学園荒らし 2
超常現象となるとやはりミステリー部だと思い、部室にやってきた。
扉を開けて中に入ると、この部の部長である水神が一人で本を本棚に片づけていた。
「こんにちは~」
「ここに来るのは久しぶりだな、仮入部以来か。どうしたんだと思ったが、わざわざ来るとなるとそういうことか」
「察しがいいですねぇ。実は私の知り合いの部活が…」
未来は水神に今まで起こったことを説明した。
「なるほどな」
「こちらでは何も起こってないですかね?」
「いや、起こったぞ」
「お?それにしては前とかわらずですけれども…?」
「自分の目の前でな、こう本棚から本が次々と出されてな」
「目の前でですか?」
「気付いた態度を見せていいものかそうではないのかわからなかったから、他の事に集中しているふりをしたが」
自分にはわからないが、気付いてはならないものなどあるのだろうか?
見られると襲われるとか?パッと思い出せないが、鶴の恩返しとかそんな話だったような。
だとせればせめて着ぐるみを着て防護した状態になってから襲ってきてもらいたいものだ。
「そう言えば結局それって姿かたちなんかは見れたのですか?」
そこが重要だ。犯人が分かったのであれば対処もできるに違いない。
「いや、見えなかったな。目の端に影すら捉えられなかった」
「そうなると…。やはり透明人間か幽霊の類か」
「ま、そんなところだろう。おそらくは幽霊だと思うがな」
水神先輩が言うのなら何かしら根拠があるのだろう。
どちらが対処しやすいかしにくいかはわからないが、
ある程度正体が絞れれば少なくとも何かしら対策の方向性は立てられるだろう。
未来は水神にお礼を言い、ミステリー部を離れた。
- - - - -
その後、未来は家庭菜園部の部室に戻るが拓はまだ帰ってきていなかった。
知り合いのところを回って情報集めでもしているのかな?
だとしたらこちらの報告をしに行っても良いだろう。
判断するための情報は多くて悪いことはない。
と思っていたのだが…。
「ぎゃはははははは!」
「笑い過ぎだばかやろう」
未来はげんこつで頭の頂点から殴られた。
「いったーい!
ひどい!後輩虐待だ!訴えてやる!」
「児童虐待の間違いじゃねえのか?」
「人が気にしていることを…、しかもさらにその身長を縮めようとするなんて、なんたる卑劣漢!」
「口は禍の元というだろう。それにたんこぶで身長が伸びるかもしれねえぞ」
まったく、人が嫌がる事ばかりするんだからこの先輩は!
最初に喫茶店部に行き、拓が未来と別れた後の話であるが、
拓は喫茶店部の仕事の遅れを取り戻すために雑用として働いていたのだ。
もちろん本人は渋ったようなのだが、どうしてもと懇願され、
面倒見のいい性格(←未来的には異論在り)が災いしてかほっとけなかったようだ。
それと人がいないことには人の出入りをちゃんと見張る事もできないので、
失った時間を取り戻すまででいいからフロアの接客をということらしい。
もちろん当然のごとくエプロンはさせられて。(なんかI'm beast とエプロンの端に英語のスペルが書かれていて、子猫が威嚇をしているプリントがしてある)
よりによって目つきの悪い拓先輩に頼むなんて、
一年生なんかは寄り付けないんじゃなかろうか?また、見慣れぬエプロン姿のギャップがじわじわ笑いを誘う。
そんなこんなで未来は大笑いをした後でも顔のにやけが止まらない。
しかしそれはいったん置いておき、そこまで忙しくなさそうだったので、ざっとあらましを伝えておく。
とりあえず待機をしておけとの指示であった。
意外に思ったが、今のところ大けがをしたりするような被害ではないこと、
着ぐるみを着て動くには早すぎる時間だということ。この二点が理由らしい。
なるほど。
そこで一つ閃いた。
「先輩、私、喫茶店部のフロア変わりましょうか?」
拓が現状を把握しに行った方が、別の視点からも対策が練れるのでは?と思ったのだ。
「いや遠慮しておく」
これも意外であった。接客なんてやってられないと思ったのだが…。
「俺が頼まれた仕事だからな、俺がやるのが筋だろう。
それにお前より、目つきの悪い俺がここにいたほうが被害にあいにくいんじゃねぇの?
そこまで小倉が考えたのであったら俺がここにいることに意味がある」
そう言われてしまっては引き下がるしかない。
家庭菜園部の部室に戻ってきた未来。
待機と言われても、家庭菜園部の仕事が終わればやることもないし、
人気が少なくなるまでまだまだ時間がある。
なので少々幽霊の様子を探っても良いのではないだろうか。
未来はじっと待っているのは性に合わない。
かと言って状況が状況であるから、遊ぶような気分にもならないし、
仮眠をとるにも気分が落ち着かない。
うん、やっぱり様子を探りに行こう。
どうせ捕まえる方法なんてわからないし、後をつけて傾向と対策を練るくらいはいいはずだ。
あ、でも見えないのか。どうやって探ったものか…。
・・・あっそうか、幽霊であるなら電波的なものでキャッチできるはずだ。
自分としたことが忘れていた。
目を閉じて集中する。が、
「んんー?」
いまいちピンとこない。
いままでなら校舎内くらいならいるかどうかくらいはわかると思うんだけれど、
幽霊という前提を間違えたか?
妖怪とか別の世界の住人だとしても同じようにわかるはずなので、
妖怪としての透明人間でもないな。
だとすれば普通の人間が透明の能力を得たのか、またはそういった技術力かなにかか?
そう考えたところで、部室内のロッカーに目が行く。
・・・この着ぐるみの能力というのも、通常のこの世界の科学力から考えてもおかしいよなぁ。
自分も拓先輩もバカだから、普通に使っちゃっているけれど、
筋力を倍増して発揮できたり、物理的なダメージをシャットアウトしたり、感覚器や情報を脳内に直接送り込むとか、
分かりやすいものだけでもオーパーツ(?)じみている。
なのでこの着ぐるみを作っているところなら案外、透明化できる技術力もあるのでは?
と、そこまで考えたのだが、一旦その発想は改めた。
だとしてもやることが子供みたいないたずらだなんて(未来的にはいたずらだなんて思っていないが、客観的に考えた)、
まるで理にかなっていない。
じゃあやっぱり透明人間の線は置いておくか?
そのタイミングで未来のアンテナは受信をした。
んん?おかしいな。
近く。それこそこの部室の中から一番近い廊下とかにいそうな感じなんだけど、
ここまでくるまで感じ取れないだなんて、ちょっと普通じゃないぞ?
昼間から幽霊が普通に動けているし、今回はなんか違和感だらけだなぁ




