最終回
レオンの家のパーティーは盛大に行われ、女王も会話を楽しんでいた。ハリスにリュシエンヌとダンスをするのは待ってくれ。と頼んである。
リュシエンヌと一緒に参加するパーティーといえば、半年後に控えている私たちの結婚披露宴&ニコラのお披露目会だ。卒業して結婚しすぐに子供が産まれて間もないのにも関わらず、社交を再開して……それなのにダンスの相手もしない夫に呆れる事なく支えてくれる妻と任務中なのにダンスをしたい。と思ってしまう。
エリック殿下が女王に伝えたらしく、一曲でも二曲でもどうぞ。と言われた。レオンがその間主催として二人と会談しつつ護衛をしてくれるそうだ。なぜか上司も知っていて、良いんじゃないか? と言っていた。上司曰く、妻の機嫌が良いと仕事も捗る。と。分からなくもない……
「リュシエンヌ」
友人と話をしていて申し訳ないが、今しかなかった。
「レイ様? どうしました?」
驚きながらも笑顔で私の元へと来るリュシエンヌ。
「歓談中にすまない」
友人達はどうぞ。どうぞ。と快くリュシエンヌを送り出してくれた。
「ダンスを踊ってくれないか?」
すっと手を出す。
「レイ様、任務中ですのに! 私のことは気になさらずに、」
「リュシエンヌと踊りたいと思いハリスにダンスをしないように頼んでいた。今はレオンが護衛をしてくれている」
二人で女王達の様子を見ると、気がついて手を振られた。
「それなら……皆さんの優しさに甘えてしまいましょうか」
リュシエンヌは喜んで。と言い私の手を取ってくれた。護衛中にダンスなんて本来ならあり得ないから後ろめたさもあるが、リュシエンヌとダンスをする喜びもあり自然と笑みが漏れるのが自分でも分かった。
「もう一曲踊ろうか?」
「良いんですの?」
「レオンに任せてあるから大丈夫だ。何かあったら責任を取るさ」
「それは困りますわ!」
リュシエンヌが私から離れようとするので、すかさず引き寄せて二曲目へ突入。
「レイ様ったら!」
「レオンを信用しているという事だ」
もうっ! 知りません! とリュシエンヌは睨んできたが、腰を抱いているので逃げることは出来ない。二曲続けて踊れるのは夫婦の証だろ?
ダンスが終わりリュシエンヌの腰を抱いたまま、女王達のところへと戻る。
「素敵なダンスでしたわ。閣下の夫人を離さない! という気迫がこちらまで感じましたわ」
「グレイソン殿と夫人は似合いだ」
くすくすと笑う女王とエリック殿下。
「ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいですわ、でもそろそろ夫を戻さないといけませんわね」
リュシエンヌが腰に回している私の手をつねってきた。
「まぁ、閣下をそのように扱って。ふふっ。夫人は優しそうに見えて意外と頼もしいのね?」
「はい。夫は強面の騎士と言われていますが、わたくしの方が強いのですわ」
ふふっと笑うリュシエンヌ。
「あら? それだと夫人は最強じゃない?」
「最強で最恐の妻ですよ。私は妻には勝てません」
「ふむ。そうなると夫人がグレイソン殿の弱みとなるよね?」
エリック殿下に痛いところを突かれた。リュシエンヌの身に何かあったら自分自身何をしでかすか分からない……
「そんな命知らずのものが居ますかね?」
ん? ……シオンが居たな。大怪我をして療養中だったか?
「そうね。いないわね」
女王が笑っているが、居たんだよな……
「リュシエンヌが弱みというならそれでも構いません。一つや二つ弱みがあった方が人間らしくて良いではありませんか? 完璧な人間などこの世に存在しませんから」
「弱みを把握して、なおも強くあるという事ね?」
そうなのかもしれない。
「そんな閣下と夫人の子ならきっと良い子に育つわよね? お名前を聞いても良い?」
女王がリュシエンヌに聞いた。
「息子の名前はニコラと言います」
「ニコラ君ね? ふふっ。それなら私は女の子を産むわ。それでニコラ君をうちの娘と結婚させましょう! そうとなったら早い方がいいわね? さぁ、王宮へ帰りましょう」
エリック殿下の手を繋いで会場を出ようとする女王!
「勝手に帰られては困ります! それにニコラを他国へはやりませんから!」
リュシエンヌもハラハラしていた。冗談も程々にしておいてほしい。その後、なんやかんやとわが国を楽しんで帰って行った。なんだったんだ……新婚珍道中か?
その後女王は宣言通りに女の子を産んだ。その時はただ、目出たい話だとリュシエンヌと話をしていたのだが……
「だ、だ、だ、旦那様! お、お、お、奥様!」
執事が珍しく慌てて走ってきた。
「なんだ、騒々しい」
リュシエンヌとニコラを連れて庭で散歩をしていた。親子三人でのんびりしているんだぞ!
「はぁ、はぁ。申し訳ございません。王宮を通じて手紙が来ました」
面倒くさい用事じゃないだろうな! いつもなら優雅にトレーに載っている手紙をそのまま受け取る。
「何事だよ……」
渋々執事から手紙を受け取り中身を確認する。
「────はぁっ!?」
グシャっと手紙を握りしめる。不敬? そんなもん知らん。
「レイ様、どうしましたの?」
リュシエンヌがニコラを抱いて心配そうにしている。
「いや、なんでも、」
「なんでもないわけありませんわよね? 言えない事ですの?」
言いたくないだけだ! 目が泳いでしまった。私は動揺している!!
「……何かやましい事をして脅されているとか? それとも他に良い人、」
「そんなものは居ない! 永遠にリュシエンヌだけだと誓う」
一瞬の隙をつかれた!
「それならその手紙を見せてください!」
リュシエンヌは、私から手紙を奪いニコラを私に押し付けた。
「ぱーぱっ」
ニコラが可愛い……
「くっ。卑怯だぞ!」
ニコラがいると身動きが取れん!
「……なんですのこれは! ニコラをリル王国の王女の婚約者にですって?! 嫌ですわ! ニコラはうちの子です。レイ様が女王陛下とお友達だからってこんなのありませんわ! ニコラ、ママとじぃじの家へ行きましょう! レイ様が断れないなら、お父様がなんとかしてくれますわ!」
伯爵?! なんとかしそうで怖い! そんなことになったら二度と頭が上がらない!!
「断るから! 私が対応するから大丈夫だ!」
騒ぎを聞き付けて、ハンナがやってきてすごい勢いでニコラの元へ行く。ひとでなし! と言われた。私はニコラをリル王国へ行かせるなんて一言も言ってないからな!
おいおい。なんてタイミングの悪い時にハリスとパティまで来るんだよ……
「お義兄様サイテー」
「義兄様にはがっかりだよ」
「うるさい! 女王とエリックが勝手に言っているだけだろうが! 絶対にニコラはリル王国にやらん!」
エリックに敬称をつける気にもならん! 久しぶりにこんなに腹が立ったし、ハリスとパティに怒鳴ってもこいつら、たじろぎもせんって、しまった! ニコラが泣き出した!
ふぇぇぇっ……
「ニコラ……可哀想に。お兄様が守ってあげるよ」
「ニコラ、お姉ちゃまもいるからね」
ってハリスとパティは叔父と叔母だ! 何がお兄様とお姉ちゃまだ!
「伯爵には絶対にいうなよ! 私が対処する」
女王にエリックめ! なんて提案をしてくるんだ!
【“絶対”に婚約はしません、させません。悪しからず】
と手紙を返した。その後、何度も何度も何度もしつこいほど断り続けた。
落ち着いてきた頃、リュシエンヌは第二子を出産。待望の女の子が産まれた。これまたリュシエンヌによく似た可愛い可愛い子だった!
毎日が幸せで────って!
「は? 今度は王子がアリスを婚約者に?」
うちの可愛い天使の名前はアリスと名付けた。本当に可愛いんだ。
(敵の子供はアリスより少し先に産まれた)
絶対にやらんぞ! 何度も何度も何度も断り続けた! アリスを嫁に? 血液が煮えくりかえって倒れそうになった! アリスが望めば一生家に居てもいい!
……この時にようやくモルヴァン伯爵の気持ちが分かった……娘って命に変えても可愛いくて大事な存在なんだな。
アリスが結婚する前に子供が出来たなんて言われたら、相手の子息を斬りかねない。伯爵家へ行き心の底から頭を下げて、伯爵と一緒に陛下の元へ行きクレームを付けてきた。
「両国の架け橋にはエリック殿下が行ったのだから十分でしょうが!」
「また同じことを繰り返すおつもりですか?」
私と伯爵の気迫に負け陛下が国として話をつけてくれることになった!
一旦は引く? 何だ、それは!
友達は確か選べるんだったよな? 女王と友達になるんじゃなかった!
【完】
この回でちょうど100話だったので、グレイソン編も【完】とします。
面白いと思ってくださったら⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎で評価してくださると嬉しいです^_^最後までお読みくださりありがとうございました!




