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出来損ない勇者のスキルメーカー ~追放された俺は、地味スキルで世界を裏から支配する~  作者: 悠々


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第12話:最初の報酬

廃鉱からザラームに戻った俺は、ルナを宿屋に残し、一人でギルド裏の酒場『黒猫の尻尾』へと向かった。あの忌々しいざわめきを振り払うように、俺の足取りは自然と速くなる。


店の扉を開けると、カウンターにいたバーテンダーが俺の顔を見てわずかに目を見開いた。そして、無言で店の奥を示す。どうやら、俺が生きて帰ってきたことは、彼にとっても予想外だったらしい。


個室の扉を開けると、情報屋グレイがテーブルに突っ伏して居眠りをしていた。俺が立てた物音で目を覚ました彼は、寝ぼけ眼で俺の姿を認めると、心底驚いたという顔で椅子から飛び上がった。


「……なっ、お前、生きてたのか!?」


「見ての通りだ。約束通り、調査結果を報告しに来た」


俺はグレイの動揺を無視し、向かいの椅子に腰を下ろした。そして、懐から調査中に書き留めたメモを取り出し、テーブルの上に広げる。


「まず、廃鉱の『呪い』の正体。これは毒性のある魔力瘴気だ。発生源は最深部の地下水脈。そこから鉱山全体に広がっている」


「……瘴気、だと?」


「ああ。だが、それだけじゃない」


俺は、グレイが口を挟む隙を与えずに続けた。


「瘴気を浄化、あるいは対策さえすれば、あの鉱山はまだ使える。内部には、未採掘のミスリル鉱脈が手付かずで残っている。純度は低いが、好事家や魔道具師相手なら高値で売れるだろう。これが、鉱脈のおおよその位置と規模だ」


俺が地図上に印をつけた場所を指し示すと、グレイは信じられないというように、俺の顔と地図を交互に見た。彼の爬虫類のような目に、驚愕と、そしてすぐに貪欲な光が宿るのを俺は見逃さなかった。


「……おい、そいつは本当か? ミスリルだぞ?」


「本当かどうかは、あんたが確かめればいい。俺の仕事は、あくまで調査と報告だ」


グレイはしばらく唸っていたが、やがて大きく息を吐き、観念したように笑った。

「……ハッ、降参だ。まさか、本当に呪いの正体を突き止めて、おまけに宝の地図まで持って帰ってくるとはな。あんた、一体何者なんだ?」


「ただの流れ者だ。それより、約束のものを貰おうか」


「……ああ、分かってるよ」


グレイは苦々しい顔で立ち上がると、棚の奥から小さな木箱を持ってきた。

箱の中には、一枚の銅のプレートと、羊皮紙の書類、そしてずしりと重い革袋が入っていた。


「これが、あんたの新しい身分証と、ギルドの登録証だ。名前は『ユウ』。出身は南の小村ってことにしておいた。プレートは一番下の銅ランクだが、文句は言うなよ。それと、これが今回の報酬だ。金貨百枚。調査報告の価値を考えれば、これでも安いくらいだ」


金貨百枚。俺が奴隷市でルナを買った銀貨五枚が、金貨一枚の二十分の一だと考えれば、破格の報酬だ。

俺は無言でそれらを受け取り、懐にしまう。


「……あんた、面白いな。気に入ったぜ。また何か仕事があったら、声をかけさせてもらう」


グレイの言葉を背中で聞き流し、俺は酒場を後にした。

これで、ようやくスタートラインに立てた。偽の身分と、ギルドの登録証、そして当面の活動資金。


俺はまず、この金でまともな装備を整えることにした。俺自身の、そして「道具」であるルナの分も。道具の性能は、所有者の利益に直結する。ボロをまとった奴隷を連れていては、無用なトラブルを招くだけだ。


その後は、ギルドで目立たない依頼を受ける。薬草採取、素材の運搬、簡単な調査。派手な討伐依頼は避ける。力をつけ、金を稼ぎ、誰にも頼らず、誰にも関わらず、この街で生きていく。


地味な成り上がり。上等だ。

俺は、手に入れた報酬の重みを確かめながら、冷たい満足感と共に宿への道を歩いていた。


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