26話 魔王と対決①
目の前にいるのはどうみても、5歳児。
その子供が玉座に座っている。
偉そうにしてるところを見ると、魔王らしいのだが。
美香は目をキラキラさせている。
「か、かわいいぃ。」
ああ、そういえば美香は子供好きだったな。
魔王の顔は大人になったら、イケメンになりそうな顔をしているが。
「我が名はベルゼブブである。
我が輩の部下が不遜な態度を取らなかったか?」
声は意外と太く、子供に似合う声ではなかった。
慌てて俺は返事する。
「はい、大丈夫です。とても親切で助かりました。」
「そうか、ならよい。お前達を呼んだのはな、ワシと手合わせをして欲しいからじゃ。」
俺は耳を疑う。
「え、手合わせですか?」
「ああ、ワシとまともに戦えるやつが最近いなくてのお。
暇をしておったのじゃ。タダでとは言わぬ。欲しいものを何でもくれてやる。金でも、物でも、永遠の命でも。」
さすが、魔王なんでも叶えられるのか。
「魔王様、少々お時間をいただけますか? 少し皆と話し合いますので。」
「かまわぬかまわぬ。我は2万年待っていたのじゃ。少しくらいかまわぬよ。」
うーん、魔族と時間の感覚が大分違うようだな。
とりあえず、俺達はヒソヒソと一時間話し合った。
みんな戦うことには、全会一致で問題なかったが、叶えてもらえる願い事で揉めたのだ。
美香は、綺麗になりたいとか言い出し、優奈はイケメンの彼氏が欲しいやら、浩介はハーレムを作りたい、阿部は飯が食いたいなどである。
寺田は元の世界に帰してもらう事を主張した。
寺田には元の世界に弟達を残している。
それが気掛かりで少しでも早く帰りたいと言っていた。
片親しかおらず、幼い弟達が心配なのだろう。
脳筋トリオ達は寺田の話に涙しながら、寺田の言う願いを叶える事で一致した。
俺も当然賛成した。俺は元の世界には帰るか悩んでいたが、寺田には帰ってもらいたいと思う。
俺は最悪この世界にいてもいいしな。
「結論がでたようじゃな。」
暇そうにしていた魔王が口を開けていた。
「ああ、元の世界に戻してほしい。」
「うーむ、それは我でも無理だ。一万年後になら可能だがな。」
?!
「一万年?! なんで?」
「お主らがこの世界に来たのは偶然が重なったからじゃ。
一万年に一度世界に覆われている魔力の層が一瞬消える『再起の刻』と重なったからじゃ。その時間は0.01秒と一瞬のことではあるがな。そのタイミングで、戦略魔法が使われて他の世界と繋がってしまったのじゃ。だから、お主らが帰りたいならば一万年後になる。」
「そ、そんな、、」
「だがな、もっと早く『再起の刻』を起こす方法がない訳でもない。それを教えて欲しくば、我と戦うしかないのう。もし、我を楽しませる事ができれば教えてやろう。」
小さな魔王は偉そうに俺達に言った。
「なら、やってやるよ。」
「そうと決まれば話が早い。では、我が闘技場に来るがよい。」
専用の闘技場まであるのか、、
戦闘狂か。
俺達は野球場ほどの大きさの場所に連れてこられた。
「こんな広い場所で戦うのかあ。これなら本気出せそうだな。」
浩介は拳と拳で音を鳴らしてやる満々だ。
美香や阿部も同様に目を輝かせやる気に満ちている。
俺、寺田は相手の出方を窺う事にした。
優奈は杖を握りしめて緊張した様子だ。
魔王が先程の姿と違いマントを脱いでいる。
5歳児が偉そうに『なんとか戦隊』の変身装備を着ているようにしか見えないが、、
「さて、やるかのう。まあ、殺しはせん。ワシを楽しませるだけでよいよい。」
余裕そうな態度は、強さの現れなのだろう。
「じゃあいくぜ!」
浩介が速度を活かして、一気に間合いを詰めて拳を連続で
打ち込んだ。
魔王は、小指でそれを軽く捌いている。
おいおい、魔王強くないか? 攻撃力は他のメンバーに比べて劣るが速度だけは一番なはずだ。
それが、一発も当たっていない。
やばいな。
「ふはは、楽しいのう。我に小指を使わせたのは数千年ぶりよ。」
「クソなめやがって。」
浩介は、スキルを使い更に速度を加速させていく。
だが、魔王は小指の動かす速度を上げただけだ。
浩介は更に最大級のスキルを放った。
『觀音百手突き』
魔王は小指を人差し指と中指の二本指で
浩介の突きを全て捌いた。
「愉快、愉快。だが、ぬしは飽きた。」
と浩介の額にデコピンをすると、浩介は100m先の壁まで吹き飛んだ。
「さあ、次来るがよい。全員でかかって来てもよいぞ?」
余裕な魔王に俺らはまとまって攻撃を仕掛けていた。
合図を送ったわけでもないが、自然と俺達は連携が取れていた。
「ふはは。楽しいのう。流星とかいったか。おぬしあの方と同じ力を持っておるのか? 使いこなしてはおらんが見所があるのう。」
あの方? 何言ってるんだ。戦闘中に俺は美香達のサポートするように魔王の動きを阻害する魔法を使っていた。
回復して戻ってきた浩介を含めた脳筋トリオは全力で攻めているが、全く傷一つつかない。
ようやく魔王に3本指を使わす程度だ。
ちっ、舐められてるな。
「少し時間を稼いでくれ。」
そういうと寺田は極大魔法を唱え始めた。
「おっと、その魔法は危ないのう。」
そういうと一瞬で寺田に近づき、寺田のエナジーコートを蹴りで突き破った。
「硬いのう。おぬしら、わしに足を使わせるとはなかなか有望だの。」
この魔王見た目と違いかなり強いな。
「ほれ、もう少し本気を出さんと殺してしまうかもしれんぞ。」
さっきに比べて野蛮な感じに魔王はなっている。
それが本来の性格なのか。
阿部が激しい光とともに凄じ勢いで拳を魔王に叩きつけたが、魔王は片手でそれを止めていた。
拳を掴まれたまま、魔王は阿部を空高く投げた。
ドーンという音がし、阿部は地面に衝突して気絶した。
俺達は阿部を助ける間もないくらいに攻撃を受け続けていた。
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