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婚約破棄の立会い

 ~エリック(第二王子)視点~


「これで婚約破棄が出来るね。アルバートこれで満足かい?」


 第二王子エリックはアルバートに微笑みかける。



「あぁ、助かった。ありがとう! 立会人が殿下で良かったよ。婚約破棄を言い渡されても泣きもしないなんて本当に生意気な女だ。最後まで可愛げがない」


 ふん。っと鼻息を荒くするアルバート。



「そうかい? とても凛として素晴らしい令嬢だと思ったよ」


「凛としている? はっ。生意気なだけですよ」


「滲む出る知性は隠しきれないんだね」


「? 知性が出てましたか? 女なんてものは男を立ててくれるほど良い女だと思う。“さすがです!”と言われれば嬉しいし“知らなかったです!”と言われれば教えてやりたくなるし“素敵です!”と言われれば悪い気はしないし“センスがある!”と言われれば何かをプレゼントしたくなるし“そうなんですか!”と言われれば興味があるんだな。と思い相手に好意を持ってしまうものではないですか?」


 アルバートは誰を思い浮かべながら話をしているのだろうか?

 


「単純だな、君は」


 呆れた口調でエリックは言う。好いている相手に言われると嬉しいだろうが、そこまで単純だと恥ずべき事だ。


「これで君も彼女との縁が切れたんだから、今後は彼女に近寄らないように。そうしないと私の立場も悪くなるからね」


 エリックは笑いながらアルバートに顔を寄せた。その顔は何故が薄ら恐ろしいと思えるほどの笑みだった。



「え? あ、あぁ。それはもちろん。親同士が勝手に持ってきた話で、私は納得していなかったから」


「そうかい。それなら良いんだ。大きくいうと性格の不一致という事だし、成績が悪くて美しくなく、人気がなく爵位は高いか低い女性が好みだもんな。彼女は当てはまらない」


「? なんだそれは? 殿下流石にそれはジョークが過ぎるよ」


 鼻で笑ってしまうアルバート。意味がわかっていない様子だ。

 


「彼女は美しく努力家で、困っている生徒がいたら身分問わず声をかけるような優しい人だ。そんな彼女を慕っている生徒は多い」


「みんな騙されているんでしょう。彼女の親もうちの鉱山目当てで婚約を結んだんでしょう」


 アルバートの家は傾きかけている。鉱山を買ったまでは良かったが採掘費用が重くのしかかってきている。人を雇うのもお金がかかるし、そもそも思っている物が採掘されていないので借金が嵩んでいる。各所から不満の声も上がっているのだった。



「鉱山ねぇ……」


「それに、リュシエンヌの話は大した事ないし、違うといっても納得しないし、つまらないし、適当に聞き流していました。今考えてみてもとんでもない女ですよ……」


「彼女の話についていけなかっただけじゃないのか?」


 とぽつり言ってみるが聞こえていないようだ。

 

 

「あ、そろそろ私は失礼します。両親に今日のことを報告しなくてはいけませんから」


「あぁ、分かったよ。今日のことは公にしてくれるなよ」


「もちろん。殿下に迷惑のかからないようにしますよ」


 そういってアルバートが部屋を出て行った。その様子を見て思った。自分の家がどういう立場にあるのか、自分の婚約していた相手がどれだけ素晴らしい令嬢だったかということに。


 

 それにしてもリュシエンヌ嬢は本当に美しい令嬢だ。学園で話しかけようと思っても彼女の周りにはいつも人がいて話しかけることが出来ないからな。今回のことがきっかけで話しかけることが出来るだろうか。


 まずは挨拶から始めよう。声をかけても不自然ではないだろう。婚約破棄をされて傷心だろうからその心に寄り添えばいい。



 私は第二王子でいずれ爵位を貰い王家が所有する領地を経営することになる。その時はリュシエンヌ嬢が一緒にいて欲しい。誰にでも優しく優秀な彼女は領民にも好かれるだろう。今持っている領地の中では南の領地が心地良さそうだ。温暖な気候で作物もよく育ち避暑地としても人気がある。

 

 普段は領地で過ごし避暑を楽しむ貴族たちとのパーティーで情報交換をするというのはどうだろう。完璧な計画だな。


 

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