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23時、ペットボトルの十六茶を飲みつつ、じっと日曜の夜を浪費する高校生である。明日は学校、放課後に控えた30分の進路相談を思うとそれだけで登校するのが億劫だった。
目を覚ますと屋根を打つ小気味良い雨音が頭に響く。雨は好きだが、低気圧のせいか後頭部がズキズキと痛む。5分くらいかけてやっとの思いでベッドから起き上がり、顔を洗ったら制服に着替えて階段をおりる。ニュースを見ていたらしい母は、私に気づくと、少し眠たげにおはようと言った。私もおはようを返すと足早にキッチンへ向かい、自分の弁当の準備を始める。1年生の頃はよく母に作ってもらったものだが、2年生になるとそれはもう母の仕事では無くなっていた。弁当を作るようになって早2ヶ月、いつまでたっても卵焼きの造形には頭を悩ませていた。昨日の夕飯の残り物とたわらおにぎり、不格好な卵焼き、ブロッコリーとトマトを手早く弁当箱に詰めていく。最初に比べれば慣れたものだ。元々全く料理をしないわけではない。共働きの両親なので、夕飯が遅くなることも稀ではなく、自分の分を作って食べるくらいのことはしていた。お気に入りのランチョンマットで雑に弁当箱を包むと、カバンに突っ込み、急いで靴を履く。
「今日、9時くらいだと思う」
帰宅時間を伝えに玄関まで来た母が、ついでに手を振って見送ってくれた。