殿下の誤算2
「何がひどいんじゃ?」
「母上です! リル王国の王女と婚約だなんて。リュシエンヌとの婚約を認めてくれたではありませんか」
父上が、メガネを外し私を見て来た。
「認めた? お互いの気持ちが一緒なら良い。と言っただけじゃ。己の都合のいい捉え方はやめなさい」
……くっ。
「母上は、血も涙もないんです。遠い小国のリル王国の王女と婚約しろと言うのですよ」
「間違えておるな」
「え!」
間違いだったのか? 婚約しなくていいのか!
「婚約ではなく結婚じゃな。結婚式にはお前の兄を行かせるから体裁は保てる。我が国からは盛大に祝ってやるから安心せい」
「……そんな。母上は私が可愛くないんですよ! だからそんな酷な事が言えるんだ」
「決めたのはワシじゃ。王妃は心を痛め、そして心を鬼にしてお前に告げた。愛情があるからこそ自分の口から告げたんじゃ。それくらい分からんのか? だからいつまで経ってもお前の心は幼いんじゃ。リル王国の王女はハキハキとした性格で国をますます良い方向へ導く女傑だ。お前の女々しい性格が王女によって変えられることを祈る。身内では甘やかしてしまうのがオチじゃ」
ひどい言われようではないか!
「せめて学園を卒業させてください! あと半年ですよ」
「学園ではお前も知っての通り家のために嫁ぐ令嬢は学園をやめる。テストに受かれば卒業した事になる、安心せよ。お前が婚約破棄の立会いをした子息は卒業を待たずに辞めた」
あぁいえば、こう言う……どうすれば良いんだ!
「私がまだ、リュシエンヌを振り向かせていない事が原因なんですね」
リュシエンヌさえ、婚約を受けてくれればこんな事にならなかったという事か……
「お前では無理だな。モルヴァン家からの信用がない。まぁ信用なんて出来るわけがない。理由は分かるな?」
婚約破棄の立会いをしたから……
「好いておるのなら、正攻法でアタックすればこんな事にはならんかった。これはおまえへの罰だ。コリンズ子息は領地で監禁、コリンズ伯爵家は慰謝料として鉱山を譲渡。コリンズ伯爵家から訴えられたら慰謝料を払えるか? 今回の事コリンズ伯爵家にも事情聴取に行った。モルヴァン嬢に申し訳ない。としか言わなかった様じゃ。息子がバカだとしか言わずお前のことは恨んでないそうで力なく笑っていたそうだ。おまえの行動で二つの家が困惑しておる。そしてこの件の責任を取れるのはおまえだけだ。王族として潔く国王の命令を聞くが良い」
そうしてリル王国へ行く事が決まった。
「せめて最後にリュシエンヌに別れを告げさせてください――」




