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家庭菜園部で行こう!!  作者: ゼリー
本編
99/210

ソ、ソファが欲しいです! 1



 最近ちょっとどうしても身体の疲れが抜けない。


 授業中に延々と椅子に座らされる拷問を受けていたり机に突っ伏して寝ていたり、

たまに屋上で大の字に寝そべっていたりはするものの、

完全に体がリラックスして休めていないんじゃないのではないかと司馬未来は考えた。

 かと言って、放課後に家庭菜園部の作業をした後に一旦家に帰るというのもおっくうだ。

大体一度家でご飯を食べて風呂に入り、ベッドに飛び込んだらもう外に出る気が無くなる。


 つまりあれだな、部室でちゃんと休めればいいんだなという結論に辿り着いた。


 入部当初と変わって、家庭菜園部の部室も広くなったし、

勝手にソファなどを置かせてもらおうと思った。奥の部屋は現状物置以上の存在価値が無いし、

着ぐるみを隠しておくためだけであるから、正直スペースは余りまくっている。

ちょっとくらいものが増えても構わないだろう。(未来の言うちょっとは部屋の大きさの四分の一くらい)

 本当はベッドがいいと思ったのだが、人が来ない部室の奥の部屋にベッドがあるというのは

なんとなく風紀的によろしくない気がしたので、大きめのソファなどが良いだろう。


 なのでちょっとそういう相談をしに、久々に木工部の部長でもある用務員さんに会いに行くことにした。


 木工部を訪ねると、今森の方へ行ってるという事らしい。




 - - - - -




 家庭菜園部の畑の脇を通り、森の中に入る。

 木々が鬱蒼としていて、薄暗い。大雑把に森にいるとしか言われなかったのだが、

森のどのあたりかがわからないことには、見つけられないのではないだろうか。

むしろうかつに森の奥に踏み込んでしまうと、迷ってしまうような気さえした。


 そんなことを未来が考えながら恐る恐る進んでいくと、あることに気付いた。

以前森で妖怪と対峙した時は深夜だったせいか全く気付けなかったが、

人が通っているような道がある。

 辺りを見回してもその道以外は草が繁殖しているので、素直にその道を進む。

 昼間と夜間の違い。それと季節も少し進み、以前に森に入った時とはまるで違う景色に見える。



 しばらくその道を歩いていくとひらけた場所に出た。

 空が見え、木はポツンポツンと点在していて、草が伸びている。

 池がある。自然にできたものだろうか、それともため池なのだろうか。

 一見して水路のようなものは見当たらないので、どちらかと言うと自然にできたものかもしれない。

 近づいて見てみると水が澄んでいる。池の中からも草が伸び、小魚や、昆虫などもパッと見て取れる。

 少し先の方にわずかに水がぽこぽこしているのが見えた。湧き水が出ているのかな?

 ちょっと手が届かないところにカエルがいるのが見えた。アマガエルっぽい。

 せっかく虫取り網を持っていることだしと網を伸ばすが、流石に両生類。見事な泳ぎですり抜けられてしまった。

 本気で捕まえようと思っていたわけではないので、深追いはせずにこの辺でやめとこう。


 最近はテレビ等で外来種を何とか追い出そうというのが流行っているらしいので、

アメリカザリガニやアフリカツメガエル、カミツキガメやワニガメやブラックバスやソウギョなどがいたら執拗に追い回したかもしれない。未来はそういう番組がなんだかお気に入りであった。


 そうそう、以前近所のその辺にいたウシガエルを捕まえようとしたら、手で掴んだはいいが、

すごい筋力で逃げられてしまったことがあった。

 まぁ向こうもこんな大きな生き物に掴まれたらそりゃ必死になるだろう。

 しかしやはりあのジャンプ力の源となる太ももは伊達じゃないなぁと思ったものだ。


 さてさて、少し目的から外れてしまった。と思い腰を上げると

 近くに看板があり、亀池と書かれていた。

 わざわざ木の看板がさしてあるところを見ると用務員さんが用意したのかもしれない。

 そうそう用務員さんを探しに来たのだった。と、顔を上げて辺りを見回すと、

 いた!

 少しだけ小高くなっている場所にある、一本の木の下だ。

 近づくと、座って何か絵を描いているのだろうか。スケッチブックと鉛筆かなんかを持っている。

さすが芸術家!(←勘違い)


「こんにちわ~」

「こんなところで珍しいな」

「用務員さんを探しに来たんですよー。ちょっと欲しいものがありまして。

・・・何か絵を描いているのですか?」

「ああ、絵も下手だし、字も下手だがな、普段モノを作っていると、

たまには“本物”を確かめに来ないといけないような気がしてな。

自然のモノは美しいだなんて言うと安直だが、あるべき姿になるべくしてなっていると考えると、

自分の作っているものが如何に無駄なところが多いか…」

「私は用務員さん、というか木工部の作っているものは好きですけどねぇ」


 そう言いながら、描いている絵を覗き見る。葉っぱや木の枝が描かれている。

 本人も言っているように素人の絵だが、よく見て描こうという意思は確かに感じるかもしれない。


「そういえばここには初めて来ましたが、こんな池があったんですねぇ」

「ああ、自分はここがなかなか気に入っているぞ。少しひらけているのもあるしのんびりするには最適だと思う」

「…でも水があるせいかちょっと蚊がいませんかねぇ」


 さきほどから未来の顔の周りを蚊が飛んでいる。なぜ彼らは耳元を飛び回るのだろうか。

腕とか刺されてかゆいのも嫌だが、耳障りな音を延々と聞かされるのも苦痛である。


「そうだな、だが、ボウフラや蚊がいるから小魚やほかの虫が集まる。さらにそれらを求めて鳥が集まる。

鳥が種を落とす、草が生え、木になり、やがて森が育つ。

多分それは必要なことなのだろう」



 正直用務員さんの頭の中は計り知れないが、

何か大切なことを言っているのだろうという事だけは分かった。



「でも蚊に刺されるとかゆいから、チャンスがあればつぶすが」


 と言って笑った。

うん、とっても人間臭い。



 風が通り始めると蚊も飛ばされるのか、気にならなくなってきた。

涼し気で気持ちのいい気候にそのまま座ってのんびりする。

ここまで歩いてきて火照った身体には気持ちがいい。

しかし木の木陰というのは本当に涼しいものだ。日陰だからという理由だけではない気がするなぁ。


 入学してから、毎日慌ただしく過ぎて行ってたので、

こうやってのんびりするのもたまにはいいなぁと思いそのまま寝転がって伸びをする。




「ここは亀池と言われているが、神池がなまったものという話がある。

本当か定かではないが、ここには神が現れるのだと」



 まどろみの中で、用務員さんのそんな言葉が聞こえたような気がした。


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