孤立
この世には、得意不得意が存在し、違いが生まれている。
僕には、得意な事が何も無い。
身体は至って健康なのだ、しかし記憶力、想像力等、全ての力が無い。
勉強の成績は何時もドベ、身体能力も無さ過ぎる。
コミュニケーション能力も無い為、友達も出来ない。
これだけ周りから孤立すると、自分を嘲笑う人も現れるのではと覚悟した。
しかし誰一人として自分を嘲笑う人は現れなかった。
そう、自分は存在感すら無いのである。
これ程までに力が無いのもある意味才能では無いのであろうか。
しかし自分は思う、恐らく自分は生きて行ける。
何しろ自分は健康なのだ。
周りと違う所は沢山あるが、必死に足掻けば良いのでは無いか。
心が苦しくなったら毎回こうして自分に言い聞かせよう。
「ちょっと何一人で喋ってるの? うるさい」
「え?」
「何か長々と……」
何故だ、自分は心の中だけでずっと喋っていたのに。
「え……どうやって喋ってるの? 口を動かさずに……腹話術?」
まさか、自分の心の声が聞こえている?
自分は今、心の中で喋っている、周りに聞こえるはずが無い。
「聞こえてるよ! ちょっとやめてよ腹話術でそう言う事するのは……」
違うんだ、腹話術なんかじゃ……って……あれ? これでは無いか! たった今、自分に心の声を周りに聞かせる事が出来る力が生まれた! 理由は不明だが、周りよりも抜きんでた力を手に入れた!
「本当に心の声で喋ってるの?」
「うん」
本当だよ!