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京都駅烏丸口

作者: 水魚青二

ある年末のことである。一人の社会の底辺がこれからの日々の暮らしに不安を抱えながら電車に乗っていた。


電車の席は全部埋まっていたが、ラッシュ時の乗車客と乗車客が押し合う状態まではいかなかった。


俺も電車も吊革に掴まりながらスマホを見ていた。



2020年、この数年前には京都にはインバウンドという外国からの観光客で街は景気が良かった。新規ホテル出店や新規マンション建設などたくさんあった。また、人が集まりすぎて税収獲得が必須となった京都市が「宿泊税」の導入を決定した。


それから、寺や仏閣などには国内外から観光客が訪れて現地民とのトラブルも増えたそうだ。



そして2020年。日本は新型コロナウイルス感染症に寄る海外からの訪問客の入国制限を行った。



俺は京都市内にある飲食店でバイトをしていた。ニュースでも新型コロナウイルスの影響で飲食店は過去最高の倒産数と出ている通り俺が長く働いた飲食店もやめる羽目に。


政府は「Go to」キャンペーンなどをやっている。だが「Go to」で客が行くのは有名店ばかり。名も無い、味も平凡な俺が勤めていた店がヤバいのも当然であろう。



俺はアパートから普通電車で京都駅近くにあるハローワークに行く途中であった。蓄えも少しは生活できるくらいの貯金もあったが、もう底をついている。(仕事を探さなくては・・)俺は仕事場を変えるのは不安でたとえブラックとか低賃金で搾取といわれても、今収入を得られている職場にしがみつくタイプだ。



そんな、俺は次の職場は、パラハラは大丈夫か、帰ったら寝るだけになるぐらいにぐったりするキツイ仕事でないか、その他大丈夫か不安が原因で不安で精神科にも通っている。



そんな俺も生活保護は認可されるのか市役所へも相談に行った。



ある日の回想だ。

俺は市役所は生活保護の相談に行った。



「あの、生活保護を受けたいんですけど」



かわいい市役所の受付の女性職員に尋ねた。



「それでは、こちらに書類を記入お願いします。」


「はい、それでは担当のものを呼んで来ますので少々お待ちください。」



(あれ、俺的のネット情報だったら帰るように言われたり、追い出されると思ったのにな?)



しばらく、俺は市役所の椅子でスマホを見ながら待っていた。



「それでは担当のものが用意できたので、こちらへどうぞ」



部屋に案内され入ると、50歳半ばだろうかの中年太りの冷めた目をした職員が座っていた。



「○○さん、こちらへどうぞ」



いきなり俺の名前を呼ばれてびっくりした。



「○○さんですか、生活保護を受けたいという相談で」


「ええ、そうなんです。仕事もクビになったし、蓄えも無くて精神科にも行ってます。」



「精神科でどんな判断受け取りますか?」



「いちおう、鬱っぽいってゆうたら睡眠薬もらいました。」



「そうですか、就労は可能ですか?どこか心身に不自由とかは?」



「な・・ないです。でも最近寝付けなくて、ずっとじゃない!数か月支給できへんですか?」



「○○さん、生活保護は本当に働けない人が受給できるもので、あなたの話を聞いとると、まだ十分自己努力できると思うんですわ。」



「そ・・そうですか・」



「どう、します?」


「とりあえず、もっと困る状況になったら来ます。」



「そうですか」



これ流れだと俺は市役所から去るしかなかった。


そして俺は結局、役所から門前払いとほぼ同じ扱いをされて、今現在、京都駅行きの普通電車にハロワを求めて乗っているわけだ。



俺はスマホで、青春文庫アプリを起ち上げた。そして、もうすぐで読みかけだった芥川龍之介の羅生門を読み続けた。そして数分後に全部読み終えた。



(学校の授業で読んだことあるけど面白いなぁ。簡潔にすると強盗になりたくないが飢えて死にそうな底辺が本音をいった老婆にキレて老婆のものを奪うか・・・・。俺もつい最近。本気で窃盗とかしようとか考えていたなぁ。でも俺は餓死しない。まだ現代は餓死者が多発するような時代でなくてよかった。本気で餓死するかしないかだったら盗みも迷うところだが、現代はまだそこまで世知辛い社会ではない。)






そうゆうことを考えている間にも電車は京都駅へ近づいて行く。


俺は引き続きスマホを見て暇をつぶしている。



すると、「おばあちゃん、よかったらそこに座ってください。」



一人の女子高生が老婆に席を譲るところだった。



(おっ、最近の若者も捨てたもんじゃないな。ああいう子は福祉の勉強でもしている学生の子かな?)



勝手にその笑顔が素敵な黒髪のちゃんと制服を乱さず着ている品の良いJK(女子高生)を見てそう思った。



人生に「タラレバ」はないのだと思う。もしこれから起こることを見ていなければ、俺はあんなことを・・・。



俺は老婆が「どうもありがとう」と愛想笑いでも作り、そう言いながら席に座るものばかりだと思っていた。



「あっ!?」



老婆はしかめ顔になり、癇に障った声で悪態をついた。



「あんた!!うちを年寄り扱いしてんねんの?うちはそんな年やない!」



俺は老婆の意外な反応に驚いた。



老婆は続けて言った。



「ほんと余計なお世話やわ。あんたの親がどんな顔か見てみたいわ。」



女子高生の顔は明らかに困って動揺して悲劇の場面に立ち会ったように曇っていた。



電車の中の乗客は知らない顔。面倒なことに関わりたくないようだ。

あの時を冷静になった今振り返るとなぜそんなことをしたのだろう。



理論的に考えて、かわいいJKにいいところをアピールしたいという深層心理でもあったのだろうか?



「おい、ばあさん せっかく女の子が席を譲ってやろうとしとんのに、それはないやろ?」



俺は、いつもなら、そんないさかいがあっても無視してやり過ごす。また後で考えて何でこんなことをしてしまったのか不思議だ。



「あんた誰や」



老婆は睨みつけるような顔でこう言った。



「おれが何者かええけど、人の親切、若者の親切をないがしろにしたらあかんと思うで」



「うるさいな、うちはいらんもんにいらんって言っとんねん」



「そんな年齢(とし)なら、ええ断り方とかあるやろ!ちょっと婆さん待ってやろや!」



俺は、婆さんとの距離を詰めに婆さんがいる車両の隅の優先座席まで移動して、老婆の前に立った。



威嚇しようとする気がなかったといえば、嘘になるが、暴力や恫喝はする気がなかった。これも後に考えるとよくなかったことである。俺は老婆に近くまで寄っていって他の客から見えない死角を作ってしまった。



すると、老婆が「蹴られたぁ!!助けてぇーー!」を大声を出して座り込んだ。顔も苦しそうに作っていた。



すると、中年のサラリーマンの男性が「ちょっと、あんた暴力はあかんやろ」と俺に話しかけてきた。



「俺はやっていない。そもそも何で俺が女子高生を助けに行こうとしたのにあんたは無視してたやんか?」



俺はそのサラリーマンに言い返した。



「婆さんは、ちょっと返し方が悪かったかもしれないが、暴力までやっていない。でも暴力はだめでしょ!そこの学生さんも、もうええって言っとたやないか?」



俺は女子高生の方を見てみた。女子高生はとても面倒なことになったと迷惑そうな顔で固まっていた。



老婆は相変わらず、屈んだままで苦しそうな演技をしていた。



『ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、京都、京都です。お出口は左側です。』



京都駅に着く車内アナウンスが流れた。



「まあ、なぁ駅着いたら駅員さんに対処してもらった方がええで駅に止まったら駅員を呼んでおくわ」



「ちょっと、おれは・・」



俺は焦った。ちょうどその頃に電車は京都駅へ到着した。


京都駅へ電車は到着した。


老婆は「もう大丈夫です」と苦しそうな振りをして起き上がった。



すると、乗客のひとりが「駅員さん、ちょっといさかいがあっておばあちゃんが男に蹴られたって言ってるんやけど」



(逃げようか・・・)一瞬、俺は思ったが逃げたらヤバそうなので辞めておいた。



「俺は、何も暴力なんて振っていない。その女の人を蹴ったりしてない。そのお婆さんの演技だ」


俺は憤慨して大きな声で怒鳴った。



「まあ、駅員さんも来るからそこで話したらええやないか?」



駅員を呼んだ乗客が話しかけた。



そして、対応する駅員が到着した。



「どうしたんです?」



「いや電車内でいさかいがありまして、女子高生が席を譲ろうとしてお婆ちゃんが年寄り扱いされたのを嫌がって怒ったんです。それをこの人がお婆さんの対応が悪いって言って、お婆さんに近づいたんですわ。そしたら、お婆さんが、この男の人に蹴られたってちゅうんです。」



「そうなんですか?」



「ええ、でも俺は蹴ってません?」



「で、そのお婆さんは?」



「お婆ちゃんは・・あれ、お婆ちゃんおれへんわ。」



老婆は俺と説明した乗客が状況説明に夢中になっている時にどうやら逃げ出したみたいだ。



説明してた乗客はポカーンとしていた。



すると駅員が「とりあえず、駅室で話を聞かせてもらえませんか?」



「俺は警察とかに突き出されるんですか?」



「今んとこ、そんな感じじゃないけど一応報告せなあかんでな」



「自分も用事あるんで早く駅から出たいんですけど」



「一応、一応騒いでいる光景を見た人もおるみたいですし、やってないなら話を聞かせてもらえませんか?」


俺は不快感いっぱいだった。しかし何もしていない堂々としなければ。


「んん、俺はやってないし、じゃあ行くわ」



俺は駅員室についていくことになった。




俺は、駅員室で電車内で起こったことを俺目線で説明した。



「だいたい乗客の言ってることとおなじですね」



「ええ」



「あの人、あの年寄りの人は?」



「どうやら、現場から立ち去ったみたいですね」



「自分はどうなりますか?」



「まあ当事者がいないなら何もなしですわ」



「そうですか?あの婆さん腹立つわ!」



「蹴ってないのに蹴られたって言われたら災難やんな。あんたもカッとなる性格みたいやから気を付けや」



俺は駅員への説明を終えた。京都駅のJR中央口(烏丸口)あたりを歩いていた。





そして出入口付近で、例の老婆がいた。誰かを待っている様子であった。



俺は興奮して老婆に駆け寄った。




「おいババア!!!」俺は老人に近寄った。



老婆は顔を険しくして睨みつける。



「また、あんたか?なんかしたら、また何かやられたって言うで」



「この!腹が痛いなんて演技しやがって」



「仕返しになんかするんか!」



「やっぱり、演技だったんだな!」



「うちもな、忙しいねん」



「何もお前にしないけどな、おまえに、ちょっと言いたいことあるから言わせろよ」



「聞きたないわ」



「じゃあ聞いていろ」



「うちな年金が支給されて、これから友達とランチへ行く約束で待ってんねん。どっか行ってや。」



俺は、とりあえず老婆に何か言いたくて堪らないので話し続けた。



「とりあえずなー。あの女子高生だって座る権利があったんだ。勇気も要ったろう。誰でも普通にできない行為だ・・。それをないがしろにしやがって!!!」



周りの通行客が歩くついでに見てる視線をすごく感じたが俺は話し続けた。



すると老婆は自分のやった行為についてこう言った。



「人の善意の行為をないがしろにしたやって、ありがた迷惑や、社会が本来、現実では椅子取りゲームで椅子の奪い合いなのに譲り合いとかいうのは間違えやで」



「お前の年金だって俺たち若者が働いた金が支払われているんだぞ、人の善意だ。」



「はぁ、言うとるん?」



「うちらは貰う権利があるし、仮に、それが奪い合いってゆうたら奪って何が悪いん?」



俺に今まで感じたことのない怒りの感情が湧いてきた



「わしらが稼いで納めた税金で年金。もらっておいて何言うとるんや!俺は金がなくて精神的に自殺すんねん!そうゆう状況や!それよこせ!!!」



俺は老婆のからバッグを奪ってすぐ走って逃げた。




怒りで俺は我を失っていた。俺は羅生門の主人公の下人とほぼ同じことをしていたと思ったのは後のことだった。



このあとこの底辺がどうなったのかはご想像の通りである。(完)


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