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出来損ない勇者のスキルメーカー ~追放された俺は、地味スキルで世界を裏から支配する~  作者: 悠々


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第6話:旅のスキル

ザラームへの旅路は、想像以上に過酷だった。整備されていない獣道を進み、ぬかるみに足を取られ、時には道なき道を行く。


ルナは、文句一つ言わずに俺の後ろをついてくる。その体力は見た目通り貧弱で、すぐに息を切らし、顔色を悪くさせた。そのたびに俺は足を止め、短い休憩を挟む必要があった。


(手間のかかる道具だ)


だが、不思議と苛立ちはなかった。それは、この旅を通して、俺が自身の能力の有用性を再確認しつつあったからかもしれない。


ある日の昼下がり、俺たちは濁った沢の前にたどり着いた。水筒の水はとうに尽きている。俺は沢の水を一口含んでみたが、泥臭くて飲めたものではなかった。


ルナは、ただ喉の渇きを耐えるように、乾いた唇を固く結んでいる。


「……少し待っていろ」


俺はそう言うと、意識を集中させて【無名のスキルメーカー】を発動させた。頭の中に、組み合わせ可能な概念のリストが浮かび上がる。


(「概念:水」と「概念:濾過」を組み合わせる)


> **【合成中…】**

> **【生成完了:『【無名:簡易浄水 Lv.1】』】**

> 説明:少量の水を、飲用に適した状態まで浄化する。


俺は水筒に濁った沢の水を満たし、生成したばかりのスキルを発動させた。すると、水筒の中の水が淡い光を放ち、数秒後には泥や不純物が消え、透き通った綺麗な水に変わっていた。


俺はそれを一気に呷り、喉を潤す。味も問題ない。

残りを、黙ってルナに差し出した。彼女は一瞬戸惑ったように俺の顔を見たが、やがておずおずと水筒を受け取り、小さな口でゆっくりと水を飲み始めた。


夜になれば、このスキルはさらに真価を発揮する。

野営の準備を終え、火を熾す。森の夜は、羽音を立てる無数の吸血性の虫が厄介だった。


(「概念:風」と「概念:忌避」を組み合わせる)


> **【合成中…】**

> **【生成完了:『【無名:害虫避けの結界 Lv.1】』】**

> 説明:指定した範囲内に、虫が嫌う微弱な風の結界を展開する。


スキルを発動させると、俺たちの周囲に目には見えない空気の壁ができたように、あれほどうるさかった羽音がピタリと止んだ。これで、夜も安眠できる。


俺は焚き火の前に横になりながら、自嘲気味に笑った。

【聖剣術】だの【大賢者】だの、王城にいた勇者たちの派手なスキルを思い出す。それに比べて、俺の作り出すスキルはなんと地味なことか。


『【無名:簡易浄水】』

『【無名:害虫避けの結界】』

『【無名:足音消失】』


どれも、魔王を倒すのには何の役にも立たないだろう。

だが、この世界で「生き延びる」ためには、これ以上なく有用な力だった。


誰にも頼らない。誰の助けも借りない。

水も、安全な寝床も、この手で作り出す。


この力がある限り、俺は一人で生きていける。

俺は、自分の選択が間違っていなかったことを確信し、静かに目を閉じた。隣では、道具であるルナが、虫のいない静かな夜に、少しだけ安らいだ寝息を立てているような気がした。


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