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道化師  作者: 豆腐。
1/6

人生

人というものは、他人に縋り、一人では生きられず、本音と建前というものを使い、世の中をどう平穏に渡っていくか日々計算している。一見仲の良い友達でも、心の中では相手のことを悪く言っている。特に大人なんて、本当の心なんてあるんだろうかっていうくらい、心の中は黒い。時には、そんな裏表がない人もいるが、それはほんの一握り。人の顔色ばかり窺って、クソつまらない人生を過ごす。そんな人生の、そんな生活の何が楽しいんだよ。こんな世界に生まれた俺は、生きづらくて仕方がない。


だから、俺は、人間が嫌いだ。


俺は普通の人間とは違っていた。特殊な力を持っている。

それは、相手の考えていることが分かるし、相手の脳内が見える力。

でも、そんなこと何の役にも立たない。

相手の考えていることが分かるから何だというんだ。いいことなんて、何もない。


俺の家は母子家庭だった。俺の母親は、いつも違う男といた。

だから俺の父親が誰なのかは知らない。なぜ俺を生んだのかすら知らない。母親だって、母親というつながりはあるが、母親らしいことは何もしてくれたことはない。

俺の家は生活が苦しくて、母親は夜の仕事をしていた。大体朝帰りだし、というか帰ってこない日だってあった。むしろ帰ってこないほうが多かった。

たまに帰ってきたと思えば、男に振られたんだか知らないが俺にわめき散らして八つ当たりして叩かれて。殴られて蹴られて。大体は酔っていて泣き喚いて。かと思えば急に怒り出して。俺に殴ったり蹴ったりしながら、言う言葉はいつもいつも、「あんたなんか生まれてこなければ良かったのに」って。

俺はそのときまだ物心付いたばかりだったと思うんだけど、母親の言っていることは理解できなくて、でも抵抗するともっとひどくなるってことはわかってたから、いつも何も言わずに、じっと体を丸めて、母親とも呼んだことがないような女からの暴行に耐えていたような気がする。母親がなんで自分を殴るのか分からなかった。何を言っているかも分からないし。

いつもいつも、この人の言っていることがわかればいいのにって思ってた。

そのせいだろうか、俺がこんな力を持っているのは。いや、このときは自分の力に気づいていなかっただけかも分からない。

5歳くらいのとき、母親は、とうとう死んだ。交通事故であっさりと。男と一緒に、飲酒運転だったらしいけど。

本当に、あの女は、最後まで馬鹿な女だった。家には、警察が来た。久しぶりに、母親以外を見た。いや、警察が来たのは、母親が死んでから数日後のことで、俺はもう何日もまともな食事をしていなかったから、確か、警察が来ても、部屋の中で横になっていたと思う。もう死にそうだった。

そして、俺は親戚の家をたらいまわしにされた。そのころからだった、自分の力に気づいたのは。

どこの大人も、「よく来たね」とか「これからここが君の家だよ」とか笑顔で言ってるけど、心の中は「何でこんな面倒なことを」とか「あんな女の子供なんて」って思っている。俺がそれをすべて分かっているとも知らずに。大体の家では、のけ者にされたし、その家の本当の子供とは差別されたし、俺はまだ弱かったし、引っ込み思案で、逆らえなくて、子供たちからはいじめられた。でも、俺は相手の考えていることが全部分かっているから、何も信じれなくて、口を閉ざして、交流を断つと、「気持ち悪い」「何考えているのかわからない」って思われて、それを俺が指摘すると、「気味が悪い」「近寄るな」って言われる。それで、余計、蹴られて、殴られた。俺は、もう、何も、誰も信じない、頼れるのは己だけと自分に言い聞かせて、耐えた。


思ったより長引きそうです。

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