表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出来損ない勇者のスキルメーカー ~追放された俺は、地味スキルで世界を裏から支配する~  作者: 悠々


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/115

第102話:内乱の攻防と聖騎士の焦り

王都は、燃えていた。

かつて、平和と繁栄の象徴だった白亜の街並みは、今や黒煙を上げ、市民の悲鳴と怒号、そして剣戟の音が鳴り響く、地獄の戦場と化していた。


「――聖技!『グランドクロス』!」


俺、マサルは、白銀の鎧に刻まれた紋章を輝かせ、聖なる力を解放した。愛用の聖剣が眩い光を放ち、地面に巨大な十字の亀裂を走らせる。その光の奔流に飲み込まれ、俺たち反乱軍の行く手を阻んでいた鋼鉄のゴーレムが、甲高い断末魔を上げて爆散した。


「怯むな! 道は開いた! 王城へ向かい、逆賊王子を討つぞ!」


俺の叫びに、周囲の騎士たちが「応!」と雄叫びを上げて続く。

牢から解放されて数日。俺とゲルハルト副団長が率いる反乱軍は、王子の非道を訴え、王城の奪還を目指していた。

当初、俺たちの正義は、多くの騎士たちの心を動かし、戦況は有利に進むかに見えた。


だが、その希望は、すぐに打ち砕かれた。


「――新たな敵性体、出現! 第二防衛ラインより、新型ゴーレム部隊です!」

「くそっ、またか! あれは、対魔法障壁を装備しているぞ!」


王城へと続く大通りに、次から次へと、無機質な殺意を放つ魔道具の兵団が出現する。

蜘蛛のような多脚戦車、鳥のように空を舞う自律攻撃機、そして、俺が今しがた破壊した鋼鉄ゴーレムの改良型。

その統率の取れた動きと、冷徹で無駄のない戦術は、明らかに一人の天才的な指揮官の存在を示唆していた。


――【大賢者】アイカ。


彼女が、王子派閥の軍師として、この防衛戦を指揮しているのだ。

俺の聖剣技は、一体一体の敵を破壊するには絶大な威力を発揮する。だが、アイカは俺の力を分析し、一体を倒せば、その弱点を補った新たな三体を投入してくる。まるで、底なしの兵棋を相手にしているようだった。


「マサル様、無茶はなりません! このままでは、我々の消耗が先に限界を迎えますぞ!」

ゲルハルト副団長が、盾で敵の攻撃を防ぎながら、俺に叫んだ。

彼の言う通りだった。戦況は、完全に膠着している。いや、じりじりと、しかし確実に、俺たちは押されていた。

俺の周りで、仲間であるはずの騎士たちが、血を流し、倒れていく。


「ぐあっ……!」

「すまない、マサル様……。俺は、ここまで……」


昨日まで、同じ釜の飯を食い、この国の未来を語り合った仲間が、目の前で命を落としていく。

その光景が、俺の心をナイフのように抉った。


(俺は、本当に正しかったのか……?)


王子を討ち、この国の正義を取り戻す。そのために、俺は反乱の首謀者となることを受け入れた。

だが、その結果が、この地獄だ。

俺の正義は、多くの血を流し、多くの命を奪っている。


(ユウキ……。お前なら、こんな時、どうする……?)


脳裏に、あの市場で再会した、友の姿が蘇る。

冷たい瞳で、俺の正義を問いかけた、彼の言葉。

『あんたの言う正義とやらが、誰かを不幸にしていないと、どうして言い切れる?』

今なら、その言葉の本当の意味が、痛いほど分かる。


力押しでは、勝てない。

アイカの知略と、王子が持つ無尽蔵の戦力の前に、俺たちはすり潰されていくくだけだ。

この状況を打開するには、戦力そのものを増やすしかない。

王子の非道を、生体実験の真実を、王都の民衆に知らしめることができれば。

彼らが俺たちの「正義」を信じ、味方についてくれれば、戦況は覆るかもしれない。


だが、どうやって?

この戦場の喧騒の中で、どうやって真実を伝えろというのだ。

王子派閥は、すでに情報統制を敷き、俺たちを「魔王軍に内通した、極悪非道の反逆者」として喧伝している。民衆は、恐怖と混乱の中で、どちらを信じていいか分からずにいる。


「……くそっ!」


俺は、自分の無力さに、唇を噛みしめた。

聖騎士としての力はあっても、戦況全体を覆す知略がない。

仲間を救うための、具体的な術がない。


焦りだけが、空回りしていく。

その間にも、アイカの冷徹な魔道具たちは、感情なく、仲間たちの命を刈り取っていく。

俺は、ただ、目の前の敵を斬り伏せることしかできずに、燃える王都の空を、絶望的な思いで見上げるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ