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「……うーん、やっぱり、どう考えてもタイミングが良すぎる」


 夕飯の食卓で焼き魚と格闘している時に弟がうなり声と共に呟いた。


「『ヤドリギ』アニメリメイクの発表か?」


「そう。どう考えても兄さんが好きな作品だって言ったから発表したとしか思えないんだ」


「まあ、確かにな。……んー、やっぱ言わない方が良かったかなあ」


「そうかもしれないけど……兄さんが気にすることじゃないよ。そもそも兄さんがなんか言う度に大騒ぎする周りがおかしいんであって」


「それでも、俺は自分の顔と声の事を考えて喋るべきなんだよ」


「兄さんの顔と声は兄さんのせいじゃないでしょ」


 俺がそう願ったせいなんだよなあ。言えるわけないけど。


「むう」


 やっと焼き魚から身を剥がすことに成功する。ぱくり。うまーい。


「大体、そんなこと言ってたらなんにも言えなくなっちゃうよ」


「でもな、今回はすでにリメイクが進行してたから便乗して発表したんだろうけど、例えば、俺が『青と緑の間の紫』がアニメ化しないかなあとか言ったら、いや、好きな作品だって言っただけでアニメ化しちまうかもしれん」


「ありうるから困るね」


「で、俺が好きな作品だからってストーカー達が観るわけだ。それが好みだったら良いけど好みじゃなかったらそれは不幸だよ」


「あいつらは勝手に不幸になればいいし、それに兄さんが責任を感じなくていいと思うけど」


「気にするよ……ストーカー達だけじゃなく普通の視聴者も興味持って観るかもしれないんだし」


 ほうれん草のおひたしをぱくり。うまーい。


「普通の視聴者……?」


「いるだろ。……いるよな?」


「どうだろ……」


 ……うん、あまり考えないでおこう。


 じゃがいもとたまねぎの味噌汁を飲み干して残ったご飯をかきこむ。うまーい。


「ごちそうさまー」


 やっぱカーチャンの飯は宇宙一やな!


 食器を流しへ。


「はい、お粗末様」


 弟はまだ難しい顔をして考え込んでる。メシ冷めるぞ。


 風呂入ろ。







「ただいま」


「おかえり、父さん」


「どうした、難しい顔して」


「周りの皆、兄さんに甘えすぎだな、と思ってね」


「……そうだな」


「まあ、そういう僕も兄さんの優しさに甘えてるんだけど」


「それを言うなら父さんもだ」


 銀一は優しい。私なら引きこもって絶対に顔を出さない。あれだけのひどい目にあってもなお銀一は優しさを失ってない。我が息子ながら……。


「Ytuberなんてさせなければ良かったかなあ」


「……銀一は風呂か」


「うん」


「銀一は知らないんだろう? 自殺未遂が出たことを」


「……うん」


 銀一が引きこもってしまった時、自殺未遂者が出た。だから私と晃は思案してYtuberを提案した。銀一は私のスネを齧りたくないからと前向きだった。……私のスネなど無くなるまで齧ってくれて良かったのに。まあ、今では私より稼いでいるが。


「晃、あまり思い詰めるな。と言っても無理かもしれんが……」


「うん、いや、大丈夫」


 まったく。私の息子は二人ともよく出来た息子だ。私もなるべくサポートしてやらねば。Ytubeの事はよくわからんが。とりあえず今は鬱陶しい芸能界の連中を黙らせなければならんな。あいつらも大概しつこい。


「ま、まずはちゃんと食ってちゃんと寝ることだ。母さんが心配してるぞ」


「あー。そうだね。ごめん母さん、食べちゃうよ」


 うむ。さ、私も食うか。明日も頑張らなければ。







「入るよ……何やってんの兄さん」


「おう、新しいネタとして踊ってみたはどうかと思って」


「うん。やめとこうね」


「えっ」

ちょっとリムベルド行ってくるので次話、遅れます。申し訳ねえ。

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