学園荒らし 4
幽霊を追って、家庭菜園部の拓と未来が着ぐるみを着て夜の学園を奔走している。
何度か幽霊を探し出し、
部屋の四隅に盛り塩をしようとするものの相手の反応は素早く、
塩山を作っている間に逃げ去ってしまう。
着ぐるみの素早さで追いかけるので、何かしらいたずらをされる前に探し出せるのであるが、、
この尋常でない逃げ足の速さは、こちらの姿を見られた瞬間に移動を始めているとしか思えない。
幽霊の方の姿が見えないので、そう予測するしかないが。
「というか拓先輩と合流する前ならともかく、今は着ぐるみ着てるのになんでさっきと同じですぐ逃げるんでしょうかね、見た目も明らかに違うはずなのに…」
「むしろ学校にこんな着ぐるみのやつがいたら怪しくて仕方なくね?」
「それはほぼほぼ同意しかありませんね」
入学直後のことを少し思い出した未来。
「それかこの追っかける満々の雰囲気が同じだとか」
「それも確かにそうかもしれません」
本当は見た目ではなく、
その存在の魂の姿みたいなもので判断しているのだが、そんなことはもちろん二人は知る由もない。
その後もイタチごっこを繰り返すが、
途中途中でミステリー部の人間とバッティングしたり、
死にそうな顔をした裁縫部の人間がゾンビの様にうろついていたりしていて、
そのたびに回り道や、通り過ぎるのを待ったりすることとなる。
「チッ、今日は裁縫部が学園に残ってやがるし、
ミステリー部もおそらく、この幽霊のせいで部活動してやがるし、やりにくいったらありゃしねぇぜ!」
「ミステリー部はともかく、裁縫部はいたずらのせいで納期がやばそうですしね…残っているのはいつものことですが…」
おはよう先輩たちの安否が気がかりである。
「そういえばお前、せっかくやつがいたずらをしようとしてるんだからよ、
いちいち頭ん中の信号を捉えようとするんじゃなくて、直接音に反応すればいいだろ?」
なるほど!そういう発想はなかった。
確かに、自分の場合は相手がいる部屋にたどり着いて盛り塩をしているうちに、
いつの間にか脳内の相手の信号が消えていて、そこで初めて相手がいなくなったことに気が付くのだが、
拓先輩の反応はもう少し早く、自分より先に相手がいなくなった時に盛り塩をやめて移動し始める。
つまりその理由は、この森野拓が自分より感度の高い受信センサーを持っていると言うわけではなく、
幽霊の出している音が無くなったことに反応していたわけだ。
人外相手なわけだから、持っている能力をあらゆる方向で活用しなくてはならないという例だな。
この着ぐるみで修業すれば、触覚の感度を強くすることで部屋全体を自分の触覚で包み込み、
見えない相手でも位置が掴めたりするだろうか?
・・・ともかく今はできないので拓の提案したことを真似て見よう。
「だめだ、このままじゃ埒が明かねぇ」
「ぬぬぬ…」
先ほどのアドバイスも実践してみるものの、結局は幽霊の反応に対してしか動けないわけなので、
先手を打てるわけではない。なのでどうしても追う側の不利ということなのである。
「・・・ふと思ったんだが、部屋の四隅に盛り塩をすることで結界を作るなら、
廊下の二辺に同じようにやれば行き止まりになるんじゃねぇか?
そこに幽霊を追いやって、後ろから盛り塩を二辺にすれば閉じ込められるんじゃね?
こっちは追っているわけだから、後ろから塩を盛るくらいならば相手が逃げるよりこっちのが早いだろう」
「ほー、確かにこのまま堂々巡りをするならやってみる価値がありますね!さすが先輩!」
今までの幽霊の動きから、なんとなく通りそうな道を考え、
その廊下の窓際のほうの隅に塩の小山を作る。
教室側の方にも同じように小山を作る。
正しいかはわからないが点を二個作ったわけなので、このルートは通れなくなる、といいなぁ。
これでだめなら塩の小山ではなく、完全にふさぐように塩の山脈を作らなくてはならないか。
・・・片づけることを考えると、正直気が滅入る。
「そっち行くぞ!」
二人であるという利を活かし、うまく塩を盛った廊下に誘導する。
「例のポイントに逃げ込みます!」
この先に追い詰めればさっき作った塩の小山の場所に出る!
そこまで追い込んだ瞬間にこちらから逃げ道をふさぐように小山を隅に、盛る!盛る!
ついに霊を囲うようにして塩で四辺に結界を作ることができた。
拓の思いつきだったが、まだここに霊の反応を感じることができる様子なので、実際に効果があるようだ。
「さて、うまく閉じ込めれたがここからどうするか」
ザッ!!
その音が聞こえた瞬間、拓と未来は廊下から空き教室に姿を消す。
「トイレトイレ」
「わっなんか足の裏がざらざらする。ん~?…なんでこんなところに塩が?
幽霊が相撲でもしていたか?そういや司馬のやつ、今日授業中に紙相撲みたいなのやってたな~」
鳥居か。
鳥居が廊下を通り過ぎて角を曲がったところで二人が廊下に戻ると、
幽霊はいなくなっていた。
なんてこった・・・せっかく結界を作ったのに、塩の山が蹴散らされているところを見ると、
どうやら鳥居が踏んづけて破壊したようだ。
もうっ!明日因縁をつけて殴ってやる。
「おい、さっきのやつお前のクラスのやつだろ?ちょっと明日部室に連れてこいや」
拓も同じこと思っていたようだ。
上級生から呼び出しとか、呼ばれる側になるだなんて想像するだけでも怖いんですけど
こうして一度絶好のチャンスを逃した二人に
同じような機会が訪れることはなかった。
そもそも途中からは反応さえつかむこともできなくなっていた。
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「くそっ、朝になっちまったな」
「もうすぐ先生や生徒が来てしまいますよ!」
「この着ぐるみ着てうろつくわけにもいかねぇ、仕方ねぇ、撤収だ」
「は~い」
今日もどこかで被害があるのかと思うと気が重いが、この着ぐるみを着ても時間ばかりは止められないのでしょうがない。
そうして徹夜明けの身体を授業中の睡眠によって休めることにする。
あとから咲ちゃんに聞いた話であるが、
隣の席の鳥居も爆睡していたようで、
数学の暴力教師の授業の時に二人揃ってボディーブローを食らっていたそうだ。
その瞬間だけ「はぶぅっ」とか声を漏らして教室の床に崩れ落ちたそうだが、全く記憶がない。
それはむしろその瞬間から寝ていたのではなく気を失っていたのでは?と思わないでもない。
言われてみると確かにわき腹辺りは痛い。
授業終了後に咲ちゃんが椅子に座らせてくれたようだ。ありがてえ。
しかし
放課後になって拓と未来は校内をうろつくのだが、
あれっきり被害があったという話を聞くこともなく事態は収束したようであった。
二人は気が抜けてしまったが、解決したならいいとばかりに喫茶店部でのんきに昨日の分までお茶をすることにしたのであった。




