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ゴム

作者: 鰤金団
掲載日:2008/11/28

(やっぱり、いつもと違う事をするんじゃなかった・・・。)

俺はそう思っていた。


事の始まりは3時間前だった。

「やばい、後2分でバスが来ちまう。」

俺はそう口にしながらバス停まで走っていた。

今日は、大学の授業が1時限しかなかったため、いつもは歩いて帰る道をバスに

乗って帰ろうとしたのだ。

俺がバス停に着くと、ちょうどよくバスが来た。

バスに乗ろうと足を動かした時、俺は異変に気付いた。

右足が接着剤でくっついた様に動かないのだ。

足を動かそうと四苦八苦している間、運転手は待っていてくれた。

しかし、いつまで経ってもバスに乗ろうとしない俺を、運転手は嫌がらせをしているのだと思ったのだろう、バスを出発させてしまった。

俺は深呼吸をして、心を落ち着かせ、靴底を触ってみる事にした。

変わった物は何も無かったが、俺の靴底にガムが付いていた。

「ついてない、ガムを踏んでいたなんて。」

独り言を言って俺は右足を引張った。

けれど、動かない。

(オカシイ)

俺はそう思った。

確かにガムはくっつく物だ。けれどこの粘着力は異常だ、地面と靴にしっかりとくっついて動かす事ができないのだから。

俺は、カッターでガムを切ろうと頑張った。

しばらく、カッターでガムと格闘しているとバスが来た。

俺の乗りたいバスだった。どうやら格闘している間に1時間経っていたようだ。

ガムは未だに地面と靴を繋いでいる。俺は仕方なく来たバスを見送った。

次のバスが来るまでまた、1時間。

「次までに、俺はこのガムを切ってやるそう決意した。」

30分くらい経った時に、通りかかったおばあさんが俺に声をかけて来た。

「足を痛めたのかい?」

そう聞いて来たおばあさんに俺は、この不思議なガムの事を話した。

おばあさんは、「とりあえず、靴を脱いでみたらどうだい?」と言って来た。

俺は、その言葉を聞いて自分の頭の悪さを痛感した。

簡単な事なのだ、ガムは靴にくっついている。

靴を脱げば俺の足は動かせるのだ。

俺はおばあさんの言ったとおり、靴を脱いだ。

正確には脱ごうとした。

俺は恐る恐る、靴の中に指を入れた。

(靴と靴下がガムで繋がっている!?)俺は、気絶しそうになっていた。

でもまだ望みはある。

靴下を脱げばいいのだから。

俺は靴下を脱ごうとした。

・・あれ?

・・・・かかとの裏で引っかかる?

・・・・・まさか。










俺は悲鳴を挙げていた。

ガムは俺の足にしっかりとくっついていたからだ。

俺の悲鳴を聞いた大学の警備員が走ってやってきた。

「どうしました?」

警備員は俺にそう聞いてきた。

今までの事を俺は正直に話したが、警備員は俺を(頭の)可哀想な人という目で俺を見ている。

警備員は俺の話の真偽をおばあさんにも聞いている。

おばあさんが俺の話が本当の事だというと、警備員はまだ半信半疑な顔をしたまま、「ちょっと引張りますよ。」そういって引張った。

もちろん、俺の右足は動かない。

警備員は俺の話が本当だと信じて、救急車を呼ぶと言って警備員室にいったん戻っていった。

その間に来たバスを俺はまた見送った。

俺は3時間前の自分を恨み始めていた。

しばらくして、救急車がやってきた。

かなり大掛かりになってきたなぁと俺は思っていた。

20分くらい頑張っていただろうか、救急隊員が、「これ、本当にガムなのか?」と不安になる事を言い出した。

俺は、「何とかなりませんかね?」と不安からか、そう聞いていた。

「切ろうと思っても切れないし、綱引きのように引張ってみましょう。」隊員がそんなことを言って人を集め始めた。

隊員の呼びかけで20人ほど集まってきた。

皆さん力自慢の体育会系の方々だ。

隊員が俺の体を持ち、隊員の腰を後ろの人が持ちと続いている絵を見て俺は、カブを大人数で引張る話を思い出した。

「皆さんいきますよー!!」隊員が言うと、太い声で「オ−!!!」皆さんが言う。

皆が俺を引張り始めた。これで、助かるかもと思ったけれど、俺の予想の遥か上を行ってしまった。

俺を除いた全員が飛ばされて行ったのだ。

俺には何が起こったのかまったく解らなかった。

そのうち、太陽と月がルーレットのようにぐるぐる回っている事に気がついた。

どうやら、俺を引張った事で地球が回り始めたのだ。

それも、勢いよく。

1時間くらい経っただろうか、太陽の光が届かないところまで行ってしまったらしい。

空を見るとそこには黒い渦があり、どんどん近づいて来ていた。

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