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プロローグ

 私は、世界的に大人気のアクションRPG『White Knight III』(ホワイトナイト)の主人公だ。

 シリーズ三作目となるこのゲームで、私の“意思”はBlu-ray Discの中に封じられ、パッケージに収められて店頭の棚に並んでいる。


 そう、私はまだ“始まっていない”。

 このゲームの主人公でありながら、今はただのデータの塊にすぎないのだ。性別も、名前すらも、まだ決まっていない。


 昨日が発売日だったから、店頭では飛ぶように売れている。だが、私はまだ棚の一番下に置かれたままだ。それは、昨日の朝にバイトの奴が私を下段に並べたせいだった。


 同じパッケージの仲間たちは、次々と手に取られていった。パッケージ越しに見る彼らは、どこか誇らしげに見えた。

『おいおい、そんなに急いで冒険に出たいのかよ』

 私はケースの中で、誰にも聞こえない声でつぶやいた。


 一番下の棚など、誰も目を向けてくれない。今日も無理かと思った、

 その時――

 誰かが私を手に取った。裏側の説明書きを読む手の動きが伝わる。私は裏返しになっているので、その人がどんな人物なのかは見えない。だが、棚に戻されることなく、そのままレジへと運ばれていく。


「ピッ」

 ――バーコードが読み取られる音。

 ついに、私は買われたのだ。


 私を買ったのが誰なのか、性別も年齢もわからない。あの「ピッ」という瞬間のあと、視界が真っ暗になった。

 おそらく袋に入れられたのだろう。女性か、男性か、子供か、大人か……変わり者のゲーマー?もしヘビーゲーマーだったら、何度も何度もクリアさせられるのだろうか。

 ――そんなの、正直ごめんだ。


 ため息をつく間もなく、私はバックに入れられて、やがて誰かの部屋の机の上に置かれた。


 そして、しばらくすると、袋の外から伝わる、手の温もり。

そして、袋が開けられる音――


そこにいたのは、一人の女性だった。

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