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出来損ない勇者のスキルメーカー ~追放された俺は、地味スキルで世界を裏から支配する~  作者: 悠々


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第100話:それぞれの決戦へ

全ての情報が、揃った。

最終決戦の場所は、王都。

俺は、グレイからの報告書を握りしめ、静かに闘志を燃やしていた。

あとは、この昏睡状態にあるパートナーが目覚めるのを待つだけだ。


その、数日後のことだった。

俺が、いつものようにルナの手を握り、彼女の寝顔を見守っていた時。

ぴくり、と。

俺の手を握り返す、か細い力が伝わってきた。


「……!」


俺は、はっとして彼女の顔を見る。

固く閉じられていた彼女の瞼が、ゆっくりと、ゆっくりと持ち上がっていく。

そして、その蒼い瞳が、ぼんやりと俺の姿を映した。


「……ユウキ……?」


掠れた、しかし確かに俺の名前を呼ぶ声。

その声を聞いた瞬間、俺の心を満たしていた全ての不安と焦りが、安堵の奔流となって溶けていくのを感じた。


「……ああ。俺だ。分かるか、ルナ」

「うん……。ごめん、なさい……。私……」


「謝るな」

俺は、彼女の言葉を遮った。

「お前は、俺を守ってくれた。……ありがとう、ルナ」


俺の不器用な感謝の言葉に、ルナは驚いたように目を見開き、そして、花が綻ぶように、ふわりと微笑んだ。

その笑顔だけで、俺はもう十分だった。


---


ルナが目覚めたことで、最後のピースがはまった。

俺は、オルデンとリリス、そして『月影』の一族の主だった者たちを、隠れ家の広間に集めた。


テーブルの上に、王都の地図を広げる。

その中央、王城の地下深くに存在するであろう「王家の始祖の墓所」を、俺は指で強く示した。


「全ての情報が揃った。最終決戦の場所は、ここだ」


俺は、これまでに得た全ての情報を、彼らに共有した。

禁忌の魔道具『天を穿つもの』。その対抗兵器である『アンチ・ロンギヌス』。そして、それを使用すべき場所が、王都の地下にあること。

さらに、王都が今、内乱状態にあること。そして、その反乱軍を率いているのが、かつての勇者仲間、マサルであることも。


「俺は、王都へ戻る」

俺は、集まった全員の顔を見回し、力強く宣言した。

「この内乱に乗じて、王城の地下へ潜入する。そして、王子とアイカが『天を穿つもの』を起動させる、その瞬間に、『アンチ・ロンギヌス』を叩き込む。奴らの野望を、この手で終わらせるために」


それは、あまりに無謀で、あまりに危険な作戦。

だが、俺の瞳に宿る揺るぎない決意を見て、誰一人として反対の声を上げる者はいなかった。


「……分かった」

オルデンが、重々しく頷く。

「我ら『月影』の一族も、この戦いに全てを懸けよう。リリス、そして我らが精鋭たちを、お主の元へ」


「私も、行きます」

リリスが、強い意志を宿した瞳で俺を見た。

「これは、私たちの復讐でもあるのだから」


こうして、俺たちの最終作戦が決定した。

俺と、目覚めたばかりのルナ、そしてリリスを含む魔族の精鋭たち。

俺たちは、決戦の地、王都へと向かう。


---


その頃、内乱の炎に揺れる王都の、地下深く。

一つの独房の鉄格子が、ギィ、と重い音を立てて開かれた。


「マサル様! お迎えに上がりました!」


そこに立っていたのは、聖騎士団副団長ゲルハルトと、彼が率いる反乱軍の騎士たちだった。

マサルは、その光景を静かに見つめ、そして、ゆっくりと立ち上がった。


「……ゲルハルト殿。皆も、すまない」

「何を仰いますか! 我らは、貴方様と、そしてこの国の真の正義と共にあります!」


騎士の一人が、マサルのために用意していたものを、恭しく差し出した。

それは、彼が投獄されるまで身にまとっていた、聖騎士の証である白銀の鎧。


マサルは、その鎧を、感慨深げに、しかし力強い手つきで再び身にまとった。

魔力封じの枷が外され、彼の体には、再び聖なる力が満ちていく。

偽りの正義に絶望し、一度は全てを失った男が、真の正義をその手に取り戻した瞬間だった。


「状況は?」

鎧を身につけたマサルが問うと、ゲルハルトが厳しい顔で答えた。

「芳しくありません。アイカ殿の指揮する魔道具部隊の前に、我らの進軍は阻まれております」


「……そうか」


マサルは、牢獄の小さな窓から見える、赤く燃える王都の空を見上げた。

そして、まだ見ぬ友の姿を、その心に思い描く。


(ユウキ……。お前がどこで何をしているのか、俺には分からない。だが、俺はもう間違えない。俺は、俺の信じる正義を、この手で貫いてみせる)


友との再会を、そして、この国の夜明けを信じて。

聖騎士マサルは、仲間たちと共に、激戦の待つ地上へと、その一歩を踏み出した。


それぞれの場所で、それぞれの覚悟を決める、二人の勇者。

彼らの運命が、決戦の地、王都で交錯する時は、もうすぐそこまで迫っていた。


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