学園に行けそうです
「長引きましたわ……」
打ちどころが悪かった。とお医者様が言いましたわ……ようやくお尻の痛みから解放されましたの。骨に異常がなかったのが幸いでした。
そろそろ学園に復帰したいですわ。とお父様に直談判しようと思っておりました。
「リュシエンヌ、話がある」
逆にお父様からお話がある。と言われましたわ。ディナーが終わりお父様の執務室へ。
「その、あれだ……調子はどうだ?」
あ、お尻の具合ですわね……お父様ったら、気を遣ってくださいましたのね。親子でも流石に恥ずかしいものですわ。
「えぇ。おかげさまでこの様に問題なく過ごせる様になりました。ご心配をおかけしました」
長い間学園をお休みしましたものね。思っていたより痛みが長引いていましたが、復活ですわ。
「そうか、それは良かった。馬車には乗れそうか?」
「? えぇ、多分大丈夫だと思うのですが……まだ試しておりません」
学園に行けるかと言うことを心配してくださっているのかしら?
「明後日、少し出掛けないか?」
お父様とお出掛け? それは嬉しいですわね!
「はい。嬉しいですわ。どこへ連れて行って下さるのですか?」
「王宮へ……今後のことをリュシーにも聞かせたいと言う方がいるんだ。お母様にもついて来て貰うから安心しなさい」
お母様もご一緒ですのね。それより王宮へ……一体なんの話なのか恐ろしいですわ。今後って何?
******
【父×陛下】
「こんな時間に呼び出して悪かったな。来客がいるので中々時間が取れない。しかし早いほうがいいと思ってな、気が気ではなかったのだろう? 調べがついたぞ」
陛下にこっそりと呼び出される。呼び出された場所は閉館中の王宮図書館だった。遅い時間だったが断る術もない。
「いえ。こちらがお願いしたことですから何時でも参上致します。もう調べがついたのですね。さすが陛下」
少し話が大きくなっているが、陛下はご立腹の様子でエリック殿下が立会いをしていた事に対して謝罪をされた。
「親として申し訳ない。コリンズ伯爵にも事情聴取したのだが、子息が悪いと言ってそこは引かなかった。リュシエンヌ嬢に非がない限りコリンズ伯爵家の有責だ。と頑固で、真面目な男だから仕方がないな。子息が罰を受けているのに、エリックに罰がないのはおかしいだろう? しかしここで幽閉などさせてもコリンズ伯爵も気まずいだろうから、エリックは国から出す事にした」
国から出す? あの話を受けるのか? そう思い陛下の顔を見る。
「そうだ。リル王国の王女と結婚させる事にする。悪い話ではないからな。今他国からの客人を招いておるから、客人にも話をしておいた。リル王国は小国だが資源豊かで隣国が狙っていて攻められでもしたら成り行かん。同盟を結びわが国が付いたと思われれば攻めることも出来ない。滅びたいのであれば好きにすればいいが、そこまでバカではないだろう。この話を聞いて悔しがることだろうな」
王配になるのか……確か王女は二十二歳、姉さん女房の方があの殿下には良いのかもしれないが……
「それで宜しいのですか? 陛下にとっては大事なご子息……王子ではありませんか……私達が陛下に相談をしたばかりに、」
「息子だからこそ許せない事もある。私達王族は国を守り国民を守る義務がある。故に自我を犠牲にする事もある。人を蹴落として得た幸福など何になる? 一生かけてリュシエンヌ嬢に寄り添い罪を償うなど、息子以外誰が得をするんだ?」
……おっしゃる通りなのだ。
「娘を思う其方の気持ちと、王子の行動に対する意見として聞き入れただけだ」
******
【母×王妃】
「ごめんなさいね、お待たせしてしまって」
他国のお客様が王宮に滞在をしていてその夫人達とのお茶会があるので王妃様からお誘いいただきましたの。その後に少し時間を作る様に言われ、今に至ります。
「いいえ。とんでもございませんわ」
「うちの息子の事でモルヴァン夫妻の間でも何かあったとか?」
どうしてそれを……
「ふふっ。あなた達は良い夫婦よね。お互い想い合っていて。伯爵が陛下とお話をされたらしいの。陛下は学生時代を思い出したらしく懐かしそうに語ってくれたわ。伯爵とは学生時代によく王宮図書館で会っていたらしいわ。それで伯爵は陛下が図書館に来そうな時間帯を狙って会いに来たんですって。エリックの話を聞いて陛下は驚いていたの。私達はお互いに別で動こうと思っていたのだけど、陛下からお話を聞いて、私も夫人のことをお話したのよ。それから話し合ってエリックの事を決めたわ」
「うちの娘の婚約話がこんな大きな問題に発展するんて……申し訳ございませんでした」
ハリスがもう少し大きかったら家督を譲って隠居しても……いえ、それでは足りないのかしら。
「婚約を考える時点で相手の家のことは調べるものでしょう? 調べた結果が答えなのだからあなた達は気にする事などないのよ。エリックが陛下に責任をとる。と言ったのだから責任をとってもらいましょう」
それがリル王国王女との結婚とは……なんとも言えないでいました。




