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白川さんと登校

 春特有の少し肌寒いがポカポカした空気を感じながら俺は、入学式の日から女の子と登校している……。大事なことというか、本当に奇跡以上の出来事なのでもう一度言う、俺は女の子(美少女)と登校している!!


 でも、成り行き上仕方ないとは言え、白川さんは俺なんかと一緒に歩くの嫌とか思ってないのかな…?あそこで『私、黒羽根君とは一緒に行きたくないの』とか言われなくて良かったけど。いや、良かったどころの話じゃないな、そんなん言われたら普通にその場でグッと涙を堪えて、また公園のトイレに逃げ込んでいただろうな……。


 そんな事を考えながら歩いていると、ふと、とんでもない事に今更ながら気付いてしまった。俺達、公園出てから10分以上歩いてるけど、一言も会話してなくないか…?


 その事実に気付いた瞬間、妙に気まずくなってしまった。誰かと一緒に登校する時って普通なんも話さないもんなのかな…?いや、わからんそんなの!2人以上で学校に行った経験なんて俺にはないし……悲しいな。


 ま、まぁそれはいいとして、多分何も話さないのは流石におかしいとは思うが。でも白川さんを横目でチラチラ見た感じ変わった様子なく、普通に歩いてるしな…。何も話さないのって案外普通のことなのか?


でも何も話さずこの時間が続くのは俺の身が持つ気がしないな…とりあえず無難そうなことでも言ってみるか。


「白川さんって脚めっちゃ綺麗だよね…」



「…ありがと」


 やばい終わったかも。言い終わった後に『あ、これキモいやつだ』って思ったけど気付くのが遅過ぎた…なんか変な間があったし絶対引かれてるよな。何が無難そうな事だよ、俺の無難はセクハラかよ…


「───黒羽根君も制服似合ってるよ」


「え、?あ、ありがとう…」


 なんか、褒め返されたぞ???俺に褒められたのはそんなに嫌じゃなかったって事なのか?いや、実際どう思ってるかなんてわかんないけど。それよりもこの流れで次こそはちゃんとした事を言おう!


「し、白川さんは家から高校までは近いの?」


「そこまで近いってわけでもないかな。電車と歩きで1時間くらいはかかるよ」


「そうなんだ、じゃ早起きとか大変だね…」


「うん。でもすぐ慣れると思うよ」


「そんなもんかなぁ」


「うん、多分ね」


おや?なんか結構いい感じに会話できてないか!?この調子で学校まで持つといいけど…次は何話せばいいんだ?


「黒羽根君は家から学校まで近いの?」


「え?」


 やばい。まさか白川さんの方から質問されるとは思ってなかった。どもるな、冷静に受け答えしろ、!


「あー、俺は結構近いかな!歩いて30分くらい!」


「そっか」


「うん…」


 話が10秒足らずで終わってしまった、、、どうしよう。────というか無理に喋る必要ってあるのか?何も話さない沈黙も気まずいけど、会話の後にもう喋る事がなくなって訪れる沈黙の方がよっぽど気まずいような気がするな…


「ねぇ黒羽根君」


「ひ、ひゃぁい、!」


────やってしまった〜〜〜。めっちゃキモい声を発してしまった。まさか白川さんの方から話しかけてくるとは…。マジで時を戻したい、、2秒前だけでいいから神様、仏様、今の悲劇を見ていたのなら、どうか2秒だけ、2秒だけ時を戻してくださいッッッ!


「…ふふ、大丈夫?なんか面白い声出てたけど」


「…………ッッッッッッッッッ」


 そこ突っ込んでくるの!?まぁ、白川さん案外こういうとこあるからな…公園でも似たようなことあったし…。ここは笑いながら『ちょっと〜白川さーんそこは触れないでよ〜』みたいな感じで取り繕うか?いや、それはそれで恥ずかしい…。他にいい案はないか?考えろ俺…………ハッ!あった!全てを無かったことにできる最強の技が!


「え?なんの事???」





「……顔すごく赤いよ?」


「…………ッッッッッッッッッ、、、。うん。考え事してる時に白川さんに急に声かけられて、びっくりして情け無い声出ちゃいました…」


 俺は"秘技"とぼける。をまんまと破られてしまい、恥ずかしさと、情け無さでおかしくなり、口が自動で全てを曝け出してしまった…


「…ふふ。黒羽根君ってやっぱ面白いね」


「───え、あいや、そんなことは…」


 その時白川さんが僕に向けたいたずらな笑顔が、普段の大人っぽい白川さんからは想像も出来ないほど幼く、でもそれでいて、なんといか、、とても綺麗だった。


 そこから白川さんのあの笑顔が頭から離れず、ただ、ぼーっと、魂が抜けたように歩いていた。


「ねぇ、黒羽根君。もう学校着くね」


「え?あ、、」

 

 白川さんに夢中で気付かなかった。俺の目の前にはこれから3年間を過ごす学舎の姿があった。


「黒羽根君気付いてなかったでしょ」


「あ、うん」


「やっぱり。ずっとぼーっとしてたもんね。喋りかけても反応無かったし」


「あぁ、確かにぼーっとしてたかも。ってえ?俺ずっと白石さんのこと無視してたの?」


「うん、されてた」


「……マジでごめん!!」


「いいよ。なにか考え事でもしてたの?」


 白川さんのことずっと考えてましたなんて絶対言えない……


「あーそれは……」


「───あ!!!校門見えた!行こ!!」


「…うん、行こっか」


だいぶ苦しかったが、なんとか誤魔化す事に成功した……。俺達は校門をくぐり、校舎の方へと向かった。






 


 



























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