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お題小説  作者: 色野白紙
2/2

その一

なんだこりゃ。収拾つかねぇ。

「ぶっあいそうだなぁ!」

げらげらげら、と遠慮のない笑い声が頭上に降ってきたので、舌打ち混じりに見上げると、

「……フリッツ」

「よぉ」

金色短髪の男が歯を見せて人懐っこい笑みを浮かべていた。彼は右手を上げて、そのままその手で僕の頭を叩く。ヘルメットがずれた。

「やめてよ。前が見えない」

「おお、わり」フリッツは僕のヘルメットをグイと後頭部の方へずらした。思わず後ろに倒れそうになる。

「なんでお前はそう、馬鹿力なのかな」

「ああ?力が有り余ってんだよ」

彼は右腕を力いっぱいと言うふうに大きく回した。僕はヘルメットの位置を直しながら、溜息をつく。

「……で?フリッツは何をしに来たの?ただからかいに来たわけ?」僕が半眼で問いかけると、彼は「あ、そうだ」と膝を叩いた。そして、今更姿勢を正して、

「ハンス・プラーヴィチ隊員!壁の様子は!侵入者は!脱走者は!」と声を張り上げた。

「ああ……別に普通。脱走を試みた男が一人射殺されたくらいだよ、フリードリヒ・ロイド隊員」僕は頬を掻く。

「あっそう」フリッツも大して興味無さそうにあっさりと全身の緊張を解いた。

「それにしてもあれだな。この隊員、て呼び方好きじゃねぇや」

「しょうがないだろ。『階級は平等の原理に反する』んだから」

僕は壁に寄りかかって、立てかけていた散弾銃を手にとった。

「まあ、別にいいけどな」そう言って彼はゆっくりと踵を返した。

そこで、空っぽの左袖が揺れる。

「その、なんだ。お前も目、大事にしろよ」振り向かず、彼はそう言った。

「……ああ」僕は、義眼の入った右目を瞼の上から撫でた。


風が、壁の前の草原を揺らした。

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