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来賓として現れるエリック殿下


「警備ですか?」


 リル王国の女王とエリック殿下が我が国に新婚旅行にくるだそうだ。なんでも結婚当時は忙しくようやく時間に都合がついたのだとか?


「あぁ、今回君には警備の責任者として腕をふるって欲しい」



 私が責任者として騎士団を動かせということか……入国から帰国までの間、十日間も家に帰れないじゃないか! 


 十日の間に王族主催のパーティーがあるが、その他で公爵家でもパーティーを開けと……高位貴族の家でパーティーを開き、女王とエリック殿下を持ち上げろ。か。



「息子が生まれたばかりなのに……」


「もう半年経っているし夫人も分かってくれるだろう」



 分かってくれるだろうが辛い。警護の仕事だからパーティーにはリュシエンヌを欠席させよう。リュシエンヌは漸く屋敷に引っ越してきた。伯爵はまだ居てもいいと言っていたが、そろそろこちらとしても我慢の限界だしそこは夫人が味方になってくれた。


「会いたかったらいつでも屋敷にいらしてください。歓迎しますよ」


 と言うと寂しそうにしていたが、パティは良く泊まりに来るようになったし、ハリスも学園の帰りに寄っていくそうだ。リュシエンヌも喜んで迎えている。

 屋敷が賑やかで良いですわ! とハンナも言っている。リュシエンヌは友人を呼んでお茶会をするようになったし、客が来る事により使用人のやる気にも繋がっているようだ。女主人がいるといないのでは屋敷の雰囲気が違う。


 因みに私はジィ様の爵位を継ぐ事になり侯爵となった。小さい田舎の領地だがジィ様のおかげでのんびりできる場所へと変わった(たまに魔物が出るがなんとかなる)徐々に引き継ぎをしていく予定だ。


 


「ただいま」

「レイ様おかえりなさいませ」


 ハグをしてキスをする。今日もリュシエンヌは可愛い。



「ニコラはどうしている?」


 リュシエンヌは極力ニコラと居るようにしているし、ニコラを抱いて出迎えをする事が多い。


「寝ていますわ。ハリスとパティが来ていたからご機嫌でたくさん遊んだので疲れたのかもしれませんね」


「ハリスとパティはニコラの世話をしてくれるから助かるな」


「はい。わたくしも安心して横で見ていられますわ」


 リュシエンヌが休まるのならそれで良い。今度二人に何か礼でもするか。パティには小物、ハリスは写真集に興味を示していたよな? そんなことを考えていた。


「そうだわ。レイ様! わたくしドレスを新調しないといけませんわ」


 ん? ドレス?



「それは良いが、珍しいなリュシエンヌから言ってくるなんて」


「リル王国の女王陛下とエリック殿下が新婚旅行に来るのでしょう?」


 知っていたか……


「パーティーに出席しないといけませんわよね?」


「その件だが、まだ身体が本調子ではないだろう? 産休というのがあると聞くし無理はして欲しくない」


 エリック殿下に会わせたくない。とは言えない。


「それに今日言われたのだが、私は今回警備責任者になった。二人の護衛もしなくてはいけないからパーティーを楽しむ余裕がないんだ。リュシエンヌを一人にさせる訳にはいかない」


「それなら問題ありませんわよ? レイ様は仕事になるだろうと思っていましたからパートナーは気になさらずに、」


 にこりとリュシエンヌが笑う。


 は? パートナーは気になさらずにとはどういう事だ夫がいながら誰と行く気だ! 



「パーティーは行かなくていい。リュシエンヌの姿が見えないとニコラが不安になる」


 このままこの話をしたらリュシエンヌを責めそうだ……キツく当たってしまった。しかもニコラを盾にした。最低だ。



「お義母様からもお誘いがありましたから行きますわ。ドレスもお義母様におねだりします! レイ様のばか!」


 ふん。と顔を背けられた。


「……誰と、行く気だ? 私以外のパートナーって、」


 気がつくとリュシエンヌを抱きしめていた。


「もう! お話の途中でしたのにレイ様が悪いですわよ!」


「すまない。……本当は一緒に参加したいのだが、職務があって」


 ギュッとリュシエンヌを抱きしめた。


「最後までお話を聞かないレイ様が悪いです」


「そうだな。ごめん。誰と行くんだ?」


 誰の名前が出てくるんだ? 知らない男なら決闘か? 負ける気はしない。


「ハリスですわ」


 ……ん?


「ハリスはパティと行かないのか?」


「もうお年頃ですからね。パティは学園の人に誘われたらしくて、ハリスが困っていたから私に頼んできたのです。レイ様は警護側だろうからって」


「なるほど。ハリスはよく知っているな。ハリスと行くのは良いが頼むから一人にならないと、それだけは約束してくれ。ハリスはきっと令嬢に囲まれる。するとリュシエンヌは一人になる。それが心配でならないんだ」


 護衛を付けるしかないな。騎士団の試験は落ちたが、勿体無い人材はスカウトしてうちで面倒を見ている。中でも爵位がある騎士に護衛をさせるか。


 リュシエンヌとニコラの為に女性騎士も積極的に雇っているから、パートナーにさせて護衛させよう。


「一人になって良い事はありませんものね。反省していますわ」


 あの時の事を思い出しているんだよな。居場所を確定できる器具もあるのだがそれを持たせるのも気が引ける。


 我が家の騎士たちには裏切り者は即ち死。と告げてありサインさせてある。大事なものを守りたいのなら些細なことでも報告せよ。とも伝えてある。王宮の騎士団より厳しいかもしれんな。手柄を挙げれば平民でも貴族でも変わらず報酬を与えている。



「約束してくれ。同じ会場にいるが仕事を優先しなくてはいけないんだ」


「はい。騎士の妻の心得ですわね。レイ様にご迷惑をかけないようにしますわね」



「疑って悪かった。愛しているよリュシエンヌ」


 良い嫁さんだよな。キスをしたら止まらなくなってきた。


「んんっ。レイ様っ」


 とろんとするリュシエンヌの顔が可愛い。このまま──



「奥様、ニコラ坊ちゃんが起きましたよ」


 ハンナに声をかけられた。ジロリと睨むがハンナは怯まない。


「あ、あら、もうそんな時間? レイ様、その、また後で」


 ニコラが優先される。少しだけ寂しいと思っても罰は当たるまい。





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