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夏休み最後の冒険

8月30日(土)

 昨日から始まった俺の不整脈は、今朝になっても回復の兆しは見えない。

前世は、61歳の人生だった。あの時も同じような動悸があり、その後数日でこの世を去った。

 当時60歳代で寿命を迎える人は珍しくなかった。今の平均寿命は80歳代だ。栄養改善と、医療の発達がその主な要因である事は間違いない。俺も現生ではその恩恵を享受でき、すくすくと成長している、と思っていた。

 しかし、それは安易な思い込みに過ぎない。それはあくまでも統計的なものであり、それこそが平均寿命の意味である。誰もが80歳代まで生きるわけではない。10歳代でも死ぬことは普通にある。

 俺は思い悩んだ末、誰かに相談することに決めた。本来ならば体調の不良は親に訴え、病院へ連れて行ってもらうべきだが、中二病という現代的な特殊な病もある。ここは同年代、同世代を生きている兄に相談するのが適切だと判断した。

 では、どちらの兄に相談するべきか、年が近いのは下の兄だが、彼は中二病のような現代病に理解が乏しい気がする。やはりこの件については、ボーとしている、いや、ひょうひょうとしている上の兄に相談することにした。

「清兄さん相談したいことがある」

 俺は昨日からの体調不良を詳しく兄に説明した。

「和三郎、それは(こい)(わずら)いだ」

 (わずら)い、やはり病気だったか。中二病と同種の現代特有の病気なのか、また治療法はあるのだろうか。

「昔からある比較的ポピュラーなものだな。しかし、厄介なことに現代の医療をもってしては治療ができない。ただ結果があるだけだ。この病を(こじ)らせると最悪、それを悲観して自殺という最悪の結果もある」

 清兄は真剣に話してくれているが何故か目が笑っている。楽しそうだ。死に至る可能性がる病気とは言え比較的軽い病気なのだろう。

「それで清兄さん、治療法は無いにしても対処法があるのだろ?」

「そうだな。早く治りたいなら、振られる事だな。でも和三郎はエミちゃんから好かれているからそれはないな。そうなるとこの恋煩い長引きそうだな。しかし安心しろ。和三郎が感じている動悸は死に至るものではない。どちらかと言うと健康的なものだ」

 健康的なもの?ああなるほど、風邪で例えるなら鼻水のようなものだな。病原菌を体外に出すため体が防衛措置を発動させているのに過ぎないと言う事だ。確かに煩わしいが、心配する程でない。

「清兄さんありがとう。大分気持ちが楽になった。一病息災と言うからね

気にせずにしておくよ」

「一病息災?それは違うと思うが、まあ羨ましいぞ」

・・・羨ましい?微妙に話がかみ合っていないよう気がする。


 兄と別れ、自分の部屋に戻ると、外からミツルの声がする。

「ワッサン、遊びに来たぞ」

 窓を開け、玄関の方を見ると、ミツルの他に光も来ていて手を振っている。

「おう、上がるか?」

「いや、夏休みも終わりだから、最後に自転車で遠出しようぜ」

「分った、今そっちに行く」

 階段を下りて、裏の倉庫へ自転車を取りに行った。

 玄関先では、ミツルと光が自転車に跨ったまま待っていた。

「それで、どこに行くんだ。決めているか」

「いやまだ決めていない。でも今まで行ったことのない所まで行って見ないか」

 ミツルのその一言で、わくわくしてきた。

 ついさっきまで悩んでいた事はどこかに行ってしまった。エミが原因と思われる不整脈はどこかに消えてしまったのだ。病気とはそのようなものだ。健康になると痛さも苦しみも直ぐに忘れる。清兄さんは、長引くと言っていたが、そうではなかった。

 俺が別の事を考えていると、光から提案があった。

「それなら、東かがわ市の西の端、ベネッセ大内まで行って見ないか」

 光が提案したのは、ここから20km西にあるリゾートホテルの事だ。往復で40km、良い距離だ。

「いや、俺は東に行って見たい」

「えっ、それは」

 光が驚いた顔をしている。

 俺たちの住んでいる引田地区は東かがわ市の中では東の端だ。そこから更に東は県境を越え、徳島県鳴門市に行くことになる。

 子供だけで市外にでるのは小学校で禁止されている。

「鳴門スカイラインを通って鳴門公園まで足を延ばそう」

 更にミツルが具体的な目標を話す。

 俺は、凄くワクワクしてきた。

 光を見ると、最初は驚いていたが、直ぐに口角を上げ、ニヤリと笑った。俺と同じ気持ちだと分った。

 小学校の規則を故意に破る。そこには言い知れぬ快感があった。

 冒険の始まりだ。この仲間と自転車があればどこまでも行ける気がする。

 鳴門公園までは約26km、途中の休憩ポイントを概略決めて出発した。

 ミツル、光、俺の順番で1列に並んで、国道11号線を走る。

 引田トンネルを抜けると、徳島県鳴門市だ。

 禁止されている県境のラインを俺たちは躊躇なく超えていく。

 心の中ではこの県境を越えた瞬間、少し怖かった。でも前を走るミツルと光の背中を見ていると心は落ち着き逆にわくわくして来る。多分ミツルも光も同じ気持ちだと思う。

 県境を越えた時、光が振り返り俺の顔をみて笑ったのがその証拠だ。あいつも不安があって俺の顔を確かめたのだ。俺は笑ってガッツポーズをした。


 左に播磨灘の海が見える。県境を越える前から景色は変わらない。

でもどんどん家から離れていく。県境を越えた時の快感は薄れていき、少しづつ不安が積もって行く。前を走る二人はどう思っているのだろう。

 出発して約10km走った。そろそろ休憩がしたい。県境を越え4キロほど進んだ所にラーメンショップがある。どんな味かは知らない。まだ昼には時間があるので開店していないようだ。先頭を走るミツルがその店の駐車場に入り自転車を止める。光と俺も後に続き自転車を止める。

 ミツルと光が振り返り俺を見る。二人の顔には少しだけ不安が出ている。

 ああ、二人とも俺と同じ気持ちで走って来たのだな。なぜか二人の不安げな顔を見た瞬間、俺は逆に元気がでてきた。不安なのは俺だけではなかったと言う事と、こいつらには俺の不安を悟らせたくないと言う変なライバル心が芽生えた様だ。

「大分進んだのかと思ったが、まだ10km程度だ。目的地までまだ16kmある。少し休んだら出発しよう。次は俺が先頭、次にミツル、光の順で走る」

「「おう」」

 家から持ってきたポカリをゴクゴクと飲み、また自転車に跨る。後ろを振り向くと二人から親指を立てたサムズアップのサイン。先ほどまでの不安はなくなっている。

 スカイラインを経由した鳴門公園までのコースは、親父に何度か連れて来てもらっているから迷う事は無い。次の休憩ポイントは検問所だ。

 昔はそこで警察がネズミ捕りをやっていたが、最近では事件が起こらない限り、検問所としての機能は果たしていない。でもそこを左折すると鳴門スカイラインの入り口となるので、目印に丁度良い。


 俺は先頭を走る。それは結構疲れる事だと初めて気が付いた。肉体的にも精神的にもだ。誰かの後ろをついて走るのとは違うのだな。なるほど、あのミツルが不安な顔をしていたのが解る。

 時折、後ろを振り向きミツルの顔を見る。その度にミツルが白い歯を剥いて見せる。先頭を行く俺に元気をくれているのだ。良い奴だ。

 そして俺たちはひたすらペダルを漕ぐ。気温は30℃を越えているが風を切りながら自転車は進む。気持ちいい。

 

 1時間ほど走った頃に検問所が見えてきた。そこを左折して自動販売機の前で自転車を止める。これで20km走った。

「随分来たな」

 汗を拭きながらミツルが言う。

「後はスカイラインだけだ」

 光が前方を見据えて言う。

 本当に来てしまった。後はスカイラインを走はすれば目的地の鳴門公園だが、ここからが本番だ。

鳴門スカイラインは四国本島の鳴門から、小鳴門新橋を渡り島田島へ、そこから堀越橋を渡り大手島へ続く。

 我々が普段渡っている橋とは、水面近くの両岸に架けられている物だが、小鳴門新橋や堀越橋は、スカイラインと言うこの道の名の通り、空に架けられている様な錯覚を起こす。または空の中を走る、更に空に発射される、その様な感覚を覚える橋だ。

1回目よりも少し多めの休憩を取り、自転車に跨る。

順番は、光、俺、ミツルの順だ。

「行くぞ」「「おう」」

 光が振り向き号令を掛け、俺とミツルが返事する。気合十分に出発した。


 スカイラインに入って、暫くは鬱蒼と茂る木の下を登りの道が続く。

 5分もしない内に、勉強も運動も抜群の光と比べ、格段にその能力が劣る俺とミツルが遅れだす。

 尻を上げてペダルと漕いでいく光の後ろ姿が、離れていく。

「お代官様、待ってくれ。持病のしゃくが」

 越後屋ミツルが情けない叫び声を上げる。

「ひーひー、これ代官、民百姓を見捨てるでない」

 俺もぜーぜーひーひー息を切らしながら、光に訴える。

 俺たちの声が届いたのか、光は自転車を止めて振り返った。

 光も息を切らしているのが見える。良かった、奴はターミネーターではなかった。

 ミツルと俺は、自転車を止めて待っている光の所まで、何とか自転車を漕いでたどり着くことができた。

 しかし、これ以上自転車を漕いだまま登れそうにない。

「もう少しだ、頑張ろう」

 光は俺たちを励ましてくれる。この三人のパーティーでは、間違いなく光が勇者で、ミツルと俺はあまり役に立たない黒魔導士的な感じだ。鳴門スカイラインと言うダンジョンを攻略するにはバランスが悪い。はっきり言って俺たち二人は、勇者光の足手まといでしかない。

「俺はもうだめだ。俺の屍を越えていけ」

 ミツルがどこからか扇子を取り出し、自分を扇ぎながら態度と全く合わないセリフを言っている。

「俺もだめだ、先に行ってくれ。ミツルの墓をここで守るとする」

「・・・・」

 「待ってくれ」とか「見捨てるな」とか言っておきながら、待っていたら先に行けと言う、面倒くさい奴らだ、と光は考えているのだろう。

 だが、それが中二病というものだ。


 暫くいつもの中二病ごっこで、休憩を取った後、スカイライン攻略を再開する。

「行くぞ」「おう」「おう」

 最後尾のミツルの号令に光と俺が答えるが微妙に合わない。何故か光が疲れているような感じがする。

 だが、心配する必要はなかった。ぐいぐいと光は先頭を走り俺たちを引っ張って行く。俺とミツルも歯を食いしばりついて行く。


 突然先頭の光が止まる。

 いつの間にか、鬱蒼とした木々は姿を消し、道を太陽の光が照らしていた。そして眼下には、真っ直ぐに延びる下り坂とキラキラと光る鳴門の海が見えた。

 最初の峠を登り切った。

 達成感と、苦しみから解放された事、何よりその景色の美しさに感動した。

「「うおーー」」

 俺とミツルが雄叫びを上げた。


 感動の余韻を残したまま光が静かに呟く。

「行くよ」

 光が静かにペダルを漕ぎだす。俺たち二人も、その後に続く。少しずつ自転車のスピードが上がっていく。やがて、自転車は急速にその速度を増し、物凄いスピードで下って行く。

 燕が獲物を捕えに空から急降下するように、3台の自転車が揃ってスカイラインを下る。

「「うおーー」」

 今回の「うおー」は雄叫びではない、悲鳴だ。

 顔にあたる風圧で涙が真横に流れていく。ハンドルが小刻みに震える。今にも分解してしまいそうだ。恐ろしくてブレーキも握れない。

 でもスピードによる恐怖の時間はすぐに終わる。次に現れるのはまた地獄の上り坂である。

 下り坂で得られたスピードを少しでも活かすため、必死でペダルを漕ぐ。俯いたまま歯を食いしばり漕ぐ。

 しかし、徐々に自転車は速度を落とし、やがて坂の中腹で停止した。

「「ぜーぜー」」

 流石の光も耐えきれなかったようだ。俺たちは自転車を降りて押すことにした。

 後ろのミツルも自転車から降りている。

 でも彼は呆けた顔で前方を見ている。

「ワッサン見ろよ。天国に続く階段が見える」

 恐怖と苦しみの繰り返しにより、ミツルは壊れてしまった?

 少し心配したが、言われるまま俺も前方を見上げた。

 そこには天国に続く階段ではなく、空に続く真っ直ぐな道と天に掛けられた橋があった。今まで俯いて自転車を漕いでいたから気が付かなかった。

「凄い」

 もはや言語障害、言葉がない。


 俺一人感動に浸っていると、ミツルは歌を歌いながら、自転車を押し俺を追い抜いて坂を登っている。

「おらは死んじまっただー、おらは死んじまっただー、天国良いとこ一度はおいで・・・」

「・・・・・」

 感動は一瞬だけだった。


 俺もミツルと一緒に同じ歌を歌いながら坂を登ることにした。いつの間にか光も同じ歌を口ずさみながら自転車を押している。


 これ結構楽しい。


 その後何度か下り上りを繰り返し、その回数だけ恐怖と地獄を味わいスカイラインを走破した。

 鳴門公園に着いた俺たちは少し早めの昼食をとる。メニューは鳴門うどん。腰の弱い直ぐに千切れるうどんにワカメとチクワが入っている。普段は腰の強い喉越しの良い讃岐うどんを食べなれている俺たちからすれば、新鮮な感じでそれでいて懐かしい味のする、とても美味しいうどんだ。鳴門公園に来ると必ず食べる。

 あっという間に一杯のうどんを汁までたらい上げる。少し物足りないが、我慢する。

 鳴門公園自体は何度も来ているので、今更見るべき物もない。俺たちは自転車でここまで来た証に記念写真を何枚かスマホで撮り、早々に帰る事にした。


 帰り道は真っ赤な子鳴門橋を渡り11号線に出ると、その後は来た道を引き返すだけだ。

 子鳴門橋を渡っているときにラッパとボートのエンジン音が遥か下から聞こえてきた。橋の下を覗き見るとボートレースをしているのが見えた。鳴門競艇場だ。

 近くで見ると迫力があるのだろうが、橋の上からでは小さく見えるだけで何の感動もない。それよりも前世で散財した記憶が蘇り腹がっ立ってきた

「みんな沈んでしまえ」

 俺は呪いの言葉を吐きながら自転車を漕いでいく。

「「「わー」」」下から人の歓声が聞こえてきた。自転車を止め再び下を見ると1艇のボートが転覆していた。まさか本当に?

 競艇場の横を小型のタンカーが通過していた。おそらくタンカーから発生した波が、競艇に影響したのだろう。また転覆した選手も大きな怪我は無いようだ。

 俺が驚いているとミツルが近寄ってきた。

「人を呪わば穴二つ。ひっひっひ」

 俺はぞっとした。ミツルは俺の独り言を聞いていたらしい。

 気を取り直してペダルを漕ぎだす。

「わー」

 今度は何だと後ろを振り向くと、ミツルが小さな穴にタイヤを取られてこけていた。

 穴に落ちたのは俺ではなくミツルだった。

「これぞ忍法身代わりの術」

 俺は小さく呟き、ミツルを起こしてあげた。

 50m先で光が自転車を止めてこちらを見ている。

 心配ないよと合図するため、大きく両手で丸を作って見せた。

「何でおれが・・・」

 隣ではミツルがぶつぶつ言っている。怪我はないようだ。


 子鳴門橋では少しハプニングがあったが、他は異状なく帰りの道を進んで行く。

俺たちは無事、最初に休憩したラーメンショップまで戻ってきた。行きの時閉まっていたラーメンショップは、今は開店しており、駐車場には数台の車が止まっている。俺たちもその駐車場に自転車を止めて休憩することにした。

「腹が減ったからラーメン食べようよ」

 ミツルの提案に二人は躊躇なく同意する。少し早めに食べた昼食はうどんだったため、既に消化されたようだ。小遣いは残り少ないが、明日は月末、小遣い日目前だ。全て使い切っても問題ない。

 引き戸になっている入り口から入ると、店内は割と込み合っていた。

「いらっしゃい」

 厨房の中から店長の声が掛けられる。店の隅に4人掛けテーブルが開いていたのでそこに腰かける。

 改めて店内を見渡すと、客は、作業服を着た男性ばかりだ。運送業の運転手、工事現場の作業員たちだ。子供や女性は一人もいない。いやよく見ると交通整理の制服を着た人は女性だ。

「この店、冒険者ギルドの食堂みたいだな」

 ミツルがテーブルに頭を突き出して小声で話す。

「「うんうん」」

 俺と光は頷く。全くの同意見だ。

 昼間からC級D級の冒険者たちが酒を酌み交わす。実際は誰も酒など飲んでいないが、ガラの悪そうな客筋とがやがやとした雰囲気が、アニメで見たギルド内の食堂を思わせる。

 そうなると、この中で俺たちの立場は、登録したばかりのF級の冒険者となる。この後の展開は、簡単に想像できる。

 ガラの悪いC級冒険者から絡まれるパターンだ。「おい、ぼーずどもお前たちのようなガキどもがチョロチョロするんじゃね」とか何とか。

 中二病特有の妄想を3人で共有していたころ、俺たちのテーブル横に女性が立つ。

「ご注文はお決まりですか」

 高校生くらいの女の子だ。多分夏休み中のバイトかな。

「ラーメン」

 ミツルが答える。

「俺も」「僕も」

 俺と光が続いて答える。

「ラーメン3つですね」

「はい」

 俺が代表して答える。

「店長ラーメン3つ」

 彼女は大きな声で店長に伝えると席を離れて行った。

「今のお姉さんに猫耳つけたら凄く似合っているよな」

 またミツルが頭を突き出して小声で話す。

「「うんうん」」

 俺と光は頷く。猫耳以外には尻尾も着けてほしい。

 わい談ともとれる中二病談に花を咲かせていると、さっきの女の子がラーメンを運んできた。

 ラーメンがテーブルに置かれるとき彼女の顔を見上げると目が合ってしまった。

 かーと顔が熱くなり、俯いてしまう。

「ご注文は、以上ですか」

「はい」

「ではごゆっくり」

「・・・」

 二人を見ると俺と同じように俯いていた。光は耳まで赤くなっていた。

 彼女が離れていくのを上目遣いに確認してからラーメンを啜りだした。


 3人は無言でラーメンの汁まで飲み干し、店外に出た。

「美味かったな」

 ミツルは言うが、俺はラーメンの味を覚えていない。

「そうだな。また来たいな」

「そうだね」


 ラーメンショップを後にしてからは、3台の自転車は帰り道を何事もなく走り抜けた。引田トンネルを抜け、大川橋を渡り、マルナカの前を通り過ぎ、俺の家に到着した。

 自転車から降り、俺は二人に向かい合う。

「やったな」俺が言う。

「やった」ミツルが言う。

「やった」光が言う。

 帰りの道では少し恥ずかしい事もあったが、当初の目的は十分に果たした。少し思い出しても興奮が蘇ってくる。3人とも同じ気持ちだろう。言葉にするのがもったいない気がする。

「じゃまたな」

「「ああ、じゃあまた」」

 二人が帰って行くのを俺は玄関前で見送った。


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