21話 犠牲?玉の輿?それとも……( ̄ー ̄)ニヤリ
「あんな契約……酷すぎます……っ!!
これでは、リアナ様お一人が犠牲ではありませんか!!」
屋敷に戻るなり、エミリア様は堪えきれず膝をつき、涙をこぼした。
――そう。
あの後、私は皇子と契約書にサインした。
条件はこうだ。
・皇子と私が**形式上、婚約(結婚)**すること
・その代わり、エミリア様の領地の“完全独立”を保障
・皆の前で、皇子が“公的に婚約破棄を宣告”すること
・皇妃としての無茶な命令は禁止
・帝都の“魂を使う呪い”は二度と行使不能にする
・私は金と自由を得るが、最低限の皇妃業務は履行
本当は――公爵家もろとも帝都を離れるしかなかった。
そうしなければ、帝都に居を構える以上、あの狂った皇子の呪いの“人質”にされるから。
私は、小さく息をついた。
「こんなの……こんなの、絶対に間違っています。
リアナ様が、あんな人と結婚しなければいけないなんて……私は、反対です!!」
エミリア様が震える手で私の手を握る。
足元では、ミニサイズの魔龍が「くぎゅぅ……」と心配そうに尻尾を揺らしていた。
確かに、自由と金は約束した。
けれど――“皇妃としての最低限の務め”が条約に含まれてしまった以上、完全な自由など存在しない。
皇子はきっと、条文の隙をついて理不尽な命令をいくらでも押し付けてくるだろう。
それでも私は、にっこり笑った。
「エミリア様、大袈裟ですよぉ~♡
これって玉の輿ですよ? 平民女が皇子様と結婚できるなんて、
シンデレラストーリーじゃないですかぁ♡
贅沢満喫しちゃいますから、心配しないでください」
軽く冗談めかしてみせたその瞬間。
「……ごめんなさい。本当に、ごめんなさい……!」
エミリア様が涙のまま抱きついてくる。
細い身体が震えていた。
「本当に、君はそれでいいのか」
アルバート様までが、苦しげに眉を寄せて言う。
「君だけが犠牲になっている。私は……何も守れなかった」
公爵も拳を固く握り、悔しさのあまり壁を殴りつけた。
乾いた音が屋敷に響く。
「気にしないでください、公爵閣下♡」
私はそっと歩み寄り、公爵の険しい顔を覗き込む。
「リアナさん……」
「ひとつだけ、お願いがあるんですけど――いいですか?♡」
私はにんまりと笑い、わざとらしくぶりっ子ポーズをしてみせた。




