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と、いうわけで健康診断である。
外に出たくないが健康診断をおろそかにするわけにはいかぬ。
帽子を被ってサングラス、マスクを着用して顔を隠しゆったりとした服装で体形を隠す。ストーカー達に即バレするファッションの完成だ。……隠さないよりましだと思いたい。
家の前に止まっている頑丈そうな車に乗り込む。運転手をしてくれる警備の梅下さん曰く戦車砲の直撃は無理だが拳銃弾ぐらいなら弾くそうだ。一体何を想定しているんですかね……。
助手席には大竹さん、後部座席に俺と松田さん。
なんか警備の人達、気合い入っているというかピリピリしているというか。
「あのー、松田さん」
「はい、銀一坊っちゃん。どうされました」
「なんでそんな、こう、気合い? 入ってるんですか?」
「ああ……、なんて言うか、ある意味初仕事なんですよ。もちろん家での警護も真面目にやってましたが、危険がある外に出るとなるとね」
「……ありますか。危険」
「いやいや、そんな深刻そうな顔しないで下さい。その為の我々です。それに、彼女達もいますからね」
「あいつらですか……」
「おっと、ますます深刻そうな顔になってしまった。こいつぁ申し訳ない」
「いえ……頼りにしてますよ。お願いします」
「はい」
そんなことを話していたら病院に到着した。
ここはじいちゃんの主治医……の知り合いの中で俺に普通に接してくれる医者と看護師がいる病院だ。俺の主治医だな。この二人ぐらいなんだよね。俺の腕に注射針刺せるの。
VIP専用個室、みたいなところに通されて部屋の中には医者と看護師と大竹さん。部屋のドアの前に松田さんと梅下さん。という布陣で始まった健康診断はまあ、何事も無く、恙なく終わった。……一度外が騒がしくなったが、気にしないこととする。
「相変わらず健康体だねえ」
医者の才田先生がそんなことを言う。
「お陰様で病気知らずです」
もしかしたら病気は美しくないって神様が判断した可能性はあるが。
「ちゃんと運動もしてるみたいだし食事にも気を使ってるようで感心感心。……ひきこもりになったと聞いた時は大丈夫かと思ったよ」
「いやあ、ひきこもりたくはなかったんですがね……」
「うん……それに関してはまあ、何も言えないけど。まあ、これからも健康に気を付けてね。詳細は後日郵送するから」
「はい。今日はありがとうございました」
一礼して振り向く。大竹さんが耳の通信機に手を当ててる。
「大竹さん?」
「……はい、大丈夫です、銀一坊っちゃん。安全は確保されています。行きましょう」
ほんまか?
……本当に何事も無く家に帰ってこれた。
家のリビングのソファに身を沈めて大きく息を吐く。
「あーーー」
「だらしないわねえ。ごはん出来てるから食べなさいな」
「はーい」
おっ、ピーマンの肉詰めじゃん。やったぜ。
「いただきます」
うまーい。やっぱカーチャンの飯は銀河一やな!




