさ.......』
途中で切れた。
するとドタバタとするような音がして、やがて静かになったと思うと、ガチャッと扉の開く音がした。
母さんの姿がそこにはあった。
その姿を見ただけで涙がぶわっと溢れ出てくる感じがした。
必死に耐えた。いや、耐えたつもりだったと表現した方が正しいのかもしれない。
だが、当然堪えられる訳もなく、気付けば、涙で視界が歪んでいた。
だが、それは母さんも同じだった。
俺は急いで、母さんのところに駆け寄った。
母さんは優しく手を広げてくれた。
俺たちはそうしてしばらく抱き合っていた。
事情を聞くと、どうやら行方不明ということになったらしい。
誕生日の次の朝、気付いたら俺がいなかったのでとても焦ったそうだ。
それからずっと喉に水も通らないといった様子だったらしいが、周りの助けもあってだいぶ良くなったようだ。
髪で顔が隠れているのに、どうして俺だとわかったのか聞いてみたら、
「わからないわけが無いでしょ」
と軽く怒られた。
だが、母さんにはだいぶ心配を掛けてしまったのに変わりはない。
これからは労ってあげなければな。