9 家庭菜園・・・?
「おい、この学校に強盗が入ったらしいぞ」
教室に帰るなり鳥居がそんな発言を未来に聞かせた。
「強盗…ですか?」
「どっかで強盗した犯人が、この学校に逃げ込んだらしいんだけど」
なるほど、あの騒ぎはそれだったのか。
「だけどバカな犯人らしくてさ、人質を取った後に階段で転ぶかなんかしてよ~気絶したところを捕まったらしいんだぜ」
なるほど…確かに警察車両はきていたものの、緊急事態には見えなかった。もし、誰か生徒が傷つけられていたら知らない人でも心中穏やかではいられないだろう。犯人のドジっぷりに感謝する。
「しかも、これには後日談があってよ」
「後日談?今日のことですよね?当日談と言い代えたほうがよくないですか?」
「そ、それじゃあなんかゴロが悪いじゃないか」
もっともな意見を突き付けられた鳥居は、自分で納得するようにもう一回うん、ゴロが悪いなどとブツブツ言っていた。
「それで、どうにも捕まった時に、…クマが…って虚ろな目でうなされてたみたいなんだよ」
「…クマですか!?」
「いや、俺の予想だと悪魔って言おうとしたと思うんだな」
日本で悪魔って…クマよりもないわ…と未来は思ったが、
「なんかうちの部に入って知ったことなんだけど、この学校ってなんか変なことが良く起きるらしいんだよ、幽霊とかさ」
「ほほ~」
未来はちょっと興味をひかれた。
「だからきっと侵入者に悪魔が呪いを、とかワクワクしないか?」
その発想に思わずくすりと笑ってしまった。子供っぽいと言うか、やんちゃというか。
「そのことよりも、変なことが良く起きるって言うのが気になりますねー」
「ん~、俺はよくわからないんだけど、レイラインって言う霊的なうんたらかんたらがどうとかって、先輩が言ってたんだけど」
「うんたらかんたらがどうとかじゃ、まったくわからないんですが(笑)」
「まぁ俺にわからないんだから、それをうまく説明できるわけがないって」
いい意味できっぱりしているというか、ここまでさらけ出されるとむしろ気持ちが良い。
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放課後になったので、再び森野先輩を尾行する会(会員未来一人)が発足された。
森野のクラスのホームルームが終わって、友人としゃべり、その後職員室に寄って家庭菜園部のカギを受け取る。そして部室へ。じょうろを持って部室の外へ出る。
部室から、校内の敷地にしては離れた区画に家庭菜園部の畑はあった。部室と同じように、人通りの少ない、校舎からも運動部のグラウンドからも目の届きにくい部分に。
見られたくないものでもあったのかな?と考えてみるが、まだどうもつながりそうでつながらない。最終的に何かわかるという保証もないが、まだ情報が何か欠けているのかもしれない。
「そもそもよく考えてみると、まだ入学して一週間もたってないんですよねぇ…。こんなことで青春を過ごしていていいのやら」
と成果を感じられずにそう思うと、どんどんやる気がなくなってくる。しかし無理やりそんなことないよ、きっと疲れてるからプリンでもあとで食べようと思いなおし森野の観察に意識を向ける。
しかし…畑はそこそこ広く使えそうなのだが、青々とした葉っぱが存在するのは隅の一部だけのようだ。その葉っぱに向かい、ちかくの水道でじょうろに汲んだ水を、森野はかける。
そして来た道を戻って行ってしまった。
「え…まさかこれだけ…?」
未来は森野が部室に戻ったのを見届けると、再度畑に向かいその葉っぱの内訳を調べた。
ペパーミント、アップルミント
正直あまり手をかけなくてもわりと育つ植物である。
「小倉先輩が言ってたみたいに、ちゃんと活動してないって思っていいのかなぁ」
畑からトボトボと歩いて帰りながらそんな感想を持った。
学園長も絡んでいるみたいだし何かありそうなんですけどねぇ…。でも、やっぱり部室にも何も変わったものは…と思っていた時に、未来は一つ思いついた。
部室に置かれていたファイル!生徒会で見せてもらったものと似ていた気がする、と。
そうなれば生徒会にまだ提出はしていないが、今までの活動内容がはっきりと書かれているかもしれない。未来はそこに希望を見出した。
だが今までの様子から考えると簡単に見せてくれないだろうとも思う。そこでこっそりのぞき見作戦の、計画を立てることにした。