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まさか?

「リュシエンヌおはよう」


「おはようございます。ご機嫌麗しゅう」


 朝から爽やかに挨拶をする殿下。最近その殿下の件で私は頭を悩ませているというのに……お父様もお母様もお疲れのようだし、そういう雰囲気は伝染する。使用人達は皆気を遣いながら仕事をするし、弟と妹は明るく努めているように見える。いじらしい……


「今日も美しいね」


「ありがとう存じます、お上手ですこと」


 紳士として淑女を褒めるのは当然。という顔をされましても……ここは学園で社交界ではありませんのに。


「来週から王宮にお客様が来るから、王宮図書館は休館になるんだ。知っていたかな?」


「はい。司書様に教えて頂きました」


 メガネをかけた司書様はいつも優しく声を掛けてくださる。


「もう知り合いが出来たの? さすがリュシエンヌ。因みにだれかな?」


「? メガネをかけた身長の高い、黒髪の男性です」


「あぁ。成程、館長代理だね。館長が足を滑らせて階段から落ちてしまい休養中なんだよ。彼が代理をしているんだ」


「まぁ、お気の毒ですわね。図書館は階段が多いですし雨の日なんかは特に滑ってしまいそうですね」


「対策も含め、彼は代理をしているんだ。世代交代も考えているんだってさ」


 などと、校舎に入る前にお話をしているのが悪かったのですわね。


 お昼休憩に先生に呼ばれて授業の準備をお手伝いしました。王国の歴史はとても興味深く私の好きな授業で、成績もトップでしたので先生は授業には関係のない話なども聞かせてくださり楽しくお手伝いをしていました。明日の授業のお手伝いでしたので、そろそろ戻らないと……と思い、教室に向かっていたところ、上級生と肩がぶつかりましたの。


「前を見て歩きなさいな」


 私はぶつかった拍子に強くお尻をついてしまいました。お尻をついたところは汚れていて制服のスカートが汚れてしまいました。これでは教室に戻る事ができません。


 いつの間にかぶつかった生徒は居なくなり、私一人でお尻をついている状態。


「……いたたた」


 チャイムが鳴り響き、授業に遅れる旨を伝えることは出来ません。


 ひどくお尻をぶつけてしまったので、立ち上がるのに時間がかかってしまいました。お尻がヒリヒリするなど若い令嬢が言えば品位を疑われますわね。


 しかし痛いものは痛いのです。右腕もお尻をついた際に捻ってしまいました。


「保健室へ行くしかないわね」


 授業が始まった校舎はしん。と静まり返っていてすこし寂しく感じました。なんとか保健室へ辿り着くと、女性医師が居てくださって助かりました。

 そしてお尻と腕を冷やされました……制服はベッタリと汚れがついてしまったので、本日は帰るようにと勧められ教室からカバンを持ってきて貰いました。


 お尻の汚れは目立つので生徒の目に晒されないように早く歩かなくてはいけないのですが、お尻の痛さから歩く速度が遅くなってしまい、チャイムが鳴り生徒が教室から出て来ました。


「ど、どうしましょう……」


 そうだわ。皆さんが立ち去るまで壁で隠しましょう!


 学園の制服はベージュが主体で華やかなものです。汚れがつくとすぐに分かるように、いつでもキレイにしていなくてはいけませんし、家に帰ると替えが用意されているのですが……こんな姿を人に見られては恥をかきます。


「あれ? リュシエンヌどうしたの?」


 会いたくない方に会ってしまいましたわ!


「……ご機嫌よう」


「どうしたの? そんな壁側に立って? 私のことを待っていたとか?」


 そんなわけありませんわよ! 帰りたい一心で壁際に立っているのです。


「腕、どうかした? 庇っているように見えるけど」


 意外と観察力が鋭いことに驚きました。って失礼ですわね……


「いえ。気のせいですわ」


 にこりと笑おうとした瞬間でした。


「どうしたの、制服汚れているじゃないか」


 驚き声を顰める殿下。気を遣ってくれているようです。


「……転びましたの。館長様のことは言えませんわね」

 

「……そうか、だから壁際に? 休憩が終わるまでまだ時間がある」


 と言って制服の上着を脱ぎ私の肩に掛けました。


「いけませんわ、殿下の制服が汚れてしまいます」


 デザインは同じだけど、殿下の制服の生地は明らかに高級なものです。すぐに返そうとしますが頑なに拒否されました。


「私は替えを用意してあるから着て欲しい。そのままでは帰れないだろう? どこで転んだらそんなに汚れるんだい?」


 カバンを取られ、馬車まで送ると言われました。カバンを持っている時点で私が帰ろうとしている事がバレたようです。


「結構です、自分で」


「何言ってるの? そんなにゆっくり歩いて怪我をしているんじゃないのかな? 君を抱えていくくらい出来るけど?」


 と言われると馬車まで送ってもらうしかなくなってしまった。抱えられたら注目の的ですもの。大人しく馬車まで送られてきました。


「で、どこで転んだ?」


 言わないと馬車の扉を閉めてくれませんのね。


「南校舎の一階廊下です……」


「分かった。お大事にね」



 やっと解放されました。馬車の揺れでお尻が痛くて蹲りながら家路につきました。


 お母様は驚きすぐにお医者様を呼んでくれて、きちんと調べますと、尾てい骨強打と右腕の痛みと言うことで、馬車に揺られる事ができないので暫くは休むことになりました。長時間教室の椅子に座るのも……ちょっと厳しいと思いますわね。



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