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出来損ない勇者のスキルメーカー ~追放された俺は、地味スキルで世界を裏から支配する~  作者: 悠々


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第76話:反撃の協力者

魔族の少女リリスを助けた一件から、数日が過ぎた。

俺たちは、タルガの街で「魔石」の輸送に関する情報を集め続けていたが、掴めたのは断片的な噂ばかり。焦りが募る中、俺の『魔力傍受』が、これまでとは比較にならないほど強力で、そして冷徹な魔力の波を捉えた。


「……ルナ、来るぞ」

「うん……すごく、嫌な感じがする」


俺たちが路地裏に身を隠した、その直後だった。

雑踏が、まるでモーゼの十戒のように、左右に割れていく。その中央を、一人の男が、静かな足取りでこちらへ向かって歩いてくる。


黒い長衣をまとった、銀髪の優雅な男。その腰には、装飾の美しい細剣が一振り。一見すると、どこかの貴族のようにも見える。

だが、その瞳は、獲物の全てを見透かすかのような、底なしの深淵を湛えていた。

シルヴィア、ボルグ、レオン。これまで対峙した『影の猟犬』たちとは、明らかに格が違う。こいつが、リーダー格か。


男は、俺たちが隠れている路地裏の前で、ぴたりと足を止めた。


「――そこにいるのだろう? “出来損ないの勇者”ユウキ君。そして、アルテミスの姫君」


その声は、穏やかでありながら、有無を言わせぬ絶対的な圧力を伴っていた。

俺たちの居場所は、完全に見抜かれている。


俺はルナを背後にかばいながら、ゆっくりと姿を現した。

「……何の用だ」


「自己紹介がまだだったね。私はゼノン。『影の猟犬』を束ねる者だ」

ゼノンと名乗った男は、優雅に一礼した。その仕草には、一切の隙がない。


「アイカ君から、君の厄介な能力については聞いているよ。『現象そのものを操作する』、実に興味深いスキルだ。だから、こちらも少しばかり対策をさせてもらった」


ゼノンが指を鳴らす。

その瞬間、周囲の建物の屋根の上に、黒装束の部下たちが音もなく姿を現した。その手には、魔力を封じる特殊な呪符が貼られたクロスボウが構えられている。完全に、包囲されていた。


「君のスキルは、おそらく魔力への干渉が起点だろう。ならば、君がスキルを発動させる前に、その頭を射抜けばいい。単純な話だ」

ゼノンの言葉に、俺は背筋が凍るのを感じた。

こいつは、俺のスキルの本質を、ほぼ正確に見抜いている。


「さて、投降してもらおうか。抵抗すれば、姫君の美しい顔に、無粋な穴が空くことになる」

冷酷な宣告。

俺は、奥歯を強く噛みしめた。

『【無名:地盤沈下】』も、『【無名:平衡感覚阻害】』も、発動させる前に射殺される。完全に、詰みだ。


これが、リーダー格の実力。

これが、俺の地味チートの限界。


俺が、絶望的な状況に思考を巡らせていた、その時だった。


「――今よ!」


どこからか、凛とした少女の声が響いた。

その声に、俺ははっとする。リリスだ。


瞬間。

俺たちの周囲の風景が、ぐにゃり、と陽炎のように歪んだ。

ゼノンや、屋根の上の部下たちが、一瞬だけ戸惑いの表情を浮かべる。


「幻術か……! 小賢しい!」

ゼノンが舌打ちし、部下たちに号令を飛ばす。

「構うな、撃て!」


数本の矢が、風を切り裂いて俺たちに殺到する。

だが、その矢は、俺たちの体を通り抜け、背後の壁に突き刺さった。俺たちの姿は、幻術によって作り出された、ただの幻。


「ユウキさん、ルナさん、こっち!」


声に導かれて振り返ると、リリスが、すぐ近くのマンホールの蓋を開けて、手招きをしていた。


「チッ……! 逃がすな!」

ゼノンの怒声が背後から聞こえる。


俺はルナの手を引き、リリスが指し示す地下への入り口へと、迷わず飛び込んだ。

暗く、湿った通路を、息を切らしながら駆け抜ける。


やがて、俺たちは一つの開けた空間に出た。そこには、数人の魔族たちが、武器を手に、しかし俺たちに敵意を向けることなく、静かに佇んでいた。


「……ここは?」

俺が尋ねると、リリスは息を整えながら、まっすぐに俺の目を見て言った。


「私たちの、隠れ家です」


彼女は、深々と頭を下げた。

「先日は、助けていただき、ありがとうございました。おかげで、あなたたちが『影の猟犬』に追われていること、そして、私たちと同じ『敵』と戦っていることが分かりました」


「同じ敵……?」


「はい」

リリスの瞳に、静かな怒りの炎が宿る。


「私たちの一族も、王子たちの非道な『実験』のために、同胞を狩られ、故郷を追われた者たちなのです。私たちは、王子に、そしてアイカという大賢者に、復讐を誓っています」


彼女は、俺とルナの顔を交互に見て、そして、決意を込めて言った。


「あなたたちの力が必要です。そして、私たちの力も、きっとあなたたちの助けになるはず。どうか、私たちと、共に戦ってください」


それは、予期せぬ「協力者」の出現だった。

王国から追われ、勇者からも裏切られた俺たちの前に現れた、同じ痛みを持つ、魔族の少女。

俺たちの反撃の物語は、新たな仲間と共に、次のステージへと進もうとしていた。


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