クエスト受注
クエストを受けにいきます。
内容は『薬草採取』というもので百束を納品するというものです。報酬は五百ルーです。
草原フィールドの少し先に森があります。そこが目的地です。
私は森を見据えてカルアさんに声をかけます。
「カルアさん、準備は良いですか?」
緊張はしていないですが若干剣の柄に意識して触れます。
「はい」
私はカルアさんと一緒に森へと足を踏み入れます。
入って十分くらいそろそろモンスターが出るエリアに着くでしょう。私たちの数十メートル先に木々に紛れてこちらに気づかない大型犬の風体をしたモンスターが数体現れました。
カルアさんが剣の柄を握り静かに抜き構えます。
私もそれに倣い剣を抜きます。
「モンスターです」
モンスターは大型犬の風体ですが灰色の毛並みに赤く輝く瞳。強いて言えば図鑑で見た狼に近いです。
「あれは【リトルウルフ】ですね」
リトルウルフ、素早い動きと群れで襲うため初見プレイヤーから嫌われたモンスター。
「リトルウルフ?」
「リトルウルフは大型犬ほどの大きさの狼です。牙に【麻痺毒】が施されておりーーーだから大量の解毒薬のエリクサーを買ったじゃありませんか」
一匹、二匹、三匹、四匹が距離を測りながら詰め寄って来ます。
私は「テンポラリリース」を発動。
通常よりも高速で行動できる技。これにより敵の攻撃をかわしやすくなり迅速な反撃が可能。
「っ••••••!」
「ミゾレさんっ!」
一瞬で四体にダメージ、そして四体は体勢を整えるとこちらに牙を向けて襲って来ます。
〈チェイン〉
(確かイメージでスキルを繋げてーー)
「スローモーションコンボ」に繋げ、四体のリトルウルフがスローモーションに切り替わり「タイムレバー」へと繋げる。
「タイムレバー」は過去の自分と連携し連続技やコンボをより強力にする技。
「テンポラルブレード」
一時的に時間を操作し通常攻撃が高速で2倍の速さになる。またこの間に受けるダメージが半減する。
「カルアさん! 私に構わず爆撃を!」
「っ、はい!」
カルアさんが剣を振り払うとその余波で小さな黒いエネルギー球が光を放ちながら敵に飛び命中時に爆発して闇の波動が広がります。
ーー一定時間リトルウルフにデバフが掛かりました。
リトルウルフのスピードが沼にハマったかのような鈍い動き。
「ダークエクスプロージョン」
支援に回ったカルアさんの攻撃を通常の倍の速さの歩行で避けリトルウルフにダメージを与えていきます。
「しんどっっかったです••••••」
「でもかなりレベル上がりましたよ」
「一番動いていた人が体力あるなんて」
「薬草採取を。夜になると高レベルモンスターが寄ってきます」
そうして二人は薬草を採取しエリアボスモンスター【ファング・ウルフ】と遭遇してしまいました。
【ファング・ウルフ】
出現条件
夕刻以上の時間に出現
私たちは走ってます。
薬草採取を終え「さあ帰ろうか」となった矢先、樹々を薙ぎ倒すショベルカー如くのモンスターから。
「街に! 入れば! 大丈夫! です!」
私はカルアさんをふわりとお姫様抱っこをすると困惑を他所に「テンポラリリース」で前脚の押しつぶす、薙ぎ払う攻撃を躱しながら駆け抜けて行きます。
正直、脚が悲鳴を上げています。
(予知で回避は出来ます)
(大丈夫、吹っ飛ぶイメージで脚に力を込めて)
ドンガラガッシャーン
二人は抱きしめ合いながら身体を宙に投げ出され回り続け街灯の柱に私はわざとぶつかり私は「カハッ」と空気の塊を吐きます。
(計算通り、カルアさんに怪我は)
土煙を上げ【始まりの街】の周囲は何事かと驚き、視線を向けてきます。
カルアさんがガバッと顔を上げ、
「【ファング・ウルフ】は!?」
「どうやら入って来れないみたいですね」
【ファング・ウルフ】は数メートル先でこちらを睨み尻尾を振って今来た場所に引き返します。
押し倒される形となったカルアさんの上から立ち上がって手を差し伸べます。
「ありがとう」
「いえ、それに油断しました。私の責任です」
「まさかファング・ウルフが襲って来るなんて。リトルウルフを狩り過ぎたからでしょうか?」
「とりあえず宿行きません?」
コクリと頷くカルアさんに周囲の視線が痛い事に気付きます。
「おい、アレってやっぱりファング・ウルフだろ?」
「やべえじゃん、リトルウルフでもやべえのに」
「あの娘ら何者?」
NPCの会話でしょうね。プレイヤーならこんな会話しません。
「やはりファング・ウルフでも【始まりの街】突破出来ない構造になってるんだな」
「【初心者の街】だからなそれだけ手厚い分、他の街は度々【スタンピード】のフラグはあるな」
「やはり遠距離攻撃スキルある奴が居たら便利だな」
プレイヤーは冷静ですね。