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出来損ない勇者のスキルメーカー ~追放された俺は、地味スキルで世界を裏から支配する~  作者: 悠々


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第98話:古文書の解読

俺たちが、満身創痍の状態で『月影』の一族の隠れ家へと帰還した時、オルデンをはじめとする魔族たちは、言葉を失った。

特に、俺の背中でぐったりと意識を失い、浅い呼吸を繰り返すルナの姿を認めたオルデンの顔は、驚愕と、そして深い悲痛の色に染まっていた。


「……なんということだ。アルテミスの姫君が、これほどまでに……」


オルデンは、ルナのただならぬ消耗ぶりを即座に見抜き、厳しい顔で一族の者たちに指示を飛ばした。

「急げ! 一族に伝わる秘薬『月雫の霊薬』を! それと、一番静かな部屋を用意しろ!」


俺は、隠れ家の奥にある一番清潔な寝台にルナをそっと横たえた。彼女の体は熱く、うわ言のように時折、俺の名前を呼んでいる。その姿を見るたび、俺の胸は罪悪感で張り裂けそうになった。

オルデンが、貴重な霊薬をルナの口に含ませ、治癒の術を施していく。だが、彼女の意識が戻る気配はなかった。


「……若者よ。姫君の消耗は、ただの魔力枯渇ではない。生命力そのものを、魂を燃やした代償だ。我らの薬と術で、命を繋ぎとめることはできるだろう。だが、目覚めるかどうかは、姫君自身の生命力にかかっている」


オルデンの言葉が、俺の無力さを改めて突きつけてくる。

俺は、ただ、意識のないルナの手を握りしめることしかできなかった。

この温もりを、失うわけにはいかない。絶対に。


俺が、自責の念と無力感に打ちひしがれていた、その時だった。

「……ユウキさん」

リリスが、数冊の古びた羊皮紙の束を抱えて、俺の隣に立った。


「今は、私たちができることをしましょう。ルナさんのためにも」

彼女が差し出したのは、一族に代々伝わるという、古代言語で記された古文書だった。

そうだ。感傷に浸っている暇はない。俺には、まだやるべきことがある。


俺は、ルナの治療をオルデンに託すと、別の部屋に移り、古文書の解読に取り掛かった。

テーブルの上に広げられた羊皮紙には、ミミズが這ったような、全く見覚えのない文字がびっしりと記されている。普通の人間なら、これを解読するなど不可能だろう。


だが、俺には【概念の翻訳者】がある。

俺は、古文書にそっと手を置き、意識を集中させた。


> **【古代魔族語ハイ・デーモンの解読を開始…】**

> **【警告:対象の言語体系は極めて複雑です。解析に時間を要します】**


脳に、直接情報を流し込まれるような感覚。

膨大な文字の羅列が、俺の思考を埋め尽くしていく。

一族の歴史、伝説、魔法の詠唱。そのほとんどは、今の俺たちには関係のない情報だった。


俺は、焦る気持ちを抑えつけ、キーワードを頼りに情報を絞り込んでいく。

『始祖の祭壇』『鍵』『天を穿つもの』。

そして、『アンチ・ロンギヌス』。


何時間、そうしていただろうか。

外の様子も、時間の感覚も、全てが意識から消え去り、俺はただ、古代の文字が持つ「概念」の海を泳ぎ続けていた。


そして、ついに。

ある一つの記述が、俺の目に飛び込んできた。


> **【概念:始祖の盟約】**

> 『……始祖は、大いなる災厄『天を穿つもの』に対抗するため、人間の王家と盟約を結んだ。我らは、災厄を打ち消す『アンチ・ロンギヌス』を創り出し、王家は、その『鍵』を起動させるための聖なる祭壇を、自らの墓所の最深部に築いた……』


王家の、始祖の墓所。

その言葉に、俺は息を呑んだ。


> **【概念:祭壇の所在地】**

> 『……聖なる祭壇は、偽りの太陽が昇る場所、王家の権威の礎にして、その終着点。すなわち、王都の地下深くに眠る、『王家の始祖の墓所』にあり……』


―――見つけた。


全ての点が、線として繋がった。

『アンチ・ロンギヌス』を使うべき、詠唱の場所。

『■■の祭壇』の正体。

それは、敵の本拠地のど真ん中。王都の、地下深くに存在する、王家の墓所だったのだ。


なんという皮肉。

敵の最強の武器を無力化するための場所が、敵の本拠地の、最も神聖な場所にあるとは。


俺は、古文書から手を離し、大きく息を吐いた。

疲労で、目の前がぐらぐらと揺れる。

だが、俺の心は、かつてないほどに澄み渡っていた。


最終決戦の場所は、定まった。

王都。

俺が、全てを奪われ、絶望の淵に突き落とされた、あの忌まわしい場所。


「……待っていろよ、王子。アイカ」


俺は、静かに、しかし確かな怒りと決意を込めて、呟いた。

俺たちの物語の、本当の始まりの場所で。

俺が、この手で、全てを終わらせてやる。


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