表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

8話 大番狂わせ

「あの魔物を一人で倒した……!?」


 崖下で、かけつけてきた先生たちがざわざわと集まる中、私はウルウル目で訴えた。


「こわかったですぅ……でも私、光属性だから狙われちゃったみたいでぇ……」


 大地にはちりちりと焼け焦げた魔物の破片っぽい何かが転がっている。選別できないほどに。


 本当は死体をまるまる残した方が私が強いのを隠せていいはずなんだけど

 原作ではこの死体から“闇魔力”が検出され、エミリア様の力で巨大化したのがばれてしまう。

 そこからエミリア様が断罪 → 家没落ルートが始まってしまう。


 だから今回は——跡形も残さなかった。

 力を隠す方向はあきらめスーパー強い光属性女子の爆誕である。


「なんか頑張ったら倒せちゃいましたぁ★」


 可愛くきゃぴっと言っておく。


「やはり君は凄い!!

 光の力を持つ者の中でも“神に愛されし子”だ!!」


 学園長が目をうるませて感動している。

 この人、小説でも最後まで私の信者だった光教のド級信者。

 媚びておくと勝手に守ってくれる。


「学園長ってば、大袈裟ですぅ。

 でも嬉しいです♡」


「と、とにかく被害がなくてよかった……」とメガネ先生が安堵し、


「やはりこれは神の導きぃぃぃぃ!!」


 感動して私に抱き着こうとした学園長を


「うるさい!!」


 と、盛大にどついていた。


***


「リアナさん!!」


 生徒たちがわぁっと集まってくる。


「すごかった……! 本当に一人で倒したの?」

「誰も怪我してないとか……ありえないだろ……!」

「光属性やっぱすげぇ……」


 称賛の嵐。

 遠くでエミリア様が胸を押さえて、ほっと息をついている。


 原作では、この瞬間に“闇魔力の残滓”が出てエミリア様にとっては地獄が始まった。

 でも今回は魔物から闇魔法の残滓をみつけるのは無理だろう。

 あのレベルで焼け焦げて散り散りになったものから見つけるのは今の技術では無理だ。


(これでエミリア様には絶対に罪がいかない!)


「リアナさん、本当に……ありがとうございました……!」


 エミリア様が今にも泣きそうな顔で手を握ってくる。

 その姿に胸がぎゅっとなる。


 こんないい子が酷い目にあうのはひどすぎる。


「エミリア様こそ凄かったですよ♡

 闇魔法のバフ、めーっちゃ役に立ってましたぁ!」


「えっ……わ、わたし……?」


 エミリア様が驚いた顔をして、そっと笑う。


「私……初めてなんです。

 魔法を、褒めてもらえたの……」


 その言葉に、生徒たちがざわりとする。


「たしかに……闇魔法がなかったら危なかったし」

「エミリア様、すごかったんだな」

「なんか……誤解してたかも……」


(よしよし♡ 計算どおり)


 エミリア様の評価が、初めて正しく向き始めている。


 そこへ——


「リアナぁぁぁ!! よくぞ無事でしたぞおぉぉ!!」


 と学園長がダッシュで寄ってくる。


「いやぁぁぁ!! メガネ先生止めてぇぇぇ!!」


 キャラを忘れて思わず逃げる私。


「学園長!! 生徒が怯えてます!!」

「うるさいぃぃ!! 光の子に触れたいだけじゃぁ!!」


「それリアルセクハラっ!!」


 ガチで突っ込む私。

 学園長は役立つけど、実際この感じは怖いわっ!


 でも学園長が光属性を全肯定してくれるおかげで、

 皇子は下手に手を出しにくい。


(エミリア様も守らなきゃいけない。

 ここからが逆襲編の本番だからね、皇子様?)


 などとかっこいいことを思いつつ、全速力で学園長から逃げるのだった。


***


「リアナが倒した……だと!?」


 生徒会長室で報告を受けたアンヘルは、机をだんっと叩いた。


「しかも、“エミリア様が闇魔法をほどこしたおかげ”で魔物のターゲットが外れた、と……

 生徒の間でエミリア様への誤解が解け始めているようです」


「何をやっているんだっ!!」


「申し訳ありません!」


(まずい……これは非常にまずい……)


 本来の計画は、

 エミリアを孤立させて自分に依存させること。


 なのに——


 リアナのせいで全部ひっくり返った。


(リアナ……あの女……!)


 しかも厄介なことに——


 光魔法の平民少女が、第二皇子と結婚したらどうなる?


 第二皇子はまだ8歳。

 今すぐ何かあるわけではないが、未来の脅威にはなり得る。


(本当に……厄介すぎる)


 アンヘルは再び机をばんっと叩いた。


 計画は大きく狂い始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ