いちチラ
雀丸 知美、今日の私は絶対に、ツイている。
目覚ましより20分以上も前にスッキリと目覚めたし、
頭爆発や寝癖が一つも無かったし、
ヘアアイロンの効きが良くて、セミボブの左右のゆるい内巻きが綺麗に出来たし、
普段はスルーの星座占いでは全体運は上位にしては4位だったけど、恋愛運は1位だったし、
朝ごはんの目玉焼きの卵は双子ちゃんだったし、
時間があるから食べた"フォーチュンアイス"にレアアイスが入っていて、それが恋愛運上昇のハートの形だったし、
それに……
「鷹野くんだ……!」
駅の学校に行く為のホームには、幼馴染の大神 樹……"いーくん"の隣に、鷹野 真くんが居た。
二人は背がとても高く、周りから"ピョコン"と出ているからとっても分かりやすい。ちなみに二人ともバレー部。
……そして私はとても小さい。本当に小さい……高校生で制服を着ているのに、小学生に間違われる。更に体系的にでどこも出てないからなのか……。
「鷹野くん、今日も格好良い……。恋愛運が良いお陰かな?」
そんな事を呟いて、"ぼぉっ"としながらホーム上の階段から下に居る二人を見ていたら、背中を強く押された。
「へっ!?」
私は突然の事でそのまま前に足を出してしまい、しかもそれが階段の端からジャンプする様になり……。
「きゃ……ぁああぁあ!?」
こ、こんな時に前方の人の群れが私を避けてる!?
背中を押されたのは事故。朝でみんな忙しいのだ。そんな中に惚けて立っていた私が悪い……のだ。……多分!
あああ、でもどうしよう!? このままでは階段を踏み外して前方に落ちるのは予測出来るけど、顔面から!? だってどうすれば上手く着地出来るの!? 自慢じゃないけど、運動神経は残念なんだよぉ!!!
こんな事を考えている間にも、漫画やアニメや小説の様に時間が止まる訳無いから、私はバランスを崩したまま下に落ちている。
そして、もう下に激突すると思った瞬間、私は思わず瞳を閉じた。
「トモ!!」
―ガシッ!!!
「!??」
な、なに!? いーくんの声が聞こえた!? しかも何だか地面とは違う、抱えられた様な衝撃!??
私は恐る恐る瞬間的に閉じていた瞳を開け、自分が高い位置に居るのが分かった。
だって、安堵した様ないーくんの顔が……斜め後ろにある。
……ン? …………ナナメ、ウシロ?
「大丈夫な様だな」
……なら、この"前"から聞こえた……声、は……?
私は半分はある可能性に気が付いていながら、そこで停止させて前方の……私を抱きかかえていると思われる人物の方を向いた。
「大丈夫だろ?」
「……は、ひ、ッ!!」
そう。
私を抱きかかえる形で助けてくれたのは、いーくんと談笑していた、
鷹野くん
だった、のだ……!!