ジョブは未来視ができる
アルビノーーー聞いた事ある人なら分かるでしょうね。
2XXX年では遺伝子整形が流行り容姿の多様化が流行。今現在進行形で、ですがね。
20XX年代初頭、遺伝子編集技術の飛躍的な進歩が始まりました。
当初は遺伝子編集技術は難病治療や先天性疾患の予防に用いられていました。
これにより多くの人々が健康で長寿を享受できるようになったのです。
しかしこの技術が次第に美容目的にも応用されるようになり社会的な変革が始まりました。
ゲームでしか出来なかったキャラメイクは今は現実でピンクの髪が地毛って言う人が当たり前になっています。凄い事のように見えますが昔は色々と問題になったらしいですね。
まず最初の大きなステップは富裕層やセレブたちが遺伝子整形を利用し始めたことでした。
彼らは見た目の若さや美しさを保つためあるいは子供に望ましい外見的特徴を与えるためにこの技術を積極的に活用しました。
これに対して倫理的な問題が提起されました。
自然の遺伝を操作することに対する批判や遺伝子整形がもたらす不平等についての懸念が社会全体で広まりました。
それでも技術の進化とともに遺伝子整形の安全性と手軽さが向上し次第に中産階級にも手の届くものとなりました。
20XX年代後半には遺伝子編集のコストが劇的に下がり一般市民も美容目的での遺伝子整形を利用するようになりました。この頃になると社会全体で容姿の多様化が進みさまざまな髪色や瞳の色が見られるようになりました。
そして私の容姿は白髪に浅黒い肌、メタリックブルーの瞳、白いまつ毛という常人離れした感覚の容姿センスですがとある美人コンテストで特別枠は貰えるほど人目を惹く容姿をしているのは分かります。
また遺伝子整形が普及するにつれて新たな社会的現象も生まれました。
例えば特定の外見的特徴を持つ人々が「ファッションアイコン」として祭り上げられたり逆に「過剰な整形」が問題視されることもありました。
学校や職場での差別やいじめが新たな形で現れる一方で個性を尊重する風潮も強まりました。
このような背景の中で遺伝子整形は一種の「自己表現」の手段として認識されるようになりました。人々は自分の外見を自由にデザインし個性を際立たせることが普通となり社会全体で容姿の多様性が受け入れられるようになったのです。
そんな事はどうでも良いのかもしれません。
さらに遺伝子整形の技術進化に伴い政府や企業も規制やガイドラインを整備しました。
安全性の確保や倫理的な問題の対処そして遺伝子整形を行うための資格や認定が厳しく管理されるようになったことで信頼性の高いサービスが提供されるようになりました。
このようにして遺伝子整形は社会の一部として根付いていったのです。
今、玄人向けの初心者ホイホイVRMMORPG〈剣戦の序曲〉。
しかし遺伝子整形が一般化した今でも、VRMMORPG〈剣戦の序曲〉におけるキャラメイクの意義は重要です。
まず現実世界での遺伝子整形によって外見を自由に変更できるようになったとしてもゲーム内では異なる目的があります。
一つは匿名性の保護です。
現実世界で有名な人物や特定の外見を持つ人々がそのままゲーム内で活動することはプライバシーの観点から問題が生じる可能性があります。
ゲーム内のキャラメイクによって自分の本当の姿を隠し完全に新しいアイデンティティで活動することができます。
キャラメイクは出来ますが全員遺伝子整形があるのにキャラメイクの必要があるのは自分の存在を晒されたく無い奴ともはやそれが常識となりつつあります。
さらにゲーム内でのキャラメイクは現実とは異なる外見や特性を試す機会を提供します。
例えば現実では青い肌や獣のような耳などの極端な変化は倫理的・社会的に制限されることがありますがゲーム内ではこれが自由に行えます。
プレイヤーは現実では不可能な姿を体験し新しい自分を発見することができます。
またゲーム内のキャラメイクはプレイヤー同士の区別を明確にするためにも重要です。
遺伝子整形が普及した現代社会では、多くの人々が似たような美的基準を持つため外見が似通うことが多くなります。
ゲーム内のキャラメイクによりプレイヤーは個性的でユニークなキャラクターを作成し他のプレイヤーとの区別をつけやすくなります。
リアルスキルがあれば上位プレイヤーになれる事とプレイしていけば現実に作用される事から「玄人プレイヤー向け初心者ホイホイ」とあだ名がつけられています。
キャラメイクは出来ますが全員遺伝子整形があるのにキャラメイクの必要があるのは自分の存在を晒されたく無い奴、ともはやそれが常識となりつつあります。
さて、思考はここまでで良いでしょう。
私はAIに「容姿はこのままで」と言いました。
『分かりました。このゲームのジョブは本人の身体をスキャンして適正あるジョブから始まります。ジョブはあとからいつでも変えられます』
〈剣戦の序曲〉は先進的なAIシステムと高度なバイオフィードバック技術を駆使してプレイヤーの身体能力やスキルに基づいてジョブ適正を判断します。
ゲームにログインする際プレイヤーの身体を詳細にスキャンし、筋力、反射神経、持久力、戦略的思考能力などさまざまな要素を解析します。
この解析結果に基づき最初に適正なジョブが自動的に割り当てられます。
例えば反射神経が優れているプレイヤーは「暗殺剣士」といった近接戦闘に適したジョブが割り当てられ戦略的思考が得意なプレイヤーは「魔剣士」といったジョブが選ばれることがあります。
ただしジョブはプレイ中にいつでも変更可能でスキルの習得やプレイヤーの成長に応じて柔軟に選択することができます。
「承諾します」
『では最後です。このゲームが現実に与える影響にこのゲームと開発者は一切関与しません。よろしいですか?』
「承諾します」
『では〈剣戦の序曲〉をお楽しみ下さい』
今まで暗い海を漂っていた意識が覚醒していきます。
カッと目をかっ開きます。
そこはスタート地点の〈噴水広場〉でした。
「いつの間に••••••」
プレイヤーは皆、腰から剣や刀をぶら下げています。
装備の細部までリアルに描写されており金属の輝きや布の質感が触れられそうなほどに見えます。
私の腰にも剣が下げられていました。
感覚的には実際に重さを感じるようです。
これは最新のハプティック技術の賜物でしょう。
何故だか視線を感じます。いやいつもの事すぎますが現実ではなくゲームなので違和感を若干ながら感じます。
私を見つけたプレイヤーたちが立ち止まり集まって来ます。
「あ、おい見ろ〈白銀〉様だ」
「白銀霙だマジか本物か?」
私の周りに人が集まってきます。マズイですね。
白銀しろがね 霙みぞれ。十六歳。それが色物ファッションモデルの本名だったりします。
私はそれを真っ向から人並みを分けて出ていきます。
気分はモーゼの十戒です。
遺伝子整形でファッションモデルは多く増えました。
アニメキャラみたいな容姿は人気になりやすくその中で【異質】だったり【神秘的】は取り立て人気になりやすいです。
実際、プレイヤーたちの髪色は彩りでカラフルです。
誰かが言いました。
「悪魔••••••」
生憎中身までそうとは限りません。
昔から私の容姿は〈異質〉で〈常人離れ〉していました。
誘拐こそされませんでしたが美人コンテストがきっかけで私をパパラッチする人が増えて高校を芸能科に変えざるおえなくなりました。
そしてこのゲームは『宣伝』のために私は始めました。
なんでも今が波だとかそうで。
さて、私のジョブはなんだろうかと草原フィールドにまで来ました。
草原フィールドに出ると広大な景色が広がっていました。
風が吹き抜け草の匂いや空の青さがまるで現実のようです。
私の心は期待と緊張で高鳴っています。周囲には他のプレイヤーたちもいて各々が戦闘や探索を行っています。
彼らの動きや声がリアルタイムで伝わってきます。
とりあえず大抵のジョブは剣を抜けば分かるといわれています。
私はジグザグに突進してくる【ソーンラビットLv1】に剣を抜き構えます。
剣を握る感覚、冷たい金属の感触がリアルに伝わってきます。
ぐわん
視界がブレたかと思うと腹に【ソーンラビット】の頭突きを喰らいます。空気の塊を吐き出します。
痛みの感覚がリアルに再現されており一瞬息が詰まります。
「っ!」
短く息を吐く。
【ソーンラビット】が向こうから頭突きをしようと突進してきます。
彼らの動きはリアルで草が押し分けられる音や土煙が立ち上がる様子が見えます。
腹に二度目のダメージ。
私は剣を振り翳し頭突きの反動で後方に飛び退ろうとする【ソーンラビット】の背中から腹を突き破り剣を突き立てます。
手応えがリアルに伝わり敵が泡となって弾ける瞬間、達成感が全身を包みます。
【ソーンラビットLv1】が泡となって弾けます。
ダメージは何故か二回食らったはずなのに一回分しか反映されませんでした。
不具合でしょうか?
「それとも私の計算ミスでしょうか? いやありえないですよねそれなら」
とりあえず他のモンスターにも試しましょう。
と、次のモンスターに剣を構えます。
VR空間の空は夕暮れ。
私は息を切らしながら顎に伝う汗を手の甲で拭います。
「とりあえず分かった事は私に未来視の予知能力が剣を抜くと自動的に発動する事。そして予知で受けたダメージはゲームには反映されない事」
「そしてその未来は変える事ができる」
未来視の予知能力についてはゲーム内の特殊なスキルとして設定されています。
このスキルは特定の条件下でのみ発動します。
プレイヤーが戦闘中に集中力を高め特定のコマンドを入力すると未来視が発動し数秒先の未来を予知することができます。
これによりプレイヤーは敵の攻撃を事前に察知し回避するための行動を取ることができます。
これが分かっただけでも収穫です。
私はVR空間の草原フィールドを後にしました。