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出来損ない勇者のスキルメーカー ~追放された俺は、地味スキルで世界を裏から支配する~  作者: 悠々


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第43話:隠れ里エルム

アルテミスの廃墟を後にしてから、俺たちの旅はさらに過酷さを増した。

ゲオルグの地図が示す道は、もはや道と呼べるものですらなかった。人が踏み入ることを拒むかのような、険しい山道。時には崖を伝い、時には急な斜面を滑り落ちるようにして、俺たちはひたすらに北東を目指した。


「ユウキ、大丈夫……?」

息を切らしながらも、ルナが俺の顔を覗き込む。彼女はもう、ただついてくるだけの人形ではない。俺の体調を気遣い、周囲の警戒を怠らない、頼れるパートナーだ。


「問題ない。それより、お前こそ平気か」

「うん。平気」

彼女は力強く頷く。その瞳には、故郷の廃墟を乗り越えた者の、静かな強さが宿っていた。


数日後。

地図が示す最後の目印である、二股に分かれた巨大な古木にたどり着いた時、俺たちはその先に道がないことに気づいた。あるのは、ごつごつとした岩壁だけだ。


「行き止まり……か?」

俺が訝しんでいると、ルナが何かに気づいたように、岩壁の一点を指差した。

「ユウキ、あそこ……」

彼女が指差す先には、蔦や苔に覆われて、巧妙に隠された、人が一人やっと通れるくらいの隙間があった。


ここが、入り口か。

俺たちは顔を見合わせ、頷き合うと、その狭い隙間へと身を滑り込ませた。

薄暗い岩のトンネルを抜けた先――そこに、信じられないような光景が広がっていた。


鬱蒼とした森の中に、まるで自然と一体化するように、小さな集落がひっそりと存在していた。巨大な樹木の幹をくり抜いて作られた家々。苔むした石垣に囲まれた畑。外部の世界から、完全に隔絶された空間。ここが、隠れ里「エルム」か。


だが、安堵する暇はなかった。

俺たちが里に足を踏み入れた瞬間、どこからともなく、複数の人影が現れた。手には弓や槍を構え、鋭い視線で俺たちを射抜いている。猟師のような、無駄のない動き。彼らは、あっという間に俺たちを取り囲んだ。


「……何者だ。どうやってここへ来た」

代表者らしき、壮年の男が低い声で問う。その声には、よそ者に対する強い警戒心と敵意が剥き出しになっていた。


俺の隣で、ルナの体がこわばるのが分かる。俺は、彼女を背後にかばうように立ち、冷静に相手を観察した。下手に刺激すれば、問答無用で矢を射かけてくるだろう。


「俺たちは、ゲオルグという商人の紹介で来た」

俺がそう言うと、男の眉がピクリと動いた。だが、警戒を解く様子はない。


「ゲオルグの名をどこで聞いた。答えろ」

じり、と包囲の輪が狭まる。絶体絶命。

だが、俺は焦らなかった。ゲオルグは、この時のために「切り札」を俺に託してくれていた。


俺はゆっくりと懐に手を入れ、首から下げていたペンダントを取り出した。そして、それを男の目の前に、はっきりと見えるように掲げる。

木漏れ日を浴びて、ペンダントに刻まれたアルテミス家の三日月の紋章が、鈍い銀色の光を放った。


その瞬間、里人たちの間に、どよめきが走った。

「なっ……! あの紋章は……!」

「まさか、アルテミス家の……!」


先ほどまで俺たちに向けられていた殺気と敵意が、嘘のように霧散していく。代わりに、彼らの視線には、驚愕と、畏敬と、そして信じられないものを見るような戸惑いの色が浮かんでいた。


代表の男は、武器を構えたまま、わなわなと震えている。

やがて、包囲の後方から、杖をついた一人の老人がゆっくりと姿を現した。その深く刻まれた皺と、全てを見通すかのような賢者の瞳が、俺たちをじっと見据える。


「……その紋章を持つお方。そして、その白銀の髪の姫君。お待ちしておりました」


老人は、深く、深く、頭を下げた。

「さあ、こちらへ。長老がお待ちです」


俺たちは、武器を下ろした里人たちに道を拓かれ、その老人に導かれるまま、里で最も大きな大樹の中にある、長老の家へと案内されるのだった。


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