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出来損ない勇者のスキルメーカー ~追放された俺は、地味スキルで世界を裏から支配する~  作者: 悠々


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第68話:決別

「仲間、だと?」


俺の口から、凍るような声が漏れた。

目の前で、かつて心を許しかけた少女が、俺の命を「コスト」と断じ、その上で協力を求めてきている。その、あまりに歪んだ論理に、俺の怒りは沸点をとうに超えていた。


「そうよ、仲間。あなたのその未知のスキルは、私の計算を狂わせた唯一のイレギュラー。でも、それは同時に、私の計画をより早く、より確実に達成させるための、最高のカードにもなり得るわ」


アイカは、まるで魅力的な取引でも持ちかけるかのように、淡々と続ける。

「魔王を倒し、この非合理で感傷的な世界を、完全な論理と合理性のもとに再構築する。この偉大な目的のために、あなたの力を貸しなさい、ユウキ。それが、あなたにとっても最も『合理的』な選択よ」


その言葉を聞いて、俺は、ふっと笑ってしまった。

あまりの馬鹿馬鹿しさに。そして、こいつが、もう俺の知っている相川愛歌では、決してないという事実に。


俺は、隣で静かに怒りを燃やしているルナの手を、強く握りしめた。

温かい。

そうだ。これこそが、俺の真実だ。

こいつの言う、血の通わない合理性など、クソ食らえだ。


「……断る」


俺は、はっきりと、きっぱりと、言い放った。


「お前の言う正義も、合理性も、俺はもう信じない。お前たちの言う『より多くの人々』とやらのために、誰かが犠牲になるのが当たり前だなんて、そんな世界は、間違っている」


俺は、ルナの手を握る力に、さらに力を込めた。

この少女は、その「犠牲」にされた一人だ。俺も、そうだ。

俺たちは、大義という名の傲慢によって、全てを奪われた。


「俺はもう、お前たちの言う正義のためには戦わない。世界を救う? 冗談じゃない」


俺は、アイカの冷たい瞳を、まっすぐに見据えて宣言した。


「俺は、俺の守りたいものを、俺のやり方で守るだけだ。たとえ、それが世界中の人間を敵に回すことになったとしても、な」


それは、俺が過去のトラウマと、そして俺を裏切った世界そのものと、完全に決別した瞬間だった。

俺の言葉に、アイカは初めて、その表情をわずかに歪ませた。それは、怒りではなく、理解できないものを前にした、純粋な困惑。


「……残念だわ、ユウキ」


やがて、彼女は心底がっかりしたように、小さくため息をついた。


「あなたも、結局は感傷に溺れるだけの、ただの『不良品』だったのね。私の計算では、あなたはもっと合理的な思考ができる人間のはずだったのに」


その言葉を最後に、彼女は俺たちへの興味を完全に失ったように、背後の巨大な制御装置へと向き直った。そして、いくつかの水晶に触れる。


ゴゴゴゴゴ……!


ドーム状の空間全体が、地響きを立てて揺れ始めた。

俺たちの目の前の床が、ゆっくりと裂けていく。そして、その裂け目から、巨大な「何か」がせり上がってきた。


それは、黒曜石のような硬質の素材で作られた、身の丈五メートルはあろうかという、巨大な人型のゴーレムだった。その体には、禍々しい紫色の紋様が走り、両腕は巨大な鉄槌となっている。魔力も、生命の気配も感じない。ただ、圧倒的なまでの「破壊」の概念だけが、そこから放たれていた。


「さようなら、ユウキ。私の計画の、最後のノイズ」


アイカは、一度もこちらを振り返ることなく、冷たく言い放った。

「――起動。侵入者を、排除しなさい」


その命令に、ゴーレムの頭部にある単眼が、ギョロリと赤い光を灯した。

そして、俺たち二人を、明確な「敵」として認識する。


死闘の始まりを告げる、無慈悲な起動音。

俺は、ルナを背後にかばい、短剣を構えた。

絶望的な戦力差。だが、俺の心は、不思議なほど静かだった。


守るべきものが、ここにある。

そのために、俺は、何度だって立ち上がってやる。


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