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月夜譚 【No.101~No.200】

灰色の雪 【月夜譚No.118】

作者: 夏月七葉

 こんな悪夢のような世界に、長居する気はない。――とはいえ、暫くはここにいることになるのだろうが。

 青年は溜め息を吐いて、今一度周囲を見回した。

 空はどす黒い雲に覆われ光が差さず、地表に生えた草は所々が枯れている。道の左右に並んで建つ家々に人の気配はなく、崩れた外壁の欠片があちこちに落ちていた。朽ちた町はただそこに在り続けるだけだ。

 なんとなく寒いなとは思っていたが、気づくと吐く息が白くなっていた。視界を何かが横切って、空を仰ぐと雪らしき塊がちらほらと降ってきていた。

『らしき』というのは、その塊が白ではなく濁った灰色をしていたからだ。見ようによっては、煤の塊が降っているようにも思う。しかし掌で受け止めると冷たく、すっとすぐに溶けてしまったから、きっと雪なのだろう。

 あまりにも淋し過ぎるこの場所で、更に雪にまで降られるとなると、益々長居はしたくない。

 帰る方法はただ一つ。この世界の深淵を見てくること。

 深淵とは何のことなのか。それを青年も知りはしない。手がかりも何もない状態でそれを探すのは骨が折れるが、やるしかないのだろう。

 灰の雪をその身に受けながら、青年は仕方なさそうに踵を返した。

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