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trailrunners③レース後  作者: 千原 文則
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レース後

「やったー、完走したぞ」

ゴール付近で仁は叫ぶ。

「はい、はい。ナイスラン」

瞳は冷めた口調で答える。ゴール付近では、ひっきりなしに次々とランナーがゴールしていく。

「温泉いこう。荷物持ってさ」

瞳は、仁にそう言うとテントに向け歩き出す。仁もそれについて行く。荷物を持ち、温泉行のバスに乗り込む。


バスに揺られ、約30分。山あいの温泉に到着する。山並温泉。日帰り専用の温泉施設。館内に入り、仁と瞳は、露天風呂に行く。

「サイコー、いいね、温泉」

「でしょ。これだらトレイルはいいんだよ」

「板倉さんのいった通りサイコー。足首痛いけどね」

「会ったんだ、あの方に、いいじゃん、初レース出て、出会えるなんて持ってるね」

「板倉さんって凄い人なの」

「まあまあ凄い人だよ。トレイル100キロ完走している強者」

「えっ、100キロ、スゲーや。そんな風に見えなかったけど」

「まぁ、雰囲気は普通のお姉さんって感じなんだよね、いつも。でもね、トレイルの相談とか聞いてくれるし、面白い話してくれる。お店は千葉なんだけとね」

「瞳、けっこう顔広いね」

「トレイルやって二年目だからね。それなりだよ」

「トレイルの登り、どうやったら速くなる」

「登りねぇ、小刻みなステップで走る。大股じゃなくて、体の真下に足を置くみたいな感じかな。後は、スタミナ次第だね」

「マジか。小刻みねぇ、今度、山で教えて。登りで、何人も抜かされたよ」

「下り、怖くないの」 

「下り気持ちいいね。スノボしてる感覚だったよ」

「ああ、似てるかもね。下りだから」

「あちー、少し冷まそうよ。温まり過ぎた」

瞳と仁は、露天風呂の脇にあるベンチに移動する。

「足首どう、テーピングまたしますか」

露天風呂から藤谷が仁に聞く。

「藤谷さん、完走しましたか。俺、完走出来ました」

「完走したよ。三時間50分位だったよ」

「マジ、あんまりタイム変わらないですよ。俺、三時間45分位」

「ナイスだね、足首どうする」

「もう大丈夫ですよ。テーピングしなくても」

「一応、近いうちに治療院行ったほうがいいよ。捻挫長引くからさ」

「はい。明日行ってきますよ」

「藤谷さんは何でトレイル始めたんですか」

「トライアスロンやってて、その一つのトレーニングとして始めた。始めたら、山が楽しくなっちゃて、今はトレイルだけやってる。山、トレイル、やってると出会いが楽しいじゃん。タイム、タイムじゃなくてさ、みんなその時、その時で楽しみながらやってる。それが気持ちいい。すぐ打ち解けて、ゴール迄一緒ってこともあるしさ」

「確かに、ギスギスしてないすよね。皆仲間って感じで」

「それがいい~。だから続けられるしね。こうして知り合いにも成れるしね」

藤谷は露天風呂から上がり、内風呂に向かう。仁と瞳は、また露天風呂に入る。

「瞳、サンキューな。マジ面白いかも。トレイルランニング。最近さ、何かモヤモヤしててさ…」

「おっ、何モヤモヤしてんのさ、話しなよ」

「俺ら、もう社会人じゃん。一年目だけどさ、何か会社行って、上司に怒られて、家帰ってビール。そして翌日また会社。その繰り返し。やりたくて入った会社じゃないし、何か熱中するものないしさ。このまま年取るのかなかったって思ってた」

「まぁ気持ち分かるよ。でもさ、大人になったから、何もかも諦めて仕事だけって虚しくない」

「虚しいよ確かに。でもさ、何やればいいか、わかんないじゃん。一番に成れる訳でもなく、夢中でやれるものないしさ。そんなこと考えて、やりたいことも諦めてかけてたよ」

「大人の部活って事でトレイルランニングしよう。これからも」

「いいかも。一番になれなくても、やって楽しかったらいいのかな。そう思えた。トレランはまりそう」

「そろそろ上がろうよ」

瞳と仁は露天風呂から上がり、着替え、駅行きのバスに乗る。もう辺りはすっかり暗くなっている。藤野駅に着くと、ちょうど高尾行きの列車が行ってしまった。次の電車は40分後。仁と瞳は、待合室で、くつろぐ。

「仁は昔から、何でもすぐ諦める癖あるよね」

「そんなことないって。サッカーだって頑張ったし、就活だって頑張ったし」

「人並みだよね、いつも。努力してるんだろけどさ、何か今一つ伝わらないよね。今日もそうだけどさ、もっと走れるよ、多分。本気になったことないでしよ」

「何かさ、途中までは本気出すだけどさ、続かない、先読めると力が入らない。これっておもってもさ、すぐ萎えちゃう」

「目標高過ぎ、だからいつも駄目になる。もっと目の前の事に集中していけばいいんじゃない」

「そうなのかな、そんなに目標高くしてないと思うだけど」

「後は他人の目、気にし過ぎるよね。もっと自分出せばいいのに」

「それは認める。嫌われたくないしさ、自分に自信ないしさ」

「本気で、やってみれば、トレラン。そうすれば、何か変わるかもよ」

「マジで、言ってる」

「マジマジ。仁が100キロ走るの見てみたい」

「えっ、マジか、マジで無理かも」

「本気ならできるよ。俺も一緒に出るの目標にするからさ、やろーよ」

仁と瞳は、ホームに移動した。すぐに高尾行きの列車が入ってきた。仁と瞳は、列車に揺られ帰路についた。

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