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やばい自己紹介

「し、白川さん、同じクラスだったんだ」


 正直めちゃくちゃ嬉しかったが、それを悟られるのがなんだか気恥ずかしかったので平然を装った。


「うん。クラス表で気づかなかったの?」


「あぁ、自分の名前しか確認できなかったんだよね…」


「そっか。人多かったもんね」


「だよね。まさかあんなに多いとは…」


「それより、すごい音だったよ」


 きた、やっぱり触れてくるよな…できればスルーして欲しかったけど…。


「あ、あーまぁ。ハハ…」


「ふふ…みんな黒羽根君に注目してたよ」


 ダメだ、このまま白川さんにペースを握られると俺の身が持たない…


「────へ、へぇ。そ、それより白川さん急にいなくなっちゃったからびっくりしたよ!」


「…あぁ、ごめんね。私も気づいたら黒羽根君のこと見失ってたの」


「そうだったん…まぁ、あの人の多さならそうなるよね…」


「うん、そうだね」


「───ねぇ、そこ邪魔なんだけど?」


 その聞き覚えのある、棘のある口調が耳に入った瞬間俺の体は一瞬固まってしまった。固唾を飲んで、後ろを振り向くとそこには、ついさっき俺の心に深い傷を負わせたギャルがこちらを迷惑そうに睨んでいた…


「ちょっとー!ゆーな言い方!」


 ギャルの肩に両手をぽんと置いて元気そうな女の子がそう言った。さっきこのギャルを強引に引っ張っていった子だ。


「別に普通に言っただけだけど…」


「その普通が怖いんだって!」


「なッ…てかあんたはいつまでそこにいんの?そこいられると席座れないんだけど?」


「あぁ、ごめん…」


 どうやら俺がギャルの席の通せん坊をしていたらしい。俺は即座に体を移動させた。


「はぁ」


 ギャルはそう言い、鬱陶しそうに席に座った。


「ごめんね!ゆうなあんな感じで…でも悪気はないから大目に見てもらえると嬉しい!」


「あ、いや悪かったのは俺だし全然」


 あれで悪気ないって本当かよ…


「ありがと!私は朝凪陽乃って言うの!で、あっちは鷹宮優奈!君は!?」


「お、俺は黒羽根透人、」


「黒羽根君ね!これからよろしく!」


「あ、あぁよろしく」


 俺は朝凪陽乃の底抜けな明るさと、眩しいくらいの笑顔に若干気圧されていた。これが誰からも好かれる陽キャってやつか…


「ちなみに、黒羽根君は席どこなのー?」


 そういえばまだ俺の席確認できて無かったな…


「まだ見てないんだよね。今から確認してくるよ」


「───黒羽根君は私の隣の席だよ」


「え、?そうなの、?」


 俺は黒板に貼られてある座席表を確認しに行くとそこには、白川、黒羽根の文字が隣同士に並んでいた。ちなみに、朝凪さんの席は俺の一個後ろだった。


「白川さん、改めてよろしくね」


「うん、よろしく」


「じゃー私の一個前の席なんだ!改めてよろしくね!黒羽根君!」


「うん、こちらこそ」


「白川さんって言うの?」


 朝凪さんが白川さんに問いかけた。


「うん、白川紫織」


「紫織ちゃんね!私は朝凪陽乃!よろしくね!」


「よろしく」


「うん!」


「ねー陽乃ー入学式って何時からだっけ?」


 ギャルもとい、鷹宮さんが朝凪さんにそう問いかけた。


「あー確か、9時からだった気がする!」


「そうだよね?黒羽根君!」


「うん、9時からだよ」


「───ガラガラッ」


 鷹宮さんと話してる途中、先生らしき人が教室に入ってきた。長い髪を後ろに束ねた、20代後半くらいの女の人だ。あと、胸がめっちゃでかい…。


「ねぇねぇ、あれって先生かな?」


「多分そうだと思う」


「はーい、皆んな席に着くように。今から入学式の説明をしまーす」


 俺たちは席に着き、教壇の方へ視線を向けた。


「まず初めに入学おめでとう!今日から1年2組の担任をすることになった、工藤綾波です。1年間よろしく!」


「よろしくお願いしま〜す!!」


 大半の生徒がそう返した。1番大きな声を出してたのは朝凪さんだった。やっぱすげーな。ちなみに俺は隣の席の人にギリ気づかれないレベルの小さな声しか出せなかった…


「うん!よろしく!」


 先生はそう嬉しそうに言い、入学式の説明を始めた。5分くらいの簡単な説明を聞き終えた俺たちは体育館で行われる始業式へと向かった。


 校長先生や、来賓の人達、新入生代表、在校生代表の挨拶など、どうせ帰る頃には忘れているであろう話を聞き終え俺たちは教室へと戻った。


「さて、今から一人一人に自己紹介をしてもらいます!さっきは時間がなくて、名前だけしか言えなかったのでまずは先生からします!改めて、今日から1年2組の担任を請け負うことになった工藤綾波です!趣味はカフェ巡りと映画鑑賞です!皆さんと素敵なクラスを作れるよう頑張ります!1年間よろしくお願いします!」


「パチパチパチパチ!!!」


「先生って彼氏いるのー?」


「何歳なんですかーー!?」


「何カップですかーー!!」


 先生の自己紹介の後大きな拍手と共に生徒たちから次々と質問が飛び交った。明らかにセクハラだろうという質問の時に先生は笑顔でスルーするという大人の対応を見せていた。てか、胸のサイズとか聞いた奴誰だよ。そりゃ気にはなるけども……。


 この時俺は『何カップですかーー!!』の質問がされた後もしかしたら答えてくれるんじゃないかと心のどこかで期待していた自分に気付き、ちょっとだけ先生に申し訳ない気持ちになった…。


 その後はクラスメイト達の自己紹介が続いて行った。そつなくこなす人、モジモジしながら喋る人、どもってしまう人、中には一発ギャグをして滑ってしまった人…などなど様々だった。


「次、朝凪頼む」


 朝凪さんの番だ。だいたいどんな感じか想像はできるな。


「朝凪陽乃です!趣味はカラオケとお喋りすることです!皆と仲良くなりたいので、よろしくお願いします!!」


 眩しい。朝凪さんの自己紹介はただただ俺には眩しいものだった…





「───よし次、黒羽根!自己紹介頼む」


「………ん……?」


 一瞬先生の言っている意味がわからなかったが、頭が超高速回転を行い、意味を理解した。


───あ、俺も自己紹介するのか…と。


 やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい。英語にするとWhat the hell、中国語にすると糟了。いやいや、今はそういうのじゃないマジで…やばい、やばい、やばい。やばい、やばいしか出てこねぇ…。


 他人の自己紹介なんかに意識を向けてる場合じゃなかった。マジで何も考えてない…どうしよう。ただでさえ教室に入る時に悪目立ちしてるんだ…自公紹介までしくじれば完全に詰む気がする。ネタに走るか?いや、そんな度胸はない…。好きな色とか言うのは…いや、それじゃ流石に弱過ぎる…。趣味とか言うか?いや俺には趣味という趣味がないし…嘘ついて趣味偽造するか?でも、自己紹介で嘘とかはまずい気がするし…ダメだ、思考がまとまらない。


 ………もういいや…あれで行こう。俺は最終手段を決行することにした…。














 














































 


 



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