ライバル 2
号砲が鳴り、グラウンドからスタートする。
男性陣のちょうどよさそうなペースで走っている人の後ろにつける。
身長差もあるので完全に風よけになる。
そこへスッと後ろから抜き去られる。
またあのボクっ娘だよ!
しかし、まだ前半戦であるからここでペースを乱すのは最良ではない。
そう思いヤツの背中を見ていると、こちらに目線を向けてニヤリと口角を上げてきた。
向こうも自信あるとでもいうのか?いいだろう、どちらが上か見せつけてやる。チキンレースの始まりだ!
未来は明らかに冷静さを失い、自分のペースも忘れて前半から飛ばしていく。
もちろん相手も負けじと並走している。
途中で隣の席の鳥居の声が聞こえたような気がしたが、多分気のせいだと思う。それにそんなこと気にしている場合ではない。人間は脳を使うにもエネルギーを使うのだという。だとすれば些末な問題を今考えるより、全て体力にエネルギーを注ぐのが正解ってものだ。
中盤に差し掛かり、前方には誰もみえないのでおそらく自分たちがトップを走っていると思われる。
さすがに息も上がってきているが、相手を見ても同様だ。
しかし脱落するほど限界という様子でもない。
思っているより体力あるな…。陸上やっていたのだろうか?大会などでは見かけなかったのだが。
どうしたものか。このまま並走するよりはどこかで休んでラスト勝負に掛けるか、
もしくは完全にぶっちぎってそのまま逃げ切るか、どちらかにはしたい。というよりも、
このペースでは悔しいが自分はおそらく最後まではもたない。
そこで一つ閃いた、
このルートだと、そうだ!
一歩も譲らない相手に未来は作戦を思いついた。
この先、ほぼ直角に曲がる道があり、道幅も一気に狭くなる。
そこで勝負を決めようというのだ。
今のポジション取りならこちらが内側になるから有利だ!
でも何にしても先に曲がる必要はある。
未来は一気にスピードを上げた。
それを見るとボクっ娘も一緒になってスピードを上げる。
そして曲がり角が近づき、角に飛び込む!
未来は無事に曲がることができたが、隣には先ほどのような気配はない。
作戦成功だ!そう思ったその時
「地面にある道だけが道とは限らないですよ!」
なんとコンクリートの壁を走っている!
直角ではないものの、60から70度くらいの角度はありそうな壁をである。
なんなんだこいつは忍者か?
少し道幅が広くなったところで壁から離れ、シュタっと隣に戻ってくる。
勝負も決められなかったしペースを落とすタイミングもつかめなかったので、
ガチのチキンレース続行である。
ここはちょっとラスト勝負にしようかと持ち掛けるか?
いやいや、こちらから提案するのは恥でしかない。とにかくなんとかして勝つしかない。
外周をほぼ回り終え、もう少しで学園に着くというところまで来た二人。
未来の息は完全に荒れ、無心と言うか苦しいということしか頭にはない。
正直、何でこんなことをしているんだろうとよくわからなくなっている。
頭もぼーっとするし、
脚も熱くなり、惰性で左右の脚を出している状態だ。
力がちゃんと入っているかもわからない。
学園の敷地に入ろうとするところで、
微妙な段差、そこでまぁ大方予想通りと言うか、
未来はつまずいてしまった。
とうに限界は越えていたのか、
脳に酸素の供給が追い付いてなかったのか、
目の前が真っ暗になる。
時間にすると数秒か数十秒か程度のことかもしれないが、
暗闇からテレビの砂嵐のようになり、
だんだんと目の前に太陽の光と地面の景色が映し出される。
倒れた時に擦りむいたのか、手のひらと顔がじわじわ痛む。
立ち上がり、目的を果たそうと思うが、
全然体が動かない。ぼやーっと意識はあるのだが、
とくに脚に全く力が入らない。
何とかしなくちゃとは思うが、無理だということだけはわかる。
誰かが横を抜けていった。声をかけられたような気がするが、一瞬過ぎてよくわからなかった。
その後もぞろぞろと横を駆け抜けられ、その途中で咲ちゃんに大丈夫かと声をかけられた。
声を上げて返事をしたつもりだが、声にならず「ぼふぅ」と口から空気が出ただけだった。
しかしその様子を見て、咲ちゃんは先に行くねと駆けていった。
薄情な人間だとほぼ八つ当たりのようなことを思った辺りで、ようやく体が動きそうだ。
のそのそと上半身を起こす。
そこで息を大きく吸って吐いたところで、見てしまった。
あいつもこちらと同じように倒れていたようだ。
そして今まさに、立ち上がろうと生まれたての小鹿のように足をプルプルさせている。
それを見てぶっちゃけ勝負とかどうでもよくなってしまった。
というかすでにごぼう抜かれているので、順位もボロボロだしさ。
のそのそと相手の横をほぼ歩くくらいのスピードで走り去ろうとすると、
相手が必死でついてきた。そこまでして勝ちたいのだろうか?もうよくないか?お嬢ちゃん無理なさんな。
その自分の顔が気に食わなかったのか、キッと必死な形相をこちらに向け、足を引きずりながら前を行こうとする。
そうだな、いつでも全力で当たらないと相手に失礼だ。
未来はギアを一段上げ、相手を振りほどこうとする。(とはいっても、普段の早足程度のスピードである)相手も必死でついてくる。それでこそライバルってもんよ。
グラウンドに出ると、もうほぼ全員がゴールしたのか知り合いから応援されまくる。
自分ら倒れてたのみんなに見られているし、恥ずかしいったらありゃしない。
相手は転倒した時に足を痛めたのか、こちらから遅れ始めた。
大丈夫だろうかと思い振り向くが、
「ボクの事なんて心配してないで自分の仕事を全うしてください!」
怒られた。プライドまで高いのかアイツは。
まぁこれも勝負だ。有難く先にゴールするとしよう。
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結果、
一位は鳥居
最下位は未来であった。
決して、相手に勝ちを譲ったとかではなく
ゴール直前で石につまづき再び転倒したのである。
これには見ていた全員があっけに取られていた。
くやしすぎて鼻水出るわ。
しかし今回の件で一つ分かったことは、
私のライバルは身長の近い咲ちゃんだと思っていたが、
どうやら違うらしくて、件のボクっ娘だったようだ。
バケモンで言うところの緑だな!
髪の毛もうっすら緑色だし!もちろん自分は主人公の赤である。
赤色の要素はあまりないが、主人公と言えば赤だしよいだろう。
あ、バケモンは正式名称バゲットモンスターという。
パン屋で買ったパンを戦わせて、レベルを上げたり、新しいパンを集めていくゲームだ。
最初に選べるパンはアンパン、食パン、カレーパンでパンごとに相性があるためこの選択は重要である。
ライバルは主人公に対し相性の良いパンを選んでくるので、自分としてはずるいなぁと常々思っている。
因みに英語でパンはブレッドだがゴロが良いという理由だけでバゲットをタイトルに入れた製作者のエピソードが人間臭くて私は好きだ。
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ライバルとの戦績
球技大会 未来の勝ち〇
昼食早食い対決 未来の負け✕
ランニング対決 未来の負け✕
現在一勝二敗




