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第二十四幕 しらふで酔っ払いの相手をさせられたらたまったものではないのですわ

 ドラゴンを倒しその生き血を飲んだ脳筋戦士の群れが進撃に反対する訳もなく、別の場所に行けばファミリアがいるかもしれないと思っている悪い魔法使いの群れとの利害も一致して、次期国王モルガーヌ王太子殿下に率いられた騎士団その他は、ポルトパロ湖の北側までの未踏破域を踏破してしまったのでございます。


 人員が揃っているので、生息する魔獣や採集出来る薬草その他の調査も行え、大いに王国の利益になったのでした。

 でも、ファミリアは出て来ませんでしたわよ。

 学園長先生が萎びています。


「わたくしのペスカトーレは、モモンガや頭突きウサギではないのですね」


 学園長先生、本気でファミリアが出て来ると思っていらしたようです。


「なぜ、皆様先に名前をお決めになっていらっしゃるのですか」

「決めているのではなく、ファミリアがいたらと思ったときに、思い浮かぶのです。ですから、どこかにいるのですよ」


 どんどん怖い方向に行きますね。


「名前が判るのに、どのような生き物かは判らないのですか」

「ええ」

「ペスカトーレは、意味のある言葉なのですか」


 スパゲティーだけど、元の意味があったような。わたくしが確実に知っていなかった言葉は翻訳されないのでしょうか。

 この脳内翻訳もいまだに謎ですわ。こちらの国内でも古代語や方言がありますしね。

 あまり交流はありませんが、外国語の単語もあるのです。


「漁をする者のことですよ」

「少し西に、水に潜り魚を獲る山猫が、おりませんでしたか」

「ミズウミネコ!」


 わたくし、余計な事を申しました。


「ぺすかと~れ~」


 学園長先生が西に向かってふらふら彷徨います。

 お祖父様が、あの巨体で音もなく近寄られます。


「シルビー、わしが連れて行ってやるわい」

「おじ様」


 エドモン様の娘なので、姪みたいなものですね。

 なお、学園長先生のお名前はシルヴェーヌ様です。


「アンジーいっしょに来ておくれ」

「はい。お祖母様、ビスケを返して下さい」


 湖に沿って西に飛びます。

 居ましたね。妙に全身モコモコした尻尾の長い白黒の二毛猫が。

 胴長な秋田犬サイズのアメリカンショートヘアー柄のユキヒョウです。

 やはり頭が大きいので可愛いです。魔獣にも猛獣にも見えません。

 鳴き声も「にゃあ」ですし。


 大鷹や大鷲が結構いて、お祖父様の両手が塞がると危ないので、ビスケを自分で飛ばせて、ペスカトーレはわたくしが持って帰りました。

 この辺りの大鷲ならビスケが一人で倒せるでしょうけど。


 野営地に着くと『チームファミリアが欲しい』以上にファビアが羨ましそうにしています。

 カラメルの時はそうでもなかったのですが。カラメルは色のせいであまりモコモコには見えません。

 あなたにはスケさんがいるでしょ。あ、やっぱりスケさんのところに行きました。


 ニコレッタはカクさんといますね。このままお母様の部下になりそうですわ。

 ジュリアナ様とギュスターヴ殿下は最早家族のお付き合いです。

 ご両親もマロニエアルブルの開拓に行かれるようなお話でした。

 宰相殿下は隠居料で都に住まわれるそうです。


 ビーチェは、困ったわね。オディロンと話しています。

 田舎娘にはあの手の都会の不良っぽいのが、かっこ良く見えてしまう時期があるのですよね。

 この世界の若気の至りはいくらでも取り返したり取り消したり出来るので、無理に引き離さないでおきましょう。


 お祖父様とお祖母様はペスカトーレをよしよしされています。

 ビスケのためにエスケープキャットになってもらいましょう。

 安心してビスケと遊ぼうとしたら、いつの間にか野営地に紛れ込んでいたエドモン様が、ジルベルタ女史とやって来られました。

 見たことのない組み合わせです。


「のう、アンジー、ジェルソミーナも飛べるようにしておくれ」

「カラメルもお願いしますね」

「あの、マスターが舞闘士でないとだめだと思うのですが」

「おまえさんとアルが娘のネコ迎えに行ってくれとった時に、ジュスティーヌからもろたんじゃ」

「実力がないと、だめなはず……」

「わし、この短期間にワイバーン六匹、グランドロック一匹の霊気浴びたで。ちと本気で習えば舞闘士くらい訳ないわ」

「わたしもご学友と一緒に教えて頂いてましたし、ドラゴンの生命力のおかげで舞闘士を頂けました」


 ここまで来てわたくしは漸く気付いたのです。

 グランドロックの生命力を浴びた魔導師全員が、ファミリアに舞闘術を転写して欲しいと言いに来る可能性があるのを。

 早くに足を止められたため戦場を固定してからの戦闘が長く、しかも野営地の近くだったので、野営地に居た全員が戦場に近寄れて、生命力を浴びられたのですわ。

 知らない方はともかく、級友や王太子殿下とカルロータ様の取り巻きも、体力と心話力が底上げされているはずでございます。


 起きてしまったことはどうにもならないので、ジェルソミーナとカラメルを飛べるようにします。

 カラメルは二足立ちの格好から浮いてそのまま飛びますね。そんな飛び方意味ないでしょ。変な子。

 エドモン様は空中に居るジェルソミーナにご自分が飛び上がられて乗られました。

 落ちりゃいいのにと思ったのですが、乗り慣れていらっしゃるので落ちません。


 カルロータ様とシルヴァーナ叔母様がお祖母様のところに行かれました。

 頭は悪くないので、一度聞いたら覚えたようです。

 もう浮ける様になりました。

 級友達がぞろぞろ並び出しました。

 お祖母様めんどくさそう。


 舞闘士のお免状を受けられてから、ジュリアナ様がお出でになりました。


「アンジェリーヌ様、スカトララディチェにお出かけになられるご予定は、ございますか」


 そりゃ、頭の上を五匹も山羊が飛び回っていたら、欲しくもなりますわね。


「諸侯会議の後、父母が霊晶水の採取に行きますので、その時に麓の砦まではいっしょに行くつもりでございます。祖母とワイバーン狩りの約束がございまして。わたくしがあそこに行くと判れば、山羊が欲しいとおっしゃる方がお出でになるのは必定でございます。級友の心話力も上がっておりますでしょうから、皆様お誘いするつもりでおりました」

「なにからなにまで、有難うございます。このご恩、末代までも忘れません」


 きっと、末永くお幸せにおなり下さい。 

 マルセル様はどこかしら。


 王太子殿下はポルトパロ湖の西端まで行かれたかったのですが、エドモン様が反対されて、一旦帰ることになりました。

 フランソワーズ大伯母様、お祖父様お祖母様といっしょに国王陛下のお招きに預かりました。

 王太子殿下がしこたま怒られればいいのにと思ったのですが、国王陛下はお褒めのお言葉を下さっただけでした。

 大伯母様、お祖父様、お祖母様、わたくしの順にお言葉を賜り、最後が王太子殿下です。


「モルガーヌ、一人の死者も出さず、未踏破域を踏破した此度の采配、見事であったぞ」

「わたくしがお褒めに預かることではございません。みな、諸卿の力でございます」

「諸卿が従ってくれるのも、そなたに王の器あればこそ。これで、何時でも安心して、王位を譲れる」

「母上、お戯れを。わたくしはまだ二十歳にもなっておりません」

「無論、今日明日に譲るとは言わぬ。が、これからは、たまに十日ほどそなたに代理をさせ、休ませてもらおうと思っておる」


 流石は国王陛下。お仕置きがきついですわ。王太子殿下泣きそう。

 自由が大好きな十七歳ですもの。

 こちら側の大人三人は、すっかりおなじみの悪い笑いですわ。


【アンジェリーヌ、頼むぞ】


 これは? 国王陛下からの心話?


【はい、なにでございましょう】

【モルガーヌの代になれば、この子を止められるのはそなたしかおらぬ】


 いえ、無理でございます。

 王太子殿下は素面で酔っ払いを率いて突撃なさるお方です。

 誰も止められませんよ。

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