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「梅下さん梅下さん」


「ん、どした、ボン


「あのねえ、お願いがあるんだけど」


「あー、一応言ってみろ」


「カップラーメン食べたいんだ。皆に内緒で」


「なんでだよ。母親の飯で我慢しとけよ」


「母さんのご飯はそりゃあうまいけどさ、それとこれとは別じゃん。……昨日の夜さ、友達と通話しててさ、学校帰りにコンビニで買い食いした話になってさあ」


「はん。食いたくなったわけだ」


「うん」


「で、買ってこいってか?」


「お願いできる?」


「俺ぁ、警備であって使いっ走りじゃねえんだぞ。……まあ次の休憩の時に買い出しついでに買ってきてもいいが。どこで食うんだ? ……離れで俺と一緒に食うのか」


「そうなるね」


 いやあ、梅下さんは優しいなあ。


「はあ。で、なんのカップラーメンだ?」


「新発売の担々麺のやつで」







 なんつーか。普通のガキだよな。ボンは。話聞いた時は可哀そうな子供だと思ったもんだが、そんなそぶりはあまり見せない。聞いた話だけでも性格歪みそうなもんだが。


 可哀そうな子供は紛争地帯で吐くほど見たが、ボンの可哀そうさはベクトルが違う。恵まれすぎて可哀そうなことになるってのもなんつーか。


 えーと。頼まれたのはこれだな。あとは松田の煙草と、大竹さんの飴だな。あとは……俺もカップラーメン食いたくなってきたな。一人で食うのは侘しいだろ。食うか。何にするかな……。







 ズルズルー。


「うーんこれこれ」


ボンってなんでもうまそうに食うよな」


「……俺にとっちゃ食事は人生の楽しみの半分だよ」


「食う寝るヤるで三分の一だと思うが」


「やる相手出来ると思う?」


「よりどりみどりだと思うが」


「あー、違った。俺がやりたいと思う相手は出来ないと思う」


「やりたい相手って? 外見じゃなくて中身を見てくれる相手とか言うなよ」


「」


「図星かよ。無茶言うな」


「無茶かなあ」


「無茶だろ」


 むう。ズルズルー。カーチャンの飯とは違った良さがあるよな。こういうジャンクなフード。


「ふう」


「満足したか」


「うん。……またお願いしてもいい?」


「ああ? んん、まあタイミングが合えばな」


「それでいいよ。ありがとね梅下さん」


「せいぜいばれないようにな。俺ぁ聞かれたら答えなきゃいけねえからな」


「お仕事だもんね。分かってるよ」


「ならいい。そろそろ休憩も終わりだ。戻んな」


「うん。それじゃね」







 はあ、甘いな俺も。だがまあ、可哀そうなガキの慰めになるんだったら、まあ、いいか。







「兄さん? もしかして」


「黙秘します」

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