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第5話

「ていうか、お前、さっき、俺を見るなり『伝説の侍』とか何とか言ってたじゃん。あれ、何?」


 陣内のあとをついて歩きながら、尊は誉に尋ねた。誉は首をかしげると、腕を組んで口を尖らせた。


「うちんの伝説のひとつに、カモさん家が絡んでるらしいのよ。でも、うち、伝説なんてぎょうさんあるんよね。だから、どの伝説のことなんか、うちが逆に聞きたいんやわ。……あんさん、心当たりあらへん?」

「えぇ……、どうだろ……。うさんくさい話なら、いくつか聞いたことあるけど……」


 二人がそんな話をしていると、陣内から何度目かの「止まれ」の合図があった。誉はフムとモンスターを見つめながら両手をぶらぶらとさせた。


「ゴブリンが、結構な数やね。ジンさんにばかり戦こうてもらうのも、そろそろ申し訳ないわ。うちも参戦しましょ」


 誉は何やら呪文を唱え始めると、バババと手を動かして印を組んだ。そして最後にパンと両手を打ち合わせた。


狐谷こやさん、お頼み申します!」


 誉の周りに風が吹き、砂埃がぶわりと巻き起こった。どこからともなく発生した煙がシュウシュウと尊たちの目の前に集まると、それは白い狐の姿になった。


「狐!?」

「あら、カモさんにも見えるんか。多分、ダンジョン効果やね。……狐谷さん、やっておしまい!」


 狐は飛び上がると、陣内の背中を足掛かりにしてさらに高くジャンプした。尻尾をくゆらせ狐火を出すと、ゴブリンに向かって投げつけた。陣内に殴られてよろけていたゴブリンが、狐火に飲み込まれて倒れた。


「お、俺も戦う!」


 狐の活躍を誇るようにドヤ顔をこちらに向けてきた誉に向かって、尊は半ばムキになってそう言った。両手でしっかりと柄を握ると、ゴブリンに向かって踏み込んだ。そのまま、何匹ものゴブリンに面や胴を食らわせる。しかし、隙ができたゴブリンにとどめを刺したのは陣内と狐だった。


「どうだ、俺、ちゃんと強いだろ?」


 ゴブリンの群れがいなくなると、尊は誉に自慢げに胸を張った。だが、誉は不満げに口を尖らせた。


「あんさん、敵に隙を作っただけやないの。最後のとどめは全部ジンさんと狐谷さんやったわ。そない立派な刀を持っとるのに、何で抜かへんの」

「そ、それは……」


 ぎくりとして尊は身じろぎ、刀をぎゅうと強く握った。誉から目を逸らすと、尊は眉根を寄せて口を閉ざした。


(いくら霧になって消えるっつったって、ソレまでは普通に生きてるってことだろ? 生きてるものを斬るって、そんな……。巻藁を斬るのとはワケが違うんだぜ?)


 心の中で文句を言い、下唇をぎゅっと噛む。すると突然、尊は陣内に突き飛ばされた。


「いってえなあ……。何だよ……。……!?」


 起き上がった尊が目にしたのは、先ほどよりも大きなモンスターからパンチされてよろけた陣内の姿だった。


「陣内さん!?」

「だい、じょうぶ……。お前が無事でよかった」


 口の中が切れたのか、陣内はブッと血を吐き捨てた。誉は顔をしかめると、印を組んで後ずさりした。


「オークや。ぎょうさんおるで! 気張りや!」


 陣内を殴ったオークの後ろから、ぞろぞろとオークがやってきた。さきほどのゴブリンよりも多い数だ。

 尊は唾を飲み込むと、鞘から抜かぬまま、刀を再び構えた。

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