26話 最終話
帝都を揺るがせた騒動から、数週間後。
皇子はすべての罪を認め、皇位継承権は剥奪。
帝国は混乱の収束に向けて慌ただしく動いている。
一方、公爵家は帝国を離れ、
新しい“独立領”の整備に追われていた。
今日も私は、エミリア様とともに、
開墾予定地の視察に出ている。
「リアナ様……本当に、いくらお礼を言っても足りません」
「もう〜♡ エミリア様ったらぁ。褒めすぎは美肌に悪いですよぉ♡」
肩に乗ったミニ竜が「くぅ」と鳴く。
どうやら今日もエミリア様が大好きらしい。
私には懐いてくれないのは少々解せないけれど。
「お父様もお母様も、リアナ様には感謝してもしきれないって……
騒動のあと、領地の再編でずっと走り回っていてお礼に来れないのを残念がっていました」
「お役に立てたならよかったです。平穏が一番ですからっ♡」
のほほんと笑ってみせると、
エミリア様はふっと優しい笑みを返した。
「……リアナ様は、本当に強い方です」
「そんなことないですよ♡エミリア様」
照れ隠しに視線をそらしてしまう。
そこへ――。
「リアナさん。少し時間をもらってもいいですか?」
歩いてきたのはアルバート様。
公爵位を継いだせいか、その佇まいには以前より落ち着いた風格が宿っている。
「行ってらっしゃいませ、リアナ様」
エミリア様に軽く背中を押されて、私は彼の後についていった。
***
新役所の建設予定地を見下ろせる、小高い丘。
風がよく通り、遠くまで見渡せる静かな場所。
アルバート様はそこで足を止めた。
「改めて――ありがとうと言いたかった。
君のおかげで、僕も、家族も、領民も守られた」
「そんなぁ~♡私がやったんじゃなくてぇ、
皇子様が勝手に失敗しただけじゃないですからっ」
「……君はいつも、そうやって軽く言う」
小さく息をつくその表情は、どこか優しかった。
「リアナさん。
君が望むなら、ここで暮らしてもいい。
別の場所へ行ってもいい。
どちらでも――
君の“自由”だけは、必ず守る。
あの契約に縛られることは、もう二度とない」
「…………優しいんですねぇ、アルバート様って」
「優しくなんかないよ。
ただ――君が傷つく未来を、もう見たくないだけだ」
その言葉に、胸の奥がじんわりあたたかくなる。
「……ふふっ。そう言われると、悪い気はしませんねぇ♡」
「それなら、よかった。
焦らなくていい。いつか……本当に頼りたくなったら、
その時は“そばにいる”」
告白でも求婚でもない。
けれど、逃げ道を塞がず、押し付けもしない……
優しい“居場所”の提示。
こういうのが、一番ずるい。
「も〜……アルバート様ってば……。
そんなの、期待しちゃうじゃないですかぁ♡」
「期待してくれて、構わないよ」
真正面から返されてしまい、
思わず笑ってしまった。
私はスカートをくるりと揺らし、丘を降りはじめる。
「お世辞でもうれしいですっ♡」
そういって振り返ると、アルバート様が静かに微笑んでいた。
その穏やかな表情は、優しくて。
私はほんの少しだけ、歩幅をゆるめる。
(……ま、ゆっくり考えればいいですよね)
小説になるはずだった未来は消えたけれど、私の未来はーーこれからずっと続くのだから。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました!
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次作『視え令嬢』投稿しております!!
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すでに完結まで書けていて予約投稿してあります!
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※感想のお返事遅れていて申し訳ありません。体調がよくなり次第感想のお返事&対応させていただきます!本当にありがとうございました!!




