人生6
「じゃあ…いつでも来ていいからね。」
「ありがとう」
アガンの言葉に裏はなかった。
「あ、そうだ」
とアガンは、
「最後に、君の名前を聞かせてくれないかな?」
と言った。
「俺の名前は…」
俺の名前…俺の本当の名前は捨てた。今はもう、新しい名前だ。
「俺…いや、ボクの名前は、洸多。中津洸多だよ。」
中津洸多は、明るくて、普通にしてればみんなと仲良くなれるキャラだけど、どこかおかしい。いつでも笑顔で、つかみどころがない、不気味な人。そうやって決めた。
アガンはすべて理解しているように微笑んだ。
「そうか、中津洸多くんだね。ありがとう。」
「そうだ。ボクもひとつ聞いていい?」
俺は、アガンについて聞いた。
「アガンは、生きてる人じゃないの?」
これは、最初からずっと思ってたこと。
答えなんて、ほとんど分かってる。でも、アガンからその話を聞きたかった。
「うん、僕は、とっくの昔に死んだ人間なんだ。」
アガンは、少し悲しそうにそう言って、薄く笑った。でも、その後、
「ここにいつ来たかわからない。もうかなり昔からここにいるよ。転生する方法も分からないし。でも、こうやって、たまに生きてる人間と出会えるし、何より、今は、この生活が嫌じゃないんだ。」
そう言って、アガンは、ラミーを見て、にっこりと笑った。
「そっか。じゃあ、もう行くね」
俺は、アガンに別れを告げて、道を進もうとした。
瞬間、アガンに呼び止められる。
「何度もごめん。でも、やっぱりこれだけは、どうしても伝えておくべきだと思ったから言うよ。君は、どうやら、不思議な力をたくさん持っているみたいだ。ここに、こんなにすんなり来れたのも、何か関係してるかもしれない。気をつけて。世界には、そういう人を研究する組織もあるみたいだから。特に、神様には要注意だよ」
「神…??」
神様なんて、空想の世界ではないのか。
「昔、誰かがそう言ってたんだ。この世界を作ったのも、君たちの世界を作ったのも、人間を作ったのも、全部神だから、神は何でも思い通り、だって。まあでも、君なら大丈夫だと思うけどね」
………神……………。。。
そして、俺はアガンと別れて、元の世界へ戻った。
最後にアガンが言っていた意味…あれが、今後の重要なことにつながっていく気がする。俺はそれを考えていかないといけない。
道を歩きながら、さっきまでのことを考える。今考えても夢を見ていたとしか思えない。
でも…
アガンには、初めて、他人に普通に優しくされた。あの時間は、忘れられない。
『愛』とは何か、というのも、アガンとラミーを見て、わかった気がする。
でも、俺はきっともう、中津洸多という存在として、あの世界へ行くことはないだろう。
そうだ、もし、次に会ったときは…クラウンなんて名前はどうかな。
そんなことを思いついて、わりといいかもしれないなんて思って、ちょっといい気分になっていたから、周りのことをあまり考えてなくて、油断してた。俺が、曲がり角を曲がった瞬間、視界が闇に包まれた。
『対象確保。今から戻ります。』
薄れていく意識の中、そんな言葉が、聞こえてきた。
クラウン…道化師の意味。