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29話 魔闘気

完全復活した俺は以前よりも体が軽い。

ステータスを見るとレベルが上がっていた。

敵を倒さなくてもレベルは上がるらしい。


だけど、ステータス自体はそんな上がっていない。

スキルは、『ワンコピー』が『ツーコピー』になっている。

一日二回までどんなスキルもコピー可能か。


通常の『模倣』では専用スキルをコピーできないが、これを使えばなんでもコピーできる。

魔王に本気を出させたのもこのスキルのおかげだしな。

これの使い方も研究しないとな。


さて、このダンジョンから脱出して地上にでないといけない。

俺は朝食の時に魔王からダンジョンの脱出方法を聞いていた。


脱出方法は2つ、

①元来た道を戻る。

②更に下の階層に行き転送ポータルで地上に戻る。


この世界で転送系のスキルはかなり貴重らしく、魔王ですらないと言っていた。

転送ポータルは魔王が生まれる前からあり、その仕組みは解明されていないらしい。

この世界のオーバーテクノロジーだという事だな。


その転送ポータルを使うには、99階層のボスを倒さないとダメらしい。


魔王は外に遊びに行くときは、そのボスを一撃で葬り去り遊びにいくのだと。

時間が経つとすぐ復活するので、遊びに行く度に倒すのが面倒だと言っていた。


そのボスを倒して100階層に行けば帰れるわけだな。

なら、行くしかない。


俺達パーティーは、イブを迎え七人で100階層を目指すことになった。


81階層から88階層は、魔王が開拓中でまだ街はない。

闇精霊が行く途中襲ってくるらしい。

闇属性は物理攻撃が効かない上に火、風、土、水の四大属性にも耐性が連中だ。


光魔法なら対等に戦えるが、

光属性を付与できる魔法がないんだよな。

俺と優奈だけが頼りになるのかよ、、


そんな事を呟いていたら、イブが話しかけてきた。

「あら、どうしたのですか流星様。」

「いや、精霊って四大魔法や物理攻撃効かないんだろう?」

「魔闘気などを使えば当たりますわよ。」

「魔闘気?」

「魔族特有の攻撃方法ですの。魔族は生命エネルギーと呼ばれる魔闘気を拳や武器に込めると、どんなものにも攻撃が当たりますの。」

「へー、便利だなあ。イブも使えるのか?」

「小さい頃から父に教わったので、多少は使えますわ。」

「なら、模倣してもいいかな?」

「はい、喜んで。」


職業は、『魔王候補』ってそのまんまか。

ステータスは意外と普通だなあ。

あれ、スキルがないぞ?


「あれ、イブ。スキルがないぞ?」

「あー、魂に魔族のスキルが刻まれていないのですね。ですが、スキルとはサポートシステムなので、素質があればやり方を真似して使えますよ。」

「え、そうなの?」

「はい。 恐らく流星さんの職業は魂に刻まれた素質を一時的に解放するものだと思います。 それが流星さんの職業の本質なのだと思いますよ。」

 

本質? 職業とは一体?


「イブさん、ちなみに職業ってなんですかね。」

「職業とは、その人の魂に刻まれた模様が形になったものだと言われています。『模倣士』というのは恐らく何度も転生を繰り返し、様々な模様が魂に刻まれているのでしょう。」


転生? おれ初めての転生なんだけど。

なら、ここにいる以前に転生を繰り返していた?

いやいや。 そんな事あるか?


「おれ、異世界からきて転生初めてなんだけど。」

「恐らく、流星さんはこちらと元の世界で何度も転生を繰り返していたのも知れませんね。」

「そんな事あるのか?」

「ええ、稀にあります。『魂精変換』を持つ方は世界の繋がりが薄く、様々な世界で転生を繰り返すと言われています。」

「へー。 じゃあ、俺って結構稀な存在?」

「かなり稀ですね。大魔王様と似てますね。」

「えっ、魔王の上がいるの?」

「はい、我ら魔族の頂点に立つお方です。中央ダンジョンまで行けば、お会いする機会もきっとあると思いますよ。」


あ、ベルゼブブが言っていた『あの方』って大魔王?

大魔王っていうくらいだから、ベルゼブブより強いんだろうな。


「じゃあ会えることを楽しみにしておくよ。とりあえず、魔闘気の使い方を教えてもらえるかな?」


「はい。では、基本的な魔闘気の操作から。このように体に溢れる気を一点に集めます。 見えますか?」


おれと脳筋トリオは目をじっと見つめた。


薄黒い光のようなものがイブの掌に集まるのが見えた。

「お、見えた。」

「流星様は、筋がよいですね。」


脳筋トリオには見えないらしい。

美香が俺を睨めつける。

「なんで流星だけ見えるのよ!」

「ほら、俺って器用だから。」

美香は足踏みしている。


「では、闇精霊を殴ってみますね。」


イブさんは、ニコニコ笑顔で闇精霊に近づき軽く殴ると

幽霊のような薄い体に穴が空き、 その後ろにあった岩も貫通していた。


なんだその威力。


「流星さんも手に水が溜まるように意識を集中してみてください。」


うーん、難しそうだな。

俺は手に意識を集中した。ピリピリとしたものが体中から

手に集まり、薄黒色と黄色が入り混ったようなものが見えてきた。


「あれ、流星さん魔闘気だけじゃなく聖光気まで集まってますね。そうか、元が人間だから両方集まるんですね。」


聖光気? なんだまた新しい言葉が出てきたぞ。


「聖光気って魔闘気と違うのか?」

「そうですねー。聖光気は魔族に有効とされています。」


おー、これと模倣を使えば魔王すら倒せるのでは?!


「とりあえず、そのまま闇精霊を殴ってみてください。」


先程のイブのように殴ってみると、闇精霊に穴が空き光で蒸発した。


「おー! すごくいいね。これ!」


「私は『魔王候補』の専用スキルで魔闘気での生命力消費は無効なんですが、普通は生命力であるHPを消費するので使いすぎには注意してくださいね。」


げっ、本当だ。 あれだけでHPが10%持っていかれた。

模倣使い続けているせいでmpも半分だよ。

うーん、瞬発的な火力は上がるが諸刃の剣だねこれ。

おや、先程まで見えなかった『魔王候補』のスキルが

一つだけ見えるようになってる。

『魔闘気操作』と見える。一度使えば次からは簡単に使うことができるわけか。これが魂に模様が刻まれるという現象か。なるほどね。

 とりあえず『魔王候補』のスキルは進みながらイブに教えてもらおう。

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