49話 名探偵②
さて、答え合わせです。
49話 名探偵②
夜になり、あいつが動きだした。
あいつは食糧庫へとゆっくり動きだす。
俺が『探索』スキルで監視しているとも知らず。
俺はあいつより先回りして食糧庫に行くと、すでに待機していた美香とイブがいる。
さて、これで準備が整った。
そう思っていると美香が話しだす。
「この食糧庫事件、今から私の推理を話していくわ。」
え? 何もう話し始めるの?
「まず、この事件の手口から犯人は簡単に絞られるわ。
地面に穴が空いている。これができるのは私達パーティーの誰かしかいない。」
うんうん。
「この穴は衝撃波を発生させるためのものよ。これにより、兵士達は激しい衝撃により全員気絶。この穴は二つあり、犯行回数とも一致しているわ。」
美香にしてはよく考えているな。脳筋返上か?
「あと乾物ばかり取られていたけど、これは犯人の好みね。」
ん?まてまて。 麦が残ったということは、それを小麦粉などにするという考えに至らないパーティー内の人物。
体が大きい点を見てもあいつしかいないだろ。
わかるだろ?!
雑な推理になってきたなあ。
なんか推理の雲行きが怪しいぞ。
「そう。 犯人は流星あなたよ!」
「え? どういうこと?」
「問答無用よ。」
俺は模倣する暇もなく美香に背後を取られ気絶させられた。
俺が気絶する瞬間、阿部が普通に倉庫から盗んでいるのが見えた。
美香の推理にみんな気を取られている間に盗まれてるじゃん。
無実の罪で捕まるとは、、
――――――――――――
次に目を開けた時、俺は牢獄にいた。
手には手錠がかけられている。
目の前の牢獄には、あのアルツハイマー伯爵(ローレンツハイマー伯爵)が入っていた。
アルツハイマー伯爵にも手錠がかけられている。
伯爵によるとこの手錠は、魔封石と呼ばれる材料できておりスキルが封印されるらしい。
あの威勢のよかった魔法使いとは思えないくらい親切で、
なんだか気弱で全くの別人だ。
「どうせ僕なんて生きてる価値なんてないし。」
なんて言い始める。キャラ崩壊してるだろ。
あまりにも可哀想だったので慰めている間に、俺達二人には妙な友情が生まれた。
牢に入れられて二日すると俺達は親友になり、
伯爵は模倣の許可を与えてくれた。
おかげで『マリオネットコントロール』と『マインドコントロール』をゲットすることができた。
不幸中の幸いというやつだな。うんうん。
三日後、俺はようやく牢屋から出る事ができた。
犯人が阿部だということがようやくわかり、俺は釈放されて阿部が牢屋に入ることになった。
「伯爵また会おうぜ!」
パーティーの仲間以上に親近感を感じる伯爵だったなあ。
牢獄から出ると美香がそこにいた。
「おまえなあ!」
「ごめんね流星疑って。」
「お前の間違った推理で酷い目にあったぜ。」
「なんでも言う事聞いてあげるから許して。」
なんでも?!
俺の心は揺れた。いやいや、健全な俺としては
変な願い事なんてできない!
で、でもキスくらいならいいよな。
三日も牢屋にいたんだ、これくらいなら。
「じじゃあ。キスしろよ! 唇な!」
「えー!?」
「…………。」
美香は考えている。
キスくらいいいだろ。
そんなに嫌なのか。
「……いいよ。」
――――キタァァー――――
美香が顔を赤くしている。
よ、よし。
チューだ、チュー。
美香は俺に近づき、俺は目を閉じた。
胸が高鳴る。なんか緊張するな。
美香の息遣いを感じる。
顔の距離が近づく。そして……。




