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ちゃろ  作者: 茶色の子犬
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0年目

 昔猫を飼っていた。 今度は犬にしよう。

 そんな軽い気持ちでペットショップを訪れる母子の姿があった。 屋内でも買える小さな犬がいい、とは母の希望だ。 ダックスフンドにしようか。 ふわふわの毛の子犬でもいい。 話題は弾む。 取り敢えず犬が見たいとついてきた娘とは違い、母親には買いたいと思う犬種の目星をいくらかつけてきていたようだった。 ペットショップに入ったとき、娘は顔を顰めた。 動物のにおいをこんなにきつく嗅いだはじめてだ。 猫を飼っていたという当時はまだ赤ん坊だったこともあり、殆ど記憶に残っていなかった。

 母親が、店員に話しかけるのを気もそぞろに聞き流しながら、娘は目の前の小さな籠に入れられた子犬に目を留めた。 カウンターのその向こう、ショップで販売している子犬とは別に、カットかシャンプーか、何かしらの目的で預けられたらしい白い子犬だった。 大きな目とピンと立った耳が印象的で、娘は大きな声で指を指した。

「おかあさん、あれかわいい!」

「どれ? あの白いの? へえ、かわいいじゃない」

「あの犬がいい!」

「え、あの犬?」

 主張する娘に母は苦笑した。

「あの犬は、もう誰かのおうちで飼われている犬よ」

 そこで助け舟が横から入った。二人のやり取りを聞いていた店員だ。

「その犬種でしたら、先日生まれたばかりの子犬がいますよ」

 子犬は、生後50日は親元で過ごす。 母乳を得るためだ。 そこから店に出されたり、知人に貰われたりとそれぞれの住処へ引き取られていく。 店員が二人に話したのは、店に出る間際の子犬の話だった。 当然その場にはいないが、それでもと娘はその話に飛びついた。

「おかあさん、いるって!」

 娘のねだる声に、母は「まあ、かわいいからねぇ」と苦笑ながらも頷いた。「色は何色が?」「茶色、黒、白……」どうやら幾種もあるらしい。母は「またきます」と店員につげ、その日は家に帰ることに決めた。

 結局、犬は茶色に決まった。

 一緒には出向かなかった息子が、「茶色がいい」と言ったからだ。

 じゃあ、名前は何がいいだろう。

 チョコ。

 ココア。

 そんな甘ったるいのはイヤだよ。

 じゃあ、案を出して。

 チャロ。

 茶色の犬なら、チャロがいい。覚えやすいじゃないか。


 そうして子犬の名前は、チャロとなった。

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